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飲食店の閉業率が高いのはなぜか。その原因と対策とは | 飲食店舗・開業ノウハウ

目次
昨今の外食産業は盛り上がり傾向にある
飲食店の開業率と閉業率の現状
外食産業が盛り上がっているのに、なぜ閉店する飲食店が多いのか
飲食店が閉店する理由とは…
閉店に追い込まれないためにはどうすればいいか

帝国データバンクによる倒産動向調査によると、2017年の年間の飲食店倒産率は、近年最多の2011年に次ぐ高水準をマークしたそうだ。
しかもこれは、あくまで倒産率の統計であって、自主的に店を閉める「休廃業」や「解散」などのケースは含まれていないことになる。
もちろんそれらを含めた飲食店全体の閉業率となれば、さらに大きな数字になることは明らかだろう。

飲食店経営は比較的参入しやすいビジネスであると言われている。そのため、年間の開業数も多い業種ではあるが、一方で一度開業した飲食店を10年、20年と長きにわたって存続させることは非常に難しいとも言われている。

今回は、過去6年ぶりに増加した倒産率をきっかけに、飲食店が閉店に追い込まれる様々な原因を検証しながら、息の長い営業を続けるためにはどうすべきなのか、これから開業を予定している、もしくはすでに飲食店経営への一歩を踏み出しているオーナーがとるべき対応策について考えてみたいと思う。

昨今の外食産業は盛り上がり傾向にある

その前に、昨今の外食産業の盛り上がりがどの程度なのかを簡単に見ておきたい。
経済産業省が発表する、飲食関連産業全体の活況状況をあらわす指標=フード・ビジネス・インデックス(以下FBI)(※1)によると、2016年後半以降の「飲食サービス業」のFBIは、3期にわたって連続上昇しているそうだ。 また、その伸び率の度合いをみてみると、「食料品工業」や「食料品流通業」などといった他の食品産業を差し置いて、食堂やレストラン、居酒屋、喫茶店等を含む「飲食サービス業」が最も高い伸び率を示している。
同じ資料には、「食料品小売業」のような内食産業よりも、「飲食店・飲食サービス業」の盛り上がりが顕著であることも示されている。
これらのデータから見えてくることは、特に2016年後半から2017年にかけての外食産業は、盛り上がり傾向にあるという結論だ。

ちなみに外食産業の活動指数は、震災のあった2011年にもっとも大きく下落しており、別の資料によるものだが、その年の倒産率もまた、近年もっとも多いピークを迎えている。
これらのデータからは、外食産業の低迷が多くの飲食店の倒産を引き起こしたという、飲食店の倒産率と外食産業の盛り上がりの相関関係をみてとることができるだろう。

しかし、反対に外食産業が盛り上がりをみせる現在、倒産率が下がっているかというとそういうわけではない。冒頭にも述べた通り、2017年の倒産率は前年を大きく上回っているのだ。そのことについては次章以降で触れていきたい。

※1:生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」、「食料品流通業」、「飲食サービス業」について、価格変化の影響を除いた実質指数で把握し、同時にそれを加重平均して飲食料品関連産業全体の活況度合いを把握できるように試算している経済指標のこと。

飲食店の開業率と閉業率の現状

飲食店をはじめとする外食産業が、ここ数年盛り上がり傾向であることがわかってきたところで、今度は倒産や廃業を余儀なくされた店舗についてのデータをみていきたいと思う。
まず、2017年に倒産した飲食店の数は766件という発表があり、前年よりも2割も増加した数字となっているようだ。

また、厚生労働省発表の資料 から、全国の事業所における開廃業率の推移をみてみると、2015年のデータでは、すべての業種における開業率は5.2%なのに対し、廃業率は3.8%となっている。
しかしこの結果には、「製造業」や「建設業」といった飲食業以外の他業種も含まれているため、飲食業に関する数字をより詳しく見ていくには、業種別の推移を参考にする必要がある。
そこで、同じ2015年の業種別の推移データをみてみると、他業種と比較し、「宿泊業・飲食サービス業」の廃業率は6.4%と、ずば抜けて高い数字をはじき出していることがわかる。

