インタビュー

おでんと味噌料理を肴に日本酒を飲む——。行きつけにしたい、ちょっと粋な居酒屋を浅草で

目次
看板はお通しのみそ汁と通年提供のおでん!
あえて閉鎖的な外観で客層を限定
工事費に投資し店をしっかり造り込む
お客にとっての“サードプレイス”を目指して
【縁・みそら屋 浅草】店舗情報

看板はお通しのみそ汁と通年提供のおでん!

国内外からの観光客で連日賑わう東京・浅草。多くの飲食店が軒を連ねるこの地で、2017年2月に誕生したのが居酒屋「縁・みそら屋 浅草」だ。場所は「ロック座会館」裏手の細い脇道。一見すると敷居の高そうな店構えだが、扉を開けて中に入るとフレンドリーで賑やかな雰囲気がお客を出迎える。

お通しで提供される「みそ汁」に象徴されるように、同店の売りは日本全国の味噌を使った味噌料理。

「1店目の『ミトシロバル』を東京・神田に出店した2011年は、東日本大震災が発生した年です。それ以降、復興支援の一貫として日本各地の地のものを扱いたいと考え、味噌に着目したのです。味噌蔵は各都道府県にありますし、その地によって味わいが異なるため、地方出身の方に懐かしいと思って頂けたり、新しい味に出会えたりといった楽しみ方を提案しています」と店長の中尾総嗣さん。

料理は味噌を主力調味料として組み立てた和食で構成。看板は、肉味噌と青唐味噌で食べる「おでん」だ。特におでんの盛り合わせは、大根を器にし、コンニャクや椎茸、トマトなどを盛る、ユニークなプレゼンで人気を集める。その脇を、ソースに赤味噌を使ったステーキや、日本酒のアテとなる味噌漬けチーズなどの一品料理で固める。

アルコールの売りは、均一価格で提供する日本酒。利き酒師の資格を持つ中尾さんがセレクトした日本酒は、和食と相性のよい味わいを軸に、日本酒初心者でもわかりやすい特徴のある銘柄を揃えている。

あえて閉鎖的な外観で客層を限定

間口が広い物件で、外観をあえて閉鎖的にしたのは、客層をある程度限定するためだという。

「浅草の飲食店は今、観光客相手の老舗店と大手チェーン店の二極化が進んでいます。あまりいい言い方ではありませんが、観光地価格のお店と、どこでも食べられるお店が多く、その中間ラインがない。そこの隙間を狙った業態で、商品はボリュームと品質、価格を適正にし、客単価を5000円内に設定。この価格帯で居心地のよさを提案するには、ある程度狙った客層に来て頂く必要があると考えたのです」(中尾さん)。

現在の主客層は、30代後半〜40代の近隣住民や会社員、観光客。店づくりの狙いにより、食事とアルコールをしっかりと楽しむ客層がついている。

店内はカウンターとテーブル席、小上がりの個室で構成。店内中央に鎮座する柿の木は、お店のシンボルとして目をひく。また、カウンター上部は味噌樽をイメージした、ダイナミックな装飾で、味噌料理が売りであることをアピールしている。個室は法事や結納、顔合わせなどの会食時に利用してもらえるよう、新たに設置。実際に宴会利用以外に、土日は会食利用も獲得している。

工事費に投資し店をしっかり造り込む

現物件は「わんこそば屋」の居抜きで借り受けたが、床から天井、厨房のグリストラップまで撤去。一度スケルトンにし、イチから造り直したという。その理由を中尾さんは次のように話す。

「1店目は、カレー屋の完全居抜きでスタートさせました。しかし以前のお店の雰囲気が抜けきれず、これまで2回改装しています。お店の評価は入店した瞬間に決まります。お客さまの印象に残るためにも、しっかりと投資して造り込み、お店の個性を打ち出すべきだと考えているのです」。

内外装工事費に投資する分、他のコストを下げようと、工事は2週間の急ピッチで進めた。さらに引き渡し2日後にはオープンするという強行スケジュールで、開業を果たしている。

「工事期間中の空家賃の発生を抑えるため、業者さんに協力していただきました。オープン前はオペレーションの確認すらせず、伝票の置き場所しか決めなかった(笑)。そのため、営業しながら店をつくっていった部分が大きいですね」と中尾さん。

オープンから約1年半。現在は「おでんの店」として認知されており、来客数も増え続けている。

お客にとっての“サードプレイス”を目指して

経営母体の株式会社サードプレイスは、3店の飲食店以外にも味噌料理のオンラインショップ「贈みそら屋」も運営する。

「行きつけにしたい店をつくるという想いを込めて、サードプレイスという社名にしています。1つめは家庭、2つめは職場、そして3つめのプライベートな場所として、僕らの店を選んでくれるといいなと考えています」(中尾さん)。

こうした想いから確実に一人の空間を確保できるよう、ゆとりを持たせた客席レイアウトを採用。浅草観光で疲れたときに休める場所としても使ってもらいたいと、居心地のよい環境づくりとサービスを心掛けている。

「常連のお客さまもついてきて、次のテーマは“脱上品”。外観や店内は上品な造りにしたのですが、実際入ってみると賑やかで、ワイワイした雰囲気のお店です。お客さまにもそうした賑々しさを感じて頂くため、店内にメニューポップを貼るなど、雰囲気を少しずつ変えているところですね」と中尾さんは話した。

【縁・みそら屋 浅草】店舗情報

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