インタビュー
14年の時を経て成就した熱い想い。筋金入りのジンギスカン好きがオープンさせた専門店
早稲田大学をはじめ多くの大学や専門学校が集まり、学生街のイメージが強い高田馬場。アクセスもよく多種多様な飲食店が軒を連ねているため、ツーリストや都内で働く社会人層からの支持も熱く、日中問わず常に活気に溢れている。
そんなエリアにある西早稲田商店街の一角に店を構える「羊のロッヂ」は、昨年3月にオープンしたジンギスカン専門店だ。ロッヂという店名の通り、木の温もりを感じさせる山小屋のような雰囲気の店内には、全面ガラスの戸から日光やネオンの明かりが差し込んでくる。
ちょうど今のような気候の良い時期には、テラス席でジンギスカンを楽しむこともできるようだ。
羊に恋した学生時代
聞けばオーナーの越坂部さん、学生時代からジンギスカン料理屋で4年半も働いていたという筋金入りの羊好き。調理場から接客までをこなし、バイトから店長にまで上り詰めた頃にはすでに、「いつか自分もジンギスカンの店を持ちたい」という夢があったようだ。「ラムってこんなに美味しいのかって僕自身が感動し、この美味しさをみんなに伝えたいと思ってしまったんですね」
しかし、開業への夢を持ちつつジンギスカン料理屋を辞めた彼は、首都圏を中心に約60店を展開する大手「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」に転職する。「まだまだ知らないことがたくさんある、世間知らずなままじゃいけないって思って転職することにしたんです。もちろんすぐにでも自分の店をやりたかったんですが、その前に大きな組織の中で色々見てみたいという気持ちもあって」
遠回りは一番の近道
越坂部さんがようやく自分の城を構えるまで、そこから実に9年半という時間を要した。「ふと気づいたら、思ったよりも随分長く勤めていました(笑)」しかし、決してその時間は無駄ではなく、むしろ必要だったのだと思わせるエピソードも伺えた。
「スープストック時代に高田馬場をはじめ都内12店舗で店長をやったんですよ。各土地の温度を肌で感じていたので、店の土地選びにはあまり苦労しなかったかもしれません。高田馬場は学生の街と言われているけど、駅を少し離れると住宅も多いし、昔ながらの商店街も残っている。アクセスの良さと賑わい、そして“庶民感”がちょうどいいバランスで存在している場所なんです」
「あと、スープストック時代の後輩にバイトしてくれる人を紹介してもらったり……そうそう、この壁に掛かっている羊のイラストも、スープストック時代に付き合いのあったクリエイティブデザイナーさんにお願いしたものです。依頼した当初、30パターン位羊のデザイン画があがってきて驚きました(笑)」持つべきものはコネクション、そして経験である。
娘の出産と被ったオープン時期
「この山小屋のような狭い空間で肩を寄せ合って、年齢や立場も関係なく美味しい羊を味わって頂きたいというのがコンセプトです」と言う越坂部さんが内装で特にこだわったのは、木のぬくもりを感じさせること。スケルトン物件だったため、イチから全てを作り込む必要があったようだ。
「DIYでできるところはこちらにやらせてくれる内装屋さんだったので、内装費を抑えることができました」しかし、驚かされたのは娘さんの出産時期とその期間がかぶってしまっていたこと。「周囲には本当に大丈夫かと心配され、嫁とは納得行くまで色々話をしました。確かにすごく大変でしたけど、開業って自分で働き方を調整したり時間を作っていけたりという利点があるのは確か。子育てと自分のずっとやりたかったことが両立できているので、今はすごく幸せです」と話す笑顔が眩しい。
大切なのは妄想力とコミュニケーション
「店は僕にとっての秘密基地」という越坂部さんに、店の中で気に入っている点について質問した。「近所に住む子供たちが通りすがりに挨拶しにきてくれるんですよ。以前親御さんと食べにきてくれた子達なんですけど、その位開けたスペースなのがすごく気に入っています」ここまで読んでいただければ察して頂けたと思うが、当然ながらラム肉選びにも余念がない。提供される質の良い生ラム肉は柔らかく癖がないので子供でも食べやすく、実際ファミリー層の来客も多いのだとか。
「あとは道具にもこだわりがあって、例えばお客さんにお出しする鍋は、新潟から揃えた外堀式の珍しいものを採用しています。上の鉄板で焼き肉、下の鍋でしゃぶしゃぶがいっぺんにできるようになっていて、両方楽しみたいお客さんにはすごく好評ですね」
そして最後に、「妄想が店のこだわりを生むので、店を開く方はめちゃくちゃ妄想したほうがいいと思いますよ。例えばカトラリーひとつにしても、自分のイメージに叶うものを用意して、実際使ってもらったお客さんに「いいね」って褒めて頂いた瞬間なんて、すごく嬉しいしこだわってよかったって思えるんです。また、周りとのコミュニケーションが何よりも大切。最初の2〜3ヶ月はきっとイレギュラーの連続ですが、例えばクレームひとつに対してもきちんと向き合うこと、そして自分から挨拶することを心がけていれば、周囲からの理解は得られるはずです」と、これから飲食を始める方々にとって参考になる助言ももらえた。
(取材日 2018/4/26)
店舗情報【羊のロッヂ】
この記事で紹介された人
越坂部 忠生さん
学生時代からジンギスカン専門店でアルバイトをはじめ以来、「いつか自分もジンギスカンの店を持ちたい」という夢を持つ。大手飲食会社に勤務し9年後、独立開業。2017年3月、新宿区西早稲田にジンギスカン専門店「羊のロッヂ」をオープンし現在に至る。
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