インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

女性店主のセンスが光る
思わず「見つけた!」と言いたくなるワインバー

JR浜松町駅から徒歩3分、都営浅草線大門駅、都営三田線芝公園駅から徒歩5分。大通りから一本入った芝大門2丁目エリアは、夜になると昼間のエネルギッシュさを隠し、落ち着いた印象を与える。このエリアで2017年4月1日にオープンしたのが、ワインバー「PINOKO(ピノコ)」だ。

入居するビルの郵便ポストに置かれた、看板代わりの小さなランタンがお客を店へと誘う。狭い階段を上った所には、カウンターのみたった3.9坪の狭小店。ここがオーナーである河合郁子さんが夢を叶えた一軒だ。

こなれた表情のウッドカウンターに、アイアンの支柱を使ったワイン棚、そして壁や棚に飾られたドライフラワーなど、どれも女性らしいセンスのよさが伺える。
「自分のカラーが100%出せる店をつくった」という河合さん。自身が好きな自然派ワインを主力に、それに合うシャルキュトリーや煮込み料理、デザートなどを揃え、一人でもカップルでも落ち着いて飲める店を完成させた。

前職場と同エリアで働きながら物件探し。
イメージにあわせ改装

河合さんは前職で、大門の人気ビストロ「オデリスドドディーヌ」の2号店目となる「レピフエドディーヌ」の立ち上げから入り、その後3号店目の「レジャルダンデドディーヌ」で店長までを務めた。大門で働くうちに「会社員が団体で飲みに行く街だが、2〜3軒目に少人数で落ち着いて飲める店が少ない」ことに気がつき、一人でも気軽に来られる小さな店をつくろうと考えた。

2016年春から独立へ向け物件探しを開始。家賃20万円内で、一人で回せる6〜8坪の物件を探した。
「浜松町、大門エリアは飲食店の人気エリアなので、物件情報がなかなか表に出てきませんでした」。そのためお店に勤めながら休憩時間に街を歩き、空いている物件をしらみつぶしにあたった。そこで見つけたのが現物件。自分がカウンター内に立つ青写真が描けたことが決め手となった。

物件は内装設備と厨房機器などが一式揃った新築居抜き物件。しかし内装が自身のイメージとは違っていたため、椅子を捨てカウンターの天板を造り直した。またワイン棚やカウンター内の吊り戸棚も新設、するなどの工事も入れた。

「お金も限られたなかでの工事でしたので、まだ完成ではありません。例えば8脚ある椅子のうち2脚だけ、1脚8万円もするものを入れています。いずれ全部の椅子を揃えるつもりなので、そのためにがんばろうという励みにもなっているんです」。

50種もの自然派ワインと
シャルキュトリーのマリアージュを提案

看板には自然派ワインを据え、常時50種を用意。ラインアップは河合さんの好みに寄っており「旨味やミネラル感が表現しやすいもの」が集まる。ワインは産地や格付けにこだわらず揃えているが、気軽にオーダーしやすいヴァン・ド・ターブルが多いという。

カウンター越しのコミュニケーションを大切にしていることから、ワインリストはない。これによりほとんどのお客は河合さんを信頼し、おすすめをチョイスする。
メニューは「豚肉のリエット」や「田舎風パテ」などのシャルキュトリーをはじめ、「自家製ピクルス」「日替りサラダ」などワインと相性のよい商品で構成。今後は、河合さんの出身である山口・萩の魚介を使ったメニューをも増やす予定だという。
料理はアラカルトのみだが、予約時の事前相談でコースにも対応。貸し切りもできるため、気の合う仲間とホームパーティーといった使い方も提案する。

「飲食業界には、資金や時間の問題でお店を持てないサービスマンが多いんです。情熱はあるのにずっと自分のやりたいことを実現できない。そうした恵まれないサービスマンのために、やりたいことを追求できる環境をつくるのが目標です。そのため私も店に立ちつつ、2号店を出店して誰かに任せるといった展開ができればいいなと考えています」。

好きなものを追求した業態と、
好きなものに囲まれた空間づくり

「好きなものを扱うことでお客さまにおすすめしやすいですし、何より私自身が追求することで常にいいものを提供できると思います」。こうした考えから、河合さんは看板アイテムに自然派ワインを選ぶ。

またカトラリーにはポルトガルのカトラリー専門メーカー「クチポール」を、ナイフ&フォークレストには日本の真鍮鋳物メーカーブランド「FUTAGAMI」を使うなど、好きなものに囲まれた店づくりを行なった。一方で一部の食器は100円ショップで揃えるなど、玉石混淆でうまく初期投資を抑えている。

「オープン前のトラブルや大変だったことよりも、オープン後の集客が難しいと感じています。うちは2階ですし、間口も狭い。わかりにくい場所にあるので、もっと新規のお客さまが見つけやすいよう考えなければと思っています」
現在の主客層は、2〜3軒目に来店する1人客やカップル。河合さんの人懐こい人柄もあり、“私だけのお気に入りの店”として親しまれている。
(取材日:2017年8月1日)

河合 郁子さん
1980年、山口生まれ。高校卒業後、美術系の大学進学を志して上京。勉強をしながら飲食店でバイトを始めたところ、飲食業に惹かれ進学せずに就職する。都内イタリアンやフレンチビストロなど、サービスマンとして経験を積み、2017年4月ワインバー「PINOKO」で独立。

PINOKO
住所:港区芝大門2-12-1 松本ビル2F
TEL:03-6452-9086
営業時間:18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日:日曜、祝日
店舗情報:食べログ