インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

文京区本郷、オフィス街と住宅街がとなり合うまち

東京都文京区本郷。「文京(ふみのみやこ)」の名の示す通り、古くから名だたる大学や病院を擁し、過去には文人や学者が多く住んだ賑わいのある、どこか知的な雰囲気を持った土地柄である。昼夜の人口差が大きいことでもよく知られるエリアだが、ここ「クアラルンプール」周辺は、一歩路地に入れば昔ながらの住宅地でもあり、祭りともなれば地元住民が町会神輿を担ぎ大いに盛り上がる。

「オフィス街と住宅街、たくさん人の行き来があって、なおかつファミリーが住んでいる、そんな場所に店を出したいと思っていました」来日して10年目のマレーシア人店主、ユウ イェン ロンさんは目を輝かせる。店舗は本郷大横丁商店街に面し、平日は学生やビジネスマンで活気がある。東京メトロ本郷三丁目駅から徒歩4分、東京ドームやJR水道橋駅からも程近い立地ながら都心部では今時珍しくなりつつある商店街の一角というのも魅力的である。「マレー料理ってタイ料理、インド料理と比べたら、ちょっとマイナーでしょ? ここだと旅好きな学生や海外経験のあるビジネスマンの来店も結構多いんです」

外国人にとって店探しは苦労の連続。居抜き物件で初期費用をおさえる

20歳で日本の大学に留学生としてやって来たユウさん。学費の足しにと池袋のマレーシア料理店でアルバイト勤務するうちに、料理を介したお客さまとのコミュニケーションに、非常に魅力とやりがいを感じた。自分の店を持ち、理想の店づくりをしたいという思いは日に日に強くなり、ついに飲食店経営の夢を抱くことに。大学卒業後、本格的に夢の実現に向けて行動するに当たり、料理人としての腕を確かにすべくマレー料理レストランにシェフとして就職。それから4年、オーナーからも認められるほどに成長したユウさんは、満を持して自分の城となる物件探しを始めた。

既に来日歴も長く、日本語も流暢なユウさんだが、日本において外国人が店舗を借りるということはなかなかハードルが高かった。「当初、池袋や新宿といった繁華街も含めて出店候補地を考えましたが、外国人という理由で内見すら断られることもあり、心が折れそうになりました…。そんな中、ABC店舗の営業の方には丁寧にお話を聞いていただき、このように物件も決めることができてとても感謝しています」とユウさんは話す。苦労の末に取得した物件は、立地・内装とも希望に沿ったものだったが、想定より50万円ほど予算をオーバーしてしまった。

しかし、居抜き物件だったため、譲渡された造作には意外に使えるものが多く、厨房器具から椅子、テーブルに至るまで自らきれいに掃除して現店舗に役立てることで結果的に初期費用を抑えられた。「前がステーキグリルの店だったから油汚れが結構大変だったけど、厨房から店の床までキレイになってるでしょ? ランタンやバティック(ろうけつ染めの布)はマレーシアの物。全部自分でディスプレイしたんですよ」 壁に飾られた “生意興隆”の文字は、中華圏ではおなじみの商売繁盛と同意の四文字熟語だ。

日本人に伝えたい、母国マレーシアの食と魅力

オープンして9ヶ月、ユウさんにお店のコンセプトやこだわりを尋ねてみた。「まず店名の『クアラルンプール』、もちろんマレーシアの首都の名前です。みんなにマレーシアの店だとはっきり知って欲しくてストレートに決めました。外国で『トウキョウ』って店があったら絶対日本のレストランだって思うでしょ」とイタズラっぽい笑顔のままさらに続ける。「私は人と会って交流するのが大好きなんです。食を通して日本人とマレーシア人が仲良くなって、マレーシアに興味を持ってくれたり、旅行に行ってくれたら本当にうれしい。この店をそんな交流のベースポイントにしたいんです」

ユウさん曰く、古くからマレーシアは様々な文化の交流点であり、主たるマレー系のほか、お隣タイ人、華僑にインド人、オランダやポルトガルの文化もクロスオーバーする。食文化も同様で、古今東西の食材や調理法が多彩で面白く、日本人が知らない料理も数多くあるのでゆくゆくは紹介していきたいのだとか。メニューを見せてもらうとお馴染みの鶏飯、ナシゴレンから、地元仕込みのサンバルソースを使ったローカルなものまで非常に多彩だ。

ランチからディナーまでほんの少しの休憩を挟み精力的に働くユウさん。この店がしっかり軌道に乗ったら同じ志の若者を育てて支店を増やし、店を大きくしたいと語る。今はまだマイナーなマレーシア料理だが、いつかきっと日本人にもメジャーな料理になるだろう。もちろんここ「クアラルンプール」発信で。

基本は「甘い」と「辛い」。目指すは本郷三丁目のマレーシア

マレーシア料理ってひと言でどんな料理ですか? あえての不躾な質問に若き店主、ユウさんは優しい笑顔で返す。「マレーシア料理は重い味付けの料理です。多彩な食材やスパイスが組み合わされますが、仕上がりは甘さと辛さの絶妙なバランスで成り立ちます。癖になりますよ」 すっぱ辛いタイ料理とはまた違った、ご飯が進みそうな甘辛料理だ。

オススメは、「バッターブラウン(海老のバター炒め)」に「バクテー(スペアリブの薬膳スープ)」など挙げればキリがないほど。レストランで修行されたとのことで、それに習い上品な味付けなのかと思いきや、あえて逆の「マレー版おふくろの味」を目指しているのだという。メニューにもアジアンローカルで見るような、どこかほっこりとした家庭料理が多く目立つ。

昼間はお手頃なランチを提供。夕方には近隣のビジネスマン向けにハッピーアワーを設け、ダイニングバーとしても賑わう。開店以来、丁寧な接客でも評判の「クアラルンプール」。マレーシアをよく知る人も、そうでない人にもきっと楽しめる一軒である。

ユウ・イェン・ロンさん
1987年生まれのマレーシア出身。日本の大学に語学留学するも、アルバイト先のマレーシア料理店で活気溢れる飲食店に魅了される。大学卒業後に本格的に料理修行に入り、2017年夏、自身の店「クアラルンプール」をオープンさせた。ローカルを思わせる多彩なマレーシア料理と、気配りのある丁寧な接客が評判の店。

クアラルンプール
住所:東京文京区本郷 2-18-9 ドームヒルズ101
TEL:03-3868-2770
営業時間:11:00〜14:00(L.O13:30)、17:00〜22:00(L.O21:30)
定休日:なし
店舗情報:食べログ