つまり、「宿泊業・飲食サービス業」の廃業率が、全体の廃業率を大きく押し上げていたのだ。
それだけでなく、閉店率と同様に、開業率の高さにおいても「宿泊業・飲食サービス業」の数字が最も高くなっており、冒頭に少し触れた “参入はしやすいが、存続することは難しい”という飲食業にまつわる通説を、裏付けるような結果になっていることがわかる。

この開廃業率の推移と、前章における結論から、外食産業は盛り上がり傾向にあるにも関わらず、飲食店等の閉業率は上昇傾向にあるという、何とも不思議な現状が見えてきた。

外食産業が盛り上がっているのに、なぜ閉店する飲食店が多いのか

開業率が高いということは、たくさんの飲食店がオープンしているということだ。つまり、飲食店にとっては競合店が増えていくことにもつながっている。
それだけでなく、大手飲食チェーンの台頭はもちろんのこと、コンビニやスーパーなどで手軽に惣菜を買うことができるようになり、宅配サービスや通信販売なども充実している昨今、飲食店の競合は、同業のみならず他業種にも広がっているのだ。

いくら外食産業が盛り上がっているとはいえ、市場の規模が限られている中で、競合だけが増えていってしまっては、供給に対して需要が追い付いていかないだろう。
そのため、飲食店を取り巻く現状は、“どんどん新店舗がオープンしてはどんどん潰れていく“という、よからぬスパイラルに陥ってしまっているのだ。

ちなみに、開業から1年未満で閉店に追い込まれる飲食店の割合は、30%を超えると言われている。
反対に、創業から10年間生き残れる飲食店の割合は、わずか10%にも満たない…。
外食産業が盛り上がり、飲食店舗が増えれば増えるほど、飲食店を取り巻く競争環境はより厳しさを増していく。そのことは決して、昨今の飲食店の閉業率の高さと無関係ではないようだ。

飲食店が閉店する理由とは…

そこで今度は、飲食店が閉店に追い込まれてしまう理由についてみていきたい。
帝国データバンクの2017年の統計結果によれば、閉店理由の88%を占めているのが「販売不振」なのだそうだ。他にも「事業上の失敗」や「既往のしわ寄せ(赤字累積)」などが閉店理由として挙げられている。

また、小規模店舗の場合は、病気や高齢などによる事情でやむなく閉店を余儀なくされるケースも少なくない。
昨今、外食産業黎明期に創業した老舗店舗の閉店を目にする機会が頻繁になってきたが、そういった店舗においても、やはり自身の体調不良と、それに伴う後継者不足が閉店を決める大きな理由となっているようだ。

閉店に追い込まれないためにはどうすればいいか

ここで飲食店のトレンドに話を移すと、最近は「健康志向」「専門店化」といったキーワードが目立っているように思う。
またSNSの流行により、「インスタ映え」を意識して商品開発をしている店舗も多いだろう。スーパーフードやコッペパン、クラフトビール、ペアリング文化など、次から次と新しいブームが訪れる飲食業界。
しかしそのほとんどは、熱しやすく冷めやすいという点もこの業界ならではの特徴といえる。
そのため、せっかく開発したメニューも、数年もすれば別のブームに押されて通用しなくなってしまうということもよくあることだろう。

そうした状況も踏まえ、飲食店が閉店に追い込まれないようにするためには、消費者に、他店ではなく自店を選んでもらえるよう、オリジナリティのあるメニューや食材、空間やサービス等に嗜好を凝らす必要がある。 そしてそのためには、今消費者が何を求めているのかをきちんと読み解く必要がでてくるだろう。

前述の通り、飲食業界のブームには一過性のものも多いが、例えばビールに代わる食中酒として開発されたハイボールのように、中には一時のブームにとどまらず、その後、定着していくものもある。
ハイボールの例は、うまく消費者のニーズを察知し商品開発に落とし込んだ好例だ。
この消費者のニーズというものは、少子高齢化、人口減少、格差社会、インバウンドの増加などといった、昨今の社会状況が形を変えて現れてくるものだ。
そういった時代の空気を読み解きながら、自身のビジネスの在り方を考えることが、これからの飲食店経営にとって欠かせない要素といえるのではないだろうか。

また、そういった大きな視点をもちつつ、計画性をもって着実に日々の業務をこなしていくことも大切だ。
その2つの両立が飲食店を長きにわたって存続させるための秘訣でもあるのだろう。
毎日の営業にも役立つ、より実用的なノウハウについては、是非下記のリンクも参考にしてほしい。

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