インタビュー

横浜中華街で、気軽に集まれる店を

目次
在日中国人も通う本場の味
日本で飲食店開業を夢見ていた
多くの人に感謝したい
トラブルを乗り切れた、妻の言葉
店舗情報【西安刀削麺 麺王翔記】

在日中国人も通う本場の味

横浜中華街に直結する、みなとみらい線の元町・中華街駅の1番出口を出ると中華街を象徴する朝暘門の側、オレンジ色の外観が印象的な店がある。日本でも数少ない西安刀削麺の専門店「麺王翔記」だ。 刀削麺に加え四川料理と手軽な小皿料理を提供するリーズナブルだが深いこだわりを感じるメニューのラインアップ。店内はオープンキッチンのカウンターをメインに、奥にはテーブル席も用意している。

刀削麺の特徴は小麦粉をベースに練り上げた生地を沸騰したお湯に専用の小刀で削り入れ茹で上げるパフォーマンスが魅力のひとつだが、麺王翔記ではカウンター席からその調理を見ることができる。ランチタイムに訪れるとサラリーマンはもちろんOLさん、地元の中国人や観光に来た中国人の方などで賑わっており、厨房を一人でまわすオーナーシェフの頼さんは刀削麺をひたすら作りながら、ランチセットの麻婆豆腐やエビチリを手際よく仕上げていく。

今や食べ放題の店が軒を連ね、ランチも5~600円の安売り店が多い中、ひとつ上の値段設定をしているにも関わらず多くのお客様が訪れ、逆にディナータイムはワンコインの小皿料理を多く用意し気軽にお酒と本格中華を楽しめる店になっている。

日本で飲食店開業を夢見ていた

元々は中国四川省のホテルでコックをしていた頼さん。先に日本に来日し中華街でコックをしていた兄を追いかけ来日し同じ店で働くこととなった。日本で自分の店を持つという夢を持ち、中国にいた頃から必死にお金を貯めていたという。

そして、チャンスは意外にも早く、来日4年目に差し掛かる頃に訪れる。勤めていた店の系列店が四川料理と刀削麺の店としてリニューアルオープンをすることになり、四川出身の頼さんは料理長に抜擢された。数ある中国の郷土料理の中でも辛いことで有名な四川料理は日本の一般的な中華レストランでは、麻婆豆腐やエビチリなどほとんどが日本人向けにアレンジされたものばかり。今までのキャリアを生かせる機会がやっと来たのだ。ただし、メニューはすべて当時のオーナーが決めたもので、料理のラインナップや値段設定など違和感を持ちながらも自分でお店を仕切れる喜びを感じていた。

それから1年弱「前オーナーがこの店を手放すという噂を聞きつけて