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開業を目指す個人事業者の方、必見!開業届けの書き方や税務署への手続きを手順と準備を踏まえて解説

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個人事業主は、事業開始までさまざまな準備に追われます。「個人事業の開廃業届出書(開業届け)」の提出もそうした準備のひとつです。
個人事業主は法人のように登記をする必要はありませんが、かわりに開業届けの提出が義務付けられています。
個人事業主にとって無視できない開業届けの提出ですが、新規開業を検討している方にとってはなじみの薄い書類かもしれません。
未提出のまま開業する方もいますが、その場合のデメリットについても把握しておく必要があります。
こちらでは、開業届けの書き方や提出方法、提出期限、提出するメリット・デメリットについてご案内します。
開業届けの書き方
開業届けは国税庁のホームページからPDF形式でダウンロードできます。また、税務署では書面の開業届けの入手が可能です。記入の際には以下のようなポイントに注意しましょう。
引用元:国税庁の公式サイト『A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続』より
開業届けで気をつけるポイント
☑ 提出先は納税地を所轄する税務署
☑ 納税地は基本的に個人事業主が生活の拠点とする場所
☑ 個人番号はマイナンバーを記入
☑ 届出の区分は開業に丸をつける< br>☑ 所得の種類を確認する
☑ 開業に伴う書類提出の有無
納税地は基本的に住民票がある場所ですが、事業所がある場合は例外としてその所在地を納税として記入できます。
新規開業の場合、「届出の区分」は「開業」を丸で囲み、その他の項目は空欄にしてください。所得の種類は、不動産投資、店舗経営など事業の内容に応じて選択します。
個人事業主にとってメリットが大きい青色申告を行う場合は別途「青色申告承認申請書」を提出するため、「開業に伴う書類提出の有無」の欄の「有」にチェックを入れます。
開業届けの提出先は税務署
開業届けの提出先は納税地を所轄している税務署です。各地を所轄する税務署については、国税庁のホームページで確認できます。
こちらのページから納税地の住所を入力して、税務署の住所を確認してください。
以下では、開業届けを含む必要書類を郵送で提出する具体的な方法、タイミング、提出期限などについてご案内します。
開業届けを郵送で税務署に提出する方法
開業届けは税務署に直接提出する以外にも、郵送での提出が可能です。郵送の場合は発送日が受領日です。
開業届けを入れる封筒に特に決まりはありません。
書類の重さによって必要な切手が変わりますが、合計50gの書類が送れる92円切手を貼っておくのが無難と言えます。返信用の封筒にも忘れずに切手を貼っておきましょう。
封筒には、提出用の開業届け以外にも控えや身分証のコピーなどを同封します。返信用の封筒・切手も必要です。具体的には以下のような物を用意する必要があります。
〈開業届けを郵送する際に必要な物〉
☑ 開業届け(提出用)
☑ 開業届け(控用)
☑ マイナンバーカードか身分証明書のコピー
☑ 封筒(郵送用)と切手(郵送用)
☑ 封筒(返信用)と切手(返信用)
☑ その他、職業ごとで提出が必要な書類
開業届けを提出するタイミングと期限
開業届けの提出期限は開業日から1カ月以内と定められています。
開業日に明確なルールはありませんが、店舗のオープン日など「事業として稼働し始める日」を設定するケースが多いようです。売上発生日以降を開業日にできません。
なお、この期限に間に合わなかったとしても特に罰則はありません。
しかし、税金面での恩恵が大きい青色申告をするためには、開業から2カ月以内に書類を提出する必要があります。
そのため、期限内に開業届けと青色申告承認申請書をあわせて提出するのが一般的です。
個人事業開業の必要書類

上述したとおり、個人事業開業の際には開業届け以外にも提出を求められる書類があります。
税務署ではなく、都道府県や市町村に提出しなければならない書類もあるため注意が必要です。
また、事業の種類によっても必要書類が変わってきます。必要書類としては以下のようなものが代表的です。
〈個人事業の開業に必要な書類〉
☑ 開業届け
☑ 青色申告承認申請書
☑ 青色事業専従者給与の届出書
☑ 源泉所得税納期に関する申請書
☑ 給与支払事務所等の開設届出
以下では、提出先別に個人事業開業の必要書類について説明します。開業内容によって別途請求される書類についてもご案内しますので確認してください。
税務署に提出する書類
税務署に提出するのは開業届けと身分証明書のコピーです。開業初年度から青色申告を行う場合は、青色申告承認申請書もあわせて税務署に提出します。
青色申告承認申請書の提出は必須ではありませんが、青色申告による税金面の優遇は個人事業主にとって大きなメリットのため、提出するのがおすすめです。
開業から2カ月以内に書類を提出しなければ、初年度の確定申告で青色申告ができません。
青色申告承認申請書
引用元:国税庁公式ホームページ『A1-8 所得税の青色申告承認申請手続』より
開業初年度の確定申告で青色申告をするためには、開業から2カ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。
