インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

海南チキンライス専門店
ジャンルにこだわった理由

 背の高いオフィスビルが立ち並ぶ、東京・浜松町。コンクリートの建物が軒を連ねる中に、カラフルであたたかい印象を与える看板が見える。「海南チキンライスの店 アゴハン」の代表・吉田さんは3年前まで広告代理店でビジネスマンとして働いていた。時間が不規則な職場で、毎日終電で帰る日々。そんな日々の中、吉田さんは息抜きとして、海外へ一人旅をすることが大好きだった。さまざまな国へ行く中で、いろいろな料理を食べてきたが、本当に美味しいと思ったのは、海南チキンライスだった。米の風味や肉の食感が、日本人である吉田さんにはすべて初体験だった事が良かった。タイ料理やシンガポール料理など、アジアン料理の店は近年急増してきたかのように感じる。都心・郊外問わず、ショッピングモールなどの商業施設内にレストランが開店したりする他、女性雑誌などにも取り上げられることが多くなり、女性を中心に流行となりつつある。

 しかし、「アゴハン」は海南チキンライス専門店。なぜ専門店という形にしたのか。吉田さんがアジアの国々を旅している中で、一般の家庭でも、高級ホテルでも、海南チキンライスが気軽に楽しめる。こんなに美味しいのであれば、日本人にも絶対合うと思った。広めてゆきたい!しかし、もともと料理人ではないため、メニューを絞らないと勝負できないと感じたという。それが海南チキンライス専門店開店へのきっかけだった。

物件の決め手
それは条件とフィーリング

 海外を一人旅していて吉田さんが惹かれた事。それは東南アジアの人々の懐っこさだった。食事をしに行くと、店員のおばさんが近寄ってきて食べ方を教えてくれたり、まるで日本の田舎町のようなあたたかさがあった。「自分と同じようにオフィスで働いている人々が癒されるような、幸せを感じてもらえるような空間を作りたかったんです。」と語る吉田さん。なので、場所はオフィス街で探した。何件か物件を見ていく中で、毎日仕事をする場所は、自分が気に入っているかどうかが大事だった。そういった点で、現在の店舗には何かフィーリングを感じたという。

 まず、間口が広い点。開放的な入口からは東京タワーが見える。個人的にも大好きな東京タワーが毎日見えるのは嬉しいそうだ。次に店の大きさ。カウンター席と、少人数向けのテーブル席。すべてのお客様の顔が厨房の中から見えるため、オペレーションがしやすいこと。前々は蕎麦屋、その次は天丼屋だった店舗は、床が油でベタベタになっており、初めの清掃は大変だった。現在は綺麗に汚れを落とし、シンプルな内装をカラフルな暖色でまとめている。

 色合いや視覚にも気を使ったという。壁には「アゴハン」のロゴや、可愛らしいデザインのイラストが飾られている。それもすべて吉田さんが手掛けているというから驚きだ。こういった店づくりから、オフィス街でも女性が入りやすい店舗デザインとなっている。また、コンクリートの建物が多いので、目立ちやすく視認性の良い外観にもなっているように感じる。結果、現在の客層は女性7割男性3割。女性1人でも気軽に入れる店になった。

研究と努力が生み出す
新しい”専門店”のかたち

 「日本人テイストの味と、現地の味とは違うけれど、日本人が好きな海南チキンライスだったら絶対負けないという自信はありました。」と吉田さん。海南チキンライスは国民食なので、一つ一つの店によって味の違いがある。なので約40店舗以上もの海南チキンライスを食べて回ったが、自分が作った方が絶対美味しい!という自信があったという。

 その自信は吉田さんの弛まぬ努力にある。鶏肉の湯がき方から、出汁で炊くジャスミンライスまで。化学調味料や保存料を使わないのもこだわりの一つ。ソースの味も毎日食べ続けて研究し続けた。今でもその研究は終わっておらず、常に新たな味を生み出そうとしている。ソースが常時3種類、自由に選べるのだ。また、他店との違いは、第4のソースを提供しているところが「アゴハン」ならではである。一つの味にとらわれず、さまざまな味を選ばせることで、自分の一番好きな味で食べることが出来る。専門店ならではの工夫の仕方である。しかし、まだまだ開店したての店舗。課題はたくさんある。

 「よく『何屋さんなの?』とお客様から聞かれますが、海南チキンライス専門店なんです。ですが、それだけでは夜はやっていけないので、ベトナムのフォーや生春巻きなどいろんなメニューに挑戦しています。」食材のロスがどれくらい発生するのかなど、やって初めてわかることが多いそうだ。やりながら経験と知識を積んでいるという。そもそも、日本では海南チキンライスの認知度はまだまだ低い。オフィス街のため、夜の営業が難しいことに加え、季節や気候にも左右されることを知った。夏などあたたかい気候のときはよく売れる。しかし、売り上げが減る日本の寒い冬に対応するため、季節限定の料理を開発したりと、試行錯誤を重ねている。「やっぱり将来は海南チキンライス一本でやっていきたいです。」と吉田さん。研究と努力をし続ける「海南チキンライスの店 アゴハン」は、確実に新しいカタチの専門店となっていくだろう。
(取材日:2016年3月8日)

吉田 英基さん
広告代理店にて勤務しながら、趣味の一人旅でさまざまなアジア各国を旅した。その国々で約40店舗以上の海南チキンライスを食べ歩き、研究を重ね、ついに「海南チキンライスの店 アゴハン」をOPEN。海南チキンライスの美味しさを日本中に広めてゆきたいという、注目の店舗のオーナーである。