インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

多様な人々が集う浜松町・大門エリア
家系×鶏白湯の濃厚・マイルドなオリジナル「家白湯」麺

港区浜松町・芝大門エリアは、無数の企業が集まる日本有数のビジネス街。旧浜離宮、増上寺、東京タワーなどの有名スポットが集まる観光地でもあり、道行く人々にはサラリーマンやOLに加え、国内外からの観光客の姿も目立つ。意外なようだが、この都会のど真ん中に住み家を構える人々も多い。
2016年4月26日オープンの「麺屋 帆のる 浜松町店」は、都営浅草線大門駅A3出口から徒歩5分、JR浜松町駅北口から徒歩8分、第一京浜道路をひとつ入った角地路面店。落ち着いたブラウンの板壁に、大海原に広がる空を思わす群青の暖簾が目印だ。

この店の名物は、家系ラーメンと鶏白湯の2大人気麺を掛け合わせたオリジナル麺の「家白湯(いえぱいたん)」(特製980円)。豚骨醤油ベースの家系ラーメンの濃厚さを、試行錯誤の末に独自開発した鶏スープで再現。“こってり”と“マイルド”が共存する癖になる味わいがラーメン通の人気を呼んでいる。

週末起業から超多角経営の実業家へ
構想段階から海外進出を企図した「帆のる」ブランド

オーナーの島居里至(しますえ さとし)さんは、飲食店経営・プロデュース、内装施工・デザイン、旅行業、経営・投資コンサルティングなど、実に多岐に亘る事業を統括する実業家。2002年、大手電機メーカー勤務のサラリーマン時代より、株式投資、不動産大家、飲食店開業などの“複業”を開始。週末起業により事業拡大、資産構築を成功させ、そのノウハウを伝えるセミナー講師も務める。

「帆のる」ブランドは、島居さんにとって初のラーメン業態。店名の由来は「ホノルル」。構想当初から海外展開を明確に意図し、ハワイを始めとする各地での出店を目指している。15年6月の新日本橋店オープンを皮切りに、西新橋店(15年12月)、大阪なんば店(16年4月)、ここ浜松町店、恵比寿店(16年7月)と、約1年間で5店舗という驚きのスピード展開を見せている。

サラリーマン層をターゲットとして、ビジネス街に的を絞って出店。一人でも対応可能なオペレーションシステムを構築し、コンパクト規模の店舗での効率的運営を実現している。ABC店舗の居抜き物件は、新日本橋店、浜松町店の両店で利用。浜松町店は元弁当販売店の居抜き店舗で、面積の半分を客席に大改造した。
客席スペースでは、コの字型となるだろうカウンターの1席を撤去し、間に通路のある平行型としたことで、スタッフのスムーズな動線を確保した。「付近の人たちは店が替わり、弁当が買えなくなって困っているはず。飲食店と弁当は親和性が高い。うちはケータリング業もしているので、今後、ここでの弁当販売を再開する予定」。こうしたフレキシブルな展開ができるのは多角経営の強みだ。

今後の注目点は“ハラール対応”
国際的魅力持つラーメンの大きな可能性

海外展開を目指して立ち上げられた「帆のる」は、メニューにも国際性を意識する。メインの鶏白湯の他に、店長の独自色を活かしたオリジナルメニューを各店で提供。今夏は、新日本橋店で「冷やしボンゴレトマト麺」(830円)、恵比寿店では塩スープにパクチーをたっぷり盛った「パクチー麺」、タイ風酸味スープの「トムヤム麺」(いずれも890円)など、イタリアン、アジアン調の特製麺が好評を博した。

中でも特色的なのが、大阪なんば店の《ハラール対応ラーメン》。ムスリム客のために、イスラム法で許された食材や調理法のみで作って提供する。具体的には、ムスリムにとってタブーである豚とアルコールを取り除くのだが、通常、豚はラーメンになくてはならない重要素材。また、麺にも微量のアルコールや豚由来の乳化剤が含まれる。このような制約のクリアは非常に難易度が高いため、ハラール対応ラーメン店は日本ではここ含めまだ数店だという。

そのため、なんば店には噂を聞きつけたムスリムの人々が大勢集まって来る。シンガポールから国際電話で予約が入ったことも。島居さんはラーメンの国際的可能性についてこう語る。「とあるデータでは、日本でムスリムがやりたいことベスト10に、モスク訪問、新幹線乗車、着物体験に並び、“ラーメンを食べたい”が上位に入っているそうです。ハワイほか海外各地でもラーメンはとても人気。大きな魅力を持つ日本食材です」。

鶏チャーシュー、鶏スープ麺の「帆のる」は、他のラーメン店と比較して、ハラール対応がしやすいという利点を持つ。今後、新日本橋ほか4店でもハラール対応を進め、東京でも広くムスリム需要を獲得していきたいという。ビジネス街の弱点は、どうしても土日の客足が弱くなること。こうしたデメリットのカバー策としても期待している。

商機を見逃ない眼はこうして養う
将来は広く世界に日本食文化の発信を

今後は、アジア方面ではインドネシア、中国、北米方面ではハワイ、アメリカ本土でのラーメン業態展開を計画している。「インドネシアには1億8千万人のムスリムが存在します。ハラール対応が出来れば、マレーシア含め、アジアの広大なムスリム商圏へラーメンを提案することが出来る。将来的には寿司屋も開きたい。日本食文化の海外発信に取り組んでいきたいですね」。近い将来、世界のあちこちで「帆のる」の旗が上がるのが楽しみだ。
開業初心者へのアドバイスとしては、「しっかりやれば必ず結果は出る業界なので、悩んでいる人はぜひ一歩踏み出してほしい。ただし、参入障壁は低いけれど、熾烈な競争もある。事前に勉強はしっかりした方がいい」と語る。島居さん自身も開業前にバーの専門学校に通い、自分でも講師を呼んで塾を開くなど、業界研究を重ねた。
これから多店舗展開を目指す方々に向けては、「すでに一店あるので、その経験を活かし、既存店と同業態・同ターゲットで展開すれば、共通のノウハウや対応策が適用できるのでやりやすい。焦ることはないが、いざ出店という時のために常に物件情報はチェックしておいた方がいい」と語る。島居さんも仕事柄、「毎朝テレビをつけたりコーヒーを飲んだりするのと同じ感覚で」物件情報のチェックを習慣化しているという。
多方面での事業展開、そして海外も見据えた大きなビジョン。視野を広く保ち商機を見逃さないセンスと手腕は、確かな知識の土台の上にこそ築かれるといえそうだ。(取材日:2016年10月4日)

島居 里至さん
アセットフロンティア株式会社代表取締役、株式会社ユナイテッドバケーションズ代表取締役COO。1973年東京都生まれ。大手電機メーカーサラリーマン時代から、株式投資、マンション経営、飲食店経営・プロデュースなどの“複業”を開始。独立後の現在は、内装施工・デザイン、投資・経営コンサルティング、旅行業、ホテル経営、医療クリニック開業支援など多岐に渡る事業を展開する。著書に『サラリーマンの僕が35歳で資産3億円つくった方法』(2009年、大和書房)など。各地でセミナー講師も務める。

麺屋 帆のる 浜松町店
住所:港区芝大門2-12-1 松本ビル1F
TEL:03-6721-5730
営業時間:月~木・土/11:30~15:00、17:30~23:00(L.O.22:30)
金/11:30~15:00、17:30~22:00(L.O.21:30)
定休日:日曜日・祝日
店舗情報:食べログ