特集

【飲食店開業】成功の鍵を握る「事業計画書」

目次
事業計画に欠かせない「コンセプト設計」
事業計画書の書き方とポイント
事業計画は”見直し”が大切

長年飲食店で従事する方の中には、独立開業を目標としている方が多くあります。

しかし、飲食店を開業できたとしても成功する人はほんのひと握り

一般的に飲食店の廃業率は、1年未満で30%、2年以内で50%、3年以内では70%といわれており、誰でも参入しやすい反面、短期的に経営困難となる店舗が多いのが現実です。

その一握りの成功を掴むためにも、まずは最初のステップとなる「事業計画」についてしっかりと学んでいきましょう。

「事業計画書」とは

事業計画書とは、創業者が「これから行う事業の内容を整理し、目標を達成するためには具体的に何をすべきか」を明確化した資料のこと。

ですが、この事業計画書は何のために作成するのか、皆さんは本来の目的をご存知でしょうか?

飲食店を立ち上げるためには、物件取得費用と設備・機材の導入費用、オープン後の運転資金も準備しておかなければなりません。少なくとも1,000万円程度の資金が必要となりますが、いち従業員・いち社員として勤めてきた方であれば大きな金額であり、軽々と支払える人は少ないでしょう。

実際に、新規開業者の多くは金融機関から借入れを行なうことで、開業資金を補っています。その融資の申請に必要なのが、「事業計画書」です。

しかし、事業計画書の作成は融資を受ける為だけではなく、数多くの目的があります。

事業計画書を作成することは、必要な資金を明確化し、漠然とした計画をより実現性の高いものへとブラッシュアップするために必要なプロセスです。また、ご自身で描いたプランを客観視できるというメリットもあります。どんな計画も、頭の中で構想していては曖昧で不確実な状態にありますが、数字や論理的な言葉に落とし込むことで実現可能性を見極めることができるようになります。そうした目的を果たす為にも、事業計画はかならず必要なものであり、時間をかけて練り上げることが適切です。

事業計画に欠かせない「コンセプト設計」

ビジネスの現場でよく耳にする「コンセプト」
なんとなく使っている方も多いと思いますが、ここでいうコンセプトは「構想」すなわち、「全体を把握した上での一貫した考えや指針」のようなものを指します。

事業計画書の作成において、コンセプトは取り扱い商品やサービス内容、ターゲット顧客、販売戦略などを考える基となり、「店舗の壁の色は何にしよう」「メニュー構成はどうしよう」といった後々でてくる細かい決定事項も、はじめにコンセプトをしっかり決めておくことでスムーズに判断できるようになります。従って、事業計画を立てる上でコンセプト設計は欠かせない行程であるといえます。

そして、コンセプト設計をするときには、7W2Hを念頭におくとわかりやすいです。

7W2Hで考えるコンセプト
Why 「なぜ・何の為に飲食店を開業するのか」 動機・目的
When 「いつまでに開業するのか」 時期・タイミング
Where 「どこに飲食店を開業するのか」 エリア・立地
Who 「どんなメンバーで開業・営業するのか」 経営者・営業スタッフ
Whom 「どの顧客層に向けた店舗にするのか」 ターゲット
What 「どんなサービスでどんなメニューを売りたいのか」 提供サービス・メニュー
Which 「どれを一番売りにしたいのか」 イチオシ商品
How 「どのように世間に広めていくのか」 宣伝・広告
How much 「どのくらいの期間と資金で開業するのか」 費用・予算

7W2Hを飲食店開業という目標に落とし込んでいったものが上の表になります。中でも特に重要なのが、”Why”です。開業を目指すにあたっての動機や目的にあたる”Why”が明確でない場合、その後のコンセプト設計が難しくなってしまいますので、時間をかけてでも自分の想いを整理し言語化してみてください。もし、「なんとなくやってみたいから」のような軽い気持ちで開業をお考えの場合は、開業すべきかどうかをもう一度考え直すことをおすすめします。

