開業者インタビュー

四川料理と日本酒の新しい出会いをプロデュースする、幡ヶ谷の人気店

山下 勲
四川料理と日本酒の新しい出会いをプロデュースする、幡ヶ谷の人気店

幡ヶ谷駅すぐの路地裏に、ひっそりと佇む本格派四川料理店

新宿から京王新線で2駅の幡ヶ谷駅は、都心に近いベッドタウンだ。駅の南北の出口を分けているのは賑やかな甲州街道。四川料理と日本酒のペアリングをコンセプトに掲げる「酒廊 而空」は、この甲州街道から一本入った、細い路地裏に店を構えている。

はじめての人にはわかりづらいが、それゆえに隠れ家然とした趣をたたえるこの店は、当時代々木上原にあった四川料理店「飄香(ぴゃおしゃん)」(現:麻布十番)で修行を積んだ山下勲さんが、お一人で営んでいる。通りの看板には“本格四川料理”の文字、そして格子があしらわれたファサードには、造り酒屋の軒先を彷彿とさせる杉玉が飾られていた。

四川料理と日本酒という斬新な組み合わせに興味をひかれて、その未知なる食体験を楽しみに、わざわざ訪れる人も多い人気店だ。

「料理の鉄人」に憧れ料理の道へ。
無類の日本酒好きが高じて、「酒匠」資格も取得

山下さんが料理の道を志すに至った原体験は、90年代に人気テレビ番組だった「料理の鉄人」だったそうだ。子供ながらにブラウン管ごしの鉄人たちに、強い憧れを抱いた。そして調理専門学校卒業後に本格的なキャリアをスタートし、これまで中華料理を専門に腕を磨いてきたという。

料理と並行して、もう一つのめり込んだのが日本酒だった。最初は趣味から始まったものの、次第にスクールへ通いつめるようになり、日本酒のソムリエとも言われる「唎酒師」の資格を取得。現在はその上位資格である「酒匠」の称号を得るほどまでに、日本酒を極めてしまった。

「ある程度修行を積んで、自分でも力がついてきたのがわかってきたんです。それで、腕を試してみたくなったんですね。」山下さんは、独立の理由をこう語る。こうして、四川料理と日本酒の斬新なペアリングをコンセプトに掲げた「酒廊 而空」が誕生することになったのだ。

日本酒は、どんな料理にも合う。
素材の旨味を調味料にした 麻婆豆腐 は自信の一皿!

メニューにも「絶対食べてほしい自信の一皿」と書かれている通り、「而空」の看板は麻婆豆腐だ。

青山椒のフレッシュな香りとほどよい痺れ、そこに唐辛子の刺激が加わる。豆腐の白、唐辛子の赤、葉ニンニクの緑が織りなすコントラストを目で感じながら、ぐつぐつと煮えた熱々の一皿を味わう。この麻婆豆腐は、店に訪れる多くの常連客を虜にしてきた山下さんの自信作だ。

そして、この麻婆豆腐に合わせたい日本酒は、抑え目の甘みと、やや感じられる酸味が特徴の奈良の酒「みむろ杉 特別純米」。呑んだ後にくるやや長めの余韻が、花椒の痺れの余韻と混ざり合い、心地よい食後のハーモニーを演出してくれるという。

「日本酒って基本どんな料理にも合うと思ってるんです。でも化学調味料を使ってしまうと、どうしても化学物質が口に残り、その気持ち悪さから、ビールやハイボールで流したくなってしまうんですよね。中華にさっぱりした飲み物や度数の高いものが合うと言われる理由は、そこにあるんですよ。」そう話す山下さんの料理は、うま味調味料を一切使わず、鶏や素材の出汁からでる自然な旨味を調味料にしている。当たり前かもしれないが、信念がないとできないことでもある。

些細なところにも、山下さんのこだわりを垣間見ることができた。

「はじめの半年は、本当に辛かった。」
惨状潜り抜けきた今、山下さんが見据える未来とは

最後に、これから開業を目指す人にアドバイスをお願いしたところ、山下さんの口からは、意外にも「本当に覚悟してやらないとキツイと思います。」という辛辣な一言が飛び出した。

今でこそ人気店として定着している「而空」だが、実は開業から半年もの間、鳴かず飛ばずの厳しい日々を過ごしてきたのだという。先の言葉は、そんな彼自身の実体験に基づく重みのある言葉だったのだ。裏通りの隠れ家という立地は、やりたい店のイメージにはぴったりだったが、その分店を認知してもらうのに、予想をはるかに超える時間がかかってしまった。山下さんの場合、徐々に口コミで噂が広がり、リピーターを獲得していくことで今の成功があるのだが、それはひとえに、彼の人柄や料理に対する誠実さが実を結んだ結果なのではないかとも思う。

そんな山下さんの今の目標は、「3年以内に2号店をオープンさせること」だそうだ。試練を潜り抜けた今、山下さんは次のステージへと着々と歩を進めている。

(取材日:2018年3月6日)

酒廊 而空

公式サイト食べログ

店舗情報


  • 住所: 東京都渋谷区幡ヶ谷2-13-4 第2定石ビル1F
  • 電話: 050-5593-7970
  • 営業時間: 12:00〜14:00 18:00~23:00(L.O.22:00)
  • 業種: 中華料理
  • 地域: 渋谷区幡ヶ谷
  • 初期設備: 居抜き
この記事で紹介された人
山下 勲さん

調理師専門学校を卒業後、品川プリンスホテル内の中華料理店で2年、その後代々木上原(現在は麻布十番)の四川料理の名店「飄香(ピャオシャン)」で8年間修行する。途中、向学のためフレンチでサービスの仕事も経験。開業資金を貯めるために居酒屋2年で勤務し、2017年4月に「酒廊 而空」をオープンさせた。 もっと読む

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