インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

ホルモンの奥深い魅力を伝えるお店を開きたい
学生時代からの夢を実現

 地下鉄千代田線・湯島駅から徒歩1分。不忍池や旧岩崎邸を有する歴史的地域であり、粋な飲食店が集う街でもあるこのエリアの一角に「炭火ホルモン ハルマキ」はある。派手な居酒屋が立ち並ぶ中で、黒と茶を基調としたシックな外装。“ 良質な料理が味わえそう” 。入る前からそんな期待が高まるお店である。

 ハルマキの特徴は何といっても40 種類近くに及ぶ豊富な牛・豚ホルモンの品揃え。「ホルモン専門店でも品数の点では都内ベスト5 に入るのでは」と語るのは、店主の大名二朗さん。特に、こってりとした甘辛タレに漬けたマルチョウ( 牛の小腸) はこの店の看板メニュー。芝浦直送の新鮮なホルモンの食べ比べが楽しめる6 ~12 種の盛り合わせも好評だ。

 「ホルモンひとつひとつの違いを味わってもらい、その奥深い魅力を伝えるお店を開きたかった」。ミノ、ハツ、シマチョウ、オッパイ、チレ― ― 部位ごとの下ごしらえの違いを丁寧に解説してくれる大名さんの言葉には、ホルモンへの想いが満ちている。ホルモンとの出会いは大学時代に遡る。ある時利用したホルモン店で美味しさに開眼。月イチで通うほどのファンになった。実は、奥様との運命の出会いがあったのもそのお店。「自分たちの縁をつないでくれたこのお店のように、訪れる人が楽しく幸せな時間を過ごせる場がつくれれば」と、ホルモン店開業を志すように。

 大学卒業後、企業に入社しサラリーマン生活を続けていた大名さんだが、転機となったのは2010 年。転職活動をする中で、ふたたび飲食店への夢が心をよぎるようになった。内定も出ていたが「このまま会社員を続けても、また転職の繰り返しなのでは」と、意を決して飲食店開業への道に踏み出した。

物件の決め手は立派な「ダクト」設備!
限られた予算でイメージ一新、居心地よい空間に

 退職後、大名さんはホルモン専門店に入店。5 年にわたる修行生活を送ることになる。包丁の持ち方からはじまり、材料調達、仕込み、調理、接客、会計まで、飲食店運営の基礎がここでみっちり身につき、自信につながった。「震災を経験したのもこの時期。緊急時の対応を肌で学びました。また、季節ごとの売れゆきの変化など、経営に必須の感覚を得られたのも貴重な経験だった」という。

 独立開業に本格的に乗り出したのは、2 0 1 5 年春。サラリーマンを想定客としてビジネス街への出店を検討しはじめた。実は、湯島は当初、候補地の中には入っていなかった。「この物件の決め手は、ダクト( 換気のための通風管) 。新規に施工すると少なくとも500 万はかかる設備ですが、造作譲渡で半額以下の200 万ほどで手に入れることができました。居抜きだったので厨房設備があったのも良かった」。

 大名さんの行動は迅速だ。開業に専心するために、長らくお世話になった修行先を退職したのが、同年12 月末。翌2 0 1 6 年1 月中旬にA B C 店舗の内覧会で出会った現物件に申し込み、25日に契約、2 月15 日に引き渡し、そして、保健所許可が下りた翌日の3 月16 日にオープンと、わずか2 ヶ月の間に開店にこぎつけた。

 「あれは今思い返してもドタバタの日々でした( 笑) 」と大名さん。内装についてはどのようなポイントを重視したのだろうか。「限られた予算の中で希望イメージに合う内装となるよう工夫しました。例えば、引き渡しの時には全面ホワイトだった壁面を、イメージ一新のために、ペンキや脚立を買い、自分で黒に塗りました」。その結果、数万円程度と、通常の十分の一ほどの経費で収めることができたそうだ。

 「ガチャガチャした雰囲気が苦手なので、女性の方でも入りやすい、清潔感があり、居心地のよい店。そうした内装を目指しました」。1 6 . 5 坪と希望していた物件よりもやや広めの店舗を一人で回すにはまだ工夫が必要そうだという。「今は何も装飾がないので、ちょっとさみしいかな。お客様のためにも、より効率的で、よりくつろいでいただけるお店づくりに努めたい」と今後の改善にも意欲的だ。

不安も多いが好きな仕事で生きる喜びは無限大
飲食店の醍醐味を実感する毎日

 開店3 ヶ月目を迎えて、早くも大名さんのお店はホルモンを楽しむお客様たちで賑わっている。「クオリティはんぱない! 」とアツい口コミも寄せられている。「会社員の方々のほかに、地元のご家族や学生さんたちも多いですね」。女子会や子連れの方も多いという。大きな荷物を置いたり、赤ちゃんを寝かせたりもできる広々とした小上がり席も人気の理由だろう。今後はサラリーマン層のお客様も増やしていきたいと考えている。

 自分の店を持ってから、人のご縁に感謝が止まない日々という。「オープンを告知すると、連絡が途絶えていた友人たちが来店してくれるようになって。県外からお祝いを携えて訪れてくれた人もいるんです」。家族の支えも心強い。ホルモンがキューピッドとなった奥様は共働きだが休日には二人で店に立つことも。2 人のちびっこのパパでもある。「実は店名「ハルマキ」の由来は、子どもたちの名前を組み合わせたもの」。一緒に住む義両親も子育てを引き受け、店を応援してくれている。

 「実際にオープンしてみて、一人でお店をやる大変さを実感しています」。仕込み、調理、接客、支払関係や経理、営業への対応… … 毎日が慌ただしく過ぎていく。有り難いことに来客ゼロの日はまだないが、客数が伸びない日は不安に駆られることもある。「でも、店への愛着はどんどん強まっていく。何よりも“ やりたかった仕事で生きている” この喜びが僕を支えてくれています」。大好きなホルモンでお客様が喜んでくれ、その対価として報酬をいただく。飲食店には何ものにも代えられない醍醐味がある。

今後は2 店目、3 店目も― ―
飲食店開業のコツは勉強、確認、そして「勢い」

 「部位ごとにベストな焼き方をお伝えしたり、実際に材料を見せてホルモンのことを知ってもらったり、お客様にホルモンを美味しく楽しんでもらうために、今後も僕のできることを何でもやっていきたい」。学生時代から追及してきたホルモンへのこだわりは誰にも負けない。最後に今後の展望を伺った。

 「今は正直、その日その日の営業をこなしていくのが第一目標です。でも、ゆくゆくは2 店目、3 店目と拡大していきたい。もちろん業種はホルモン専門店! 構想も練っているんです。カウンターにショーケースを設置して、ホルモンを入れる。そして、そこから切り出してお客様に提供する。ちょっとギョッとするかもしれないけど、面白いでしょ? ( 笑) 」将来に向けて、アイディアは尽きない。

 「これからの新規の開業を考えている方々は、お金のことや不動産契約について、しっかり勉強することをオススメします。実際に店舗を物件や内装についても、疑問がある点は、不動産会社や業者にしっかり確認することが大切です。僕も振り返ってみると、調査不足だったことも多い。でも、最後は“ 勢い” も大切だと思います」。冒険心と論理的思考の絶妙なバランス。目標を見失わず、開業までのステップを着実に進めてきた大名さんの横顔は、自らの手で夢を叶えた誇りと喜びに輝いていた。
(取材日:2016年6月8日)

大名 二朗さん
東京都出身。営業職から一念発起して飲食店開業を決意。5 年の修行期間を経て、2016年3月、文京区・湯島に「炭火ホルモン ハルマキ」をオープンし、長年の夢を叶える。湯島駅徒歩1分の便利な立地、居心地の良い店内、そして芝浦直送の40種近くに及ぶ新鮮なホルモンが話題を呼び、早くも地元や会社員達に愛される店となっている。

炭火ホルモン ハルマキ
住所: 文京区湯島3 -47- 8
T E L :03-6803- 2 9 4 1
営業時間:17:00~ 24: 00 ( L.O.23:00 )
定休日: 日曜日・祝日
店舗情報:食べログぐるなび