開業届けと同じく税務署に提出するため、開業日の1カ月以内に開業届けと一緒に提出するのが一般的です。
家族に給与を支払って事業を手伝ってもらう場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出します。
申請書の記入自体は簡単ですが、青色申告の手続きは初めての場合煩雑に感じるかもしれません。会計ソフトを利用すると、帳簿の作成から申告まで手続きを効率化できます。
現在の個人事業主の間では、スマホカメラによるレシートデータの取り込み、自動仕分け機能などが搭載されたクラウド型の会計ソフトが普及しています。
都道府県・市町村に提出する書類
開業届け以外にも、「個人事業開始申告書」という書類を提出する必要があります。税務署に提出する開業届けに対し、こちらの提出先は都道府県や市町村です。
個人事業税は地方税に区分されるため、自治体への書類提出が求められます。
都道府県、市町村に双方の提出しなければならないケースやどちらか一方でいいケースなど、自治体によって対応はさまざまです。
提出期限についても、各自治体によって対応が違います。個人事業税について申告する場合は、まず自治体に相談したうえで正しい申告方法を確認しましょう。
開業する職業別の必要書類や資格
開業届けや個人事業開始申告書のか、事業内容によっては個別の資格や証明書が求められます。
飲食店の開業で求められる食品衛生管理者、防火管理者などが代表例です。また、業態によっては自治体の保健所が定めている基準をクリアする必要があります。
資格や証明書に不備があると、最悪の場合は開業を認められません。また、資格や証明書の種類によっては、取得までに期間を要するものもあります。
自分の開業内容に応じて必要な資格と証明書をあらかじめ確認し、余裕を持って取得するようにしましょう。
職業ごとに必要な資格・証明書の一例をご紹介します。
〈職業ごとの具体例〉
☑ 飲食店:食品衛生管理者、防火管理者の資格
☑ 美容室:保健所へ届け設届や施設平面図などの提出
☑ クリニック:保健所へ届け設届や厚生局への申請書などの提出
開業届けを提出するメリット・デメリット
開業届けには提出期限が設けられていますが、未提出のままでも特に罰則はありません。実際に、開業届けを出さずに事業を行っている個人事業主もいます。
開業準備に追われ、提出を忘れている方も少なくありません。開業届けには提出することで得られるメリット・デメリットがあります。
事業開始する際は、それらのメリット・デメリットを把握し、事業の展望に応じて開業届けの提出・未提出を検討することが大切です。
以下では、開業届けを提出するメリット・デメリットについてお話しします。
開業届けを出すメリット
開業届けを提出する最大のメリットは、青色申告ができるようになる点です。青色申告で受けられる65万円の控除により、大きな節税効果が見込めます。
赤字を翌年に繰り越せる点も、経営の先行きが読めない新規開業の場合は重要な利点です。
また、開業届けを提出すると屋号で銀行口座を開設できます。個人用口座を利用して事業を行うこともできますが、個別に事業用の口座を利用したほうが経理業務が容易です。
また、口座名義が顧客の目に触れる場合、個人名義よりも屋号名義のほうが社会的信用が高いと考えられています。
〈開業届けを出すメリット〉
☑ 青色申告で特別控除が受けられる
☑ 赤字経営の場合は翌年への繰り越しが可能
☑ 小規模企業共済の退職金制度に加入できる
☑ 事業用の銀行口座を開設できる
開業届けを出すデメリット
開業届けを出すと、失業保険を受け取れない可能性があります。
失業保険は再就職に向けた支援制度であるため、事業を開始した時点で「再就職に向けた活動をしていない」と見なされるケースがあるのです。
会社を退職して開業する場合は、失業保険を受け取ってから開業届けを出すなど慎重に提出のタイミングを決める必要があります。
また、個人事業主は国民健康保険に加入する必要がありますが、開業届けを出すと市町村によっては「仕事をしている」と見なされ、保険料の減免措置が受けられない可能性があります。
当然ながら毎年確定申告をしないと脱税を問われてしまうため、その手間も考慮しなければなりません。
〈開業届けを出すデメリット〉
☑ 失業保険が受け取れない場合がある
☑ 確定申告をしないと税務署から指摘される
☑ 国民健康保険の免除が受けられない
まとめ
開業届けの書き方や重要性、メリット・デメリットについてご案内しました。提出が義務として定められている一方で罰則はないため、未提出を選択させる方も少なくありません。
特に事業の所得が少ない段階では、提出しない方が多いようです。しかし、事業で生計を立てようとする場合はメリットや社会的信用の観点では、提出するに越したことはないといえます。
初めて開業をする方にとって書面の書き方や手続き方法がわかりづらいことも事実ではあります。
「面倒だから」「わからないから」との理由で見送ってしまい、あとになって後悔するようでは、悔やんでも悔やみきれません。困ったらまず、申請先などの関係機関などに相談してみることも一つの手です。
後悔のない選択を実行することをお勧めします。
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