「コンセプトを考えるにしても、どのようにまとめていいのかわからない」という方に向けて、入力フォームとサンプルを記載した【コンセプト設計シート】をご用意しましたので、お気軽にダウンロード(無料)して店舗の事業計画にご活用ください。

事業計画書の書き方とポイント

それでは、いよいよ事業計画書の書き方についてご説明していきます。
ここでは融資を検討されている方もいらっしゃるかと思いますので、日本政策金融公庫への借入申込時に提出する「創業計画書」を例にとりあげます。創業計画書には全部で9つの記述項目がありますが、特に重要な4項目にしぼって書き方とポイントをお伝えしていきます。
計画書は具体的且つ内容が詳細であるほど実現可能性が高いと判断されやすいので、できる限り各項目の内容を詰めてびっしりと埋めることが大切です。

1.創業の動機

具体的かつ客観的根拠に基づき、きちんと利益が出せる見込みがあっての創業であることを伝えましょう。ご自身の経験を盛り込むとよりリアリティが増します。

【例】
× 飲食店を開業するのが小さい頃からの夢でした。
○ 飲食店開業を目標に、5年前から資金を貯めはじめ、勤務先で店長になった3年前から独立のための準備をしてきました。

2.経営者の経歴等

あなたがこれから開業するお店に関するプロフェッショナルであることを強調しましょう。

【例】
× 株式会社○○に▲年間勤務。
○ 株式会社○○に▲年間勤務し、平成25年までホール担当、26年からホール責任者、30年からは総括責任者。

7.必要な資金と調達方法

ここでは具体的な数字を書き込んでいきます。

―[1]自己資金の欄
現在のご自身の普通預金の残高を記入します。
―[2]日本金融公庫からの借入の欄
公庫から借りたい金額を記入します。
新創業融資制度の場合の上限額は、1000万円または<自己資金額×2>をして出した額のどちらか少ない方の金額
―[3]親、兄弟、知人、友人等からの借入の欄
ある場合のみ記入します。
―[4]合計
1+2+3の合計額を記入します。
―[5]設備資金の欄
見積書の金額を記入します。(複数ある場合は合計金額を記入)
-[6]運転資金
4の合計金額から5の設備資金を引いた金額を記入します。

8.事業の見通し

ここには、収支計画を記入します。

―[1]売上高の欄
必ず実現可能な数字を書くようにしましょう。
―[2]人件費の欄
<法人の場合>ご自身の給料+従業員の給料を記載
<個人の場合>従業員の給料のみを記載
―[3]その他の欄
光熱費や家賃など、月々にかかる必要経費の予想額を記載しましょう。
―[4]売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算された根拠の欄
1の根拠となる部分なので必ず記載しましょう。記載項目は、売上高(昼・夜・平日・休日などわけて記載)・原価率・人件費・家賃等の固定費・光熱費等の変動費を、事業を始める時期と事業が軌道に乗った以降とに分けて記載すると具体性が高まります。
※売上高の計算式は <客単価×席数×回転数×営業日数> です。
―[5]自由記述欄
あなたのセールスポイントをなるべく具体的に記載しましょう。同業他社に比べ、あなたがどれだけ優れているかをアピールする場として活用してください。

事業計画書のテンプレート

事業計画書のテンプレートは以下のサイトからダウンロードすることができます。

事業計画は”見直し”が大切

融資が通るかどうかの審査に関して言えば、融資担当者が開業しようとしている店舗の立地条件を実際に検証する訳ではなく、提出された事業計画書を見て先々の返済が可能かどうかを判断します。従って、誠意と熱意をもって作成し、繰り返し見直すことが重要です。

あわせて、ご自身の頭の中にあるイメージを数字や論理的な言葉で具体化し、実現性の高いものへとブラッシュアップする意識をもって作成しましょう。コンセプトや事業計画を明確化してから次のステップに進むことで、スムーズ、かつ失敗のない開業が可能になります。

さいごに、事業計画は”お店を開業するまで”の計画ではなく、”お店を開業してから”の指針であることを頭に入れておいてください。あくまでお店を開業してからがスタートです。

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