インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

可愛らしい入口の焼き菓子専門店
焼き菓子に合うブレンドティーもオススメ

 巣鴨駅から白山通りを地蔵通り商店街に向かい、商店街入口手前の真性寺の交差点を左折。商店街とは打ってかわって閑静な住宅街を行くと、突き当たりの手前に「petits bonheurs」の可愛らしい入口が見える。JR 正面口から徒歩5分、地下鉄のA3 出口からは徒歩3分だ。明るいガラス張りの店内には焼き菓子の甘い香りが漂っている。テーブル・椅子・ショーケース・カウンターはお揃いの木材で作られていて、温かみのある色合いの照明と相まってホッとする雰囲気に包まれている。

 「petits bonheurs」はフランスの焼き菓子を中心とした焼き菓子専門店。マドレーヌやフィナンシェ、季節のフルーツタルトやクロテッドクリーム付きスコーンなど、テイクアウトだけでなく店内でゆっくりいただくこともできる。紅茶はフランスの女性ティーブレンダーの手によるブレンドティーの中から焼き菓子に合うものが数種類用意されており、カラフルな南部鉄器のティーポットが使われている。ブレンドティーも焼き菓子も季節のメニューがあり、四季折々の楽しみがある。

飲食業未経験からの開業
事務所用を店舗に一から改装!

 多田さんに飲食業の経験はなかったが、お菓子作りが大好きで10 年以上前からご主人が定年を迎えた後くらいにお店を持てたらいいなぁと考えていたそうだ。自身の退職後、実はそういう夢があるので準備をしようかなとご主人に相談したら、ご主人も同じような夢を持っていたことが分かった。それならと子育ての合間に教室に通い始め、転勤先の大阪では辻調理師学校で製菓と製パンを学びながら天然酵母を使うパン教室にも通った。そこで出会った先生から誘われて一緒にお菓子教室を始めるはずが、またしてもご主人が転勤に…。せっかく準備をしたのだからと、東京に戻って2〜3ヵ月後に自宅でお菓子とパン作りの教室を始めた。教室を開いて4年が経ち、ご主人の定年までは間があるもののそろそろお店を持とうという話が動き出した。

 物件は、お子さんがいつでも来られるよう自宅に近い巣鴨に限定し、商店街ではなく住宅街を希望した。観光客よりも地域に密着したお店にしたかったのだ。しかし住宅地はなかなか物件が出ず、お店が決まるまでに9ヵ月かかった。やっと出会えた店舗は、元ガレージを事務所として貸し出すためにお手洗いと簡易なキッチンを付けただけのスケルトン状態のもの。ここから理想のお店作りが始まった。簡易なキッチンを撤去してガスを引き、シンクを入れ、厨房もイートインスペースも一から作った。天井が低かったため底上げしいてる床を取り払ったらトイレ側の壁際に配管が出現し、配管が隠れるように最小限の段差をまた作らねばならず工期の延長と余分な出費がかかってしまった。「テイクアウトをするには保健所の決まりで厨房と売り場の間に壁が1枚必要なんですけど、お客様に安心感を持ってほしかったので、厨房の様子が見えるようガラス張りにしました。それに私たちも見られていると思うと自然ときれいな状態を保つように心がけますしね(笑)」

 お店を始めて予想外だったのは、包装材や袋など細かいものが思っていた以上に必要だったこと。それと個包装に人手と時間がかかることだった。しかし個包装に乾燥剤を入れたり量を調整して小分けに何度も焼くことに手間をかける分、廃棄はほとんどないという。

母親だからこその“こだわり”が随所に!
お菓子教室も今後は定期的に

 「petits bonheurs」とはフランス語で“小さな幸せ”の意味。心を込めて作ったお菓子が日常にある小さな幸せの一つのツールになればと願っている。とかく特別な日やかしこまったときになりがちな洋菓子だが、おやつも食事の一環として考え、クッキー1つ、マドレーヌ1個でもいいから、きちんとしたものを食べてもらいたい。小学生のお子さんを持つ多田さんだからこその想いが込められているのだ。バターと小麦粉は北海道産、卵はエサからこだわって低コレステロールで栄養価の高い卵を作っている小林養鶏農園から仕入れ、砂糖はオーガニックシュガーと種子島で昔からの製法で作られたミネラルたっぷりの洗双糖(せんそうとう)と、安全と味にこだわって材料を仕入れている。

 また、フランスの郊外にあるような、温かみがあって落ち着いてホッとできるお店を作りたかったという多田さんのもう一つのコンセプトは、小さいお子さんを連れているお母さんも立ち寄れるお店。「お子さんが泣いていてもいいんです。ベビーカーでもいいんです。そういうなかなかゆっくりお茶もできないお母さんがホッとできる場所になれたらと思うんです」と多田さんは微笑む。店外のテラス席はワンちゃん連れのお客様も利用でき、この辺りにはなかったから嬉しいと好評だ。

 開店から1年が過ぎ、やっと季節の流れが分かってきたので、今後はまたお菓子教室も定期的にできるようになればと思っているそうだ。将来的には小学生向けのイベントも考えている。 「お菓子を特別なものでなく日常の小さな幸せに」という多田さんの想いは、じわじわと、しかし確実に伝わっていくだろうと感じた。
(取材日:2016年5月)

多田 幸子さん
会社勤め~結婚~子育てと飲食業の経験はなかったが、将来はお店を出したいという夢を持っていた。退職後にクッキングスクールなどに通いライセンスを取得。ご主人の大阪転勤の際に本格的に勉強しようと辻調理師学校へ。製菓と製パンを専門的に学ぶ。その後東京に転勤になり、自宅でお菓子教室を始めた。教室を始めて5年目を機に開店に向け動き出し、2015 年1月「petits bonheurs(プチ・ボヌール)」オープン。

petits bonheurs(プチ・ボヌール)
住所:豊島区巣鴨3-4-2
TEL:03-5980-8723
営業時間:月・水〜土 10:30~17:30
定休日:日曜日・火曜日
店舗情報:HP食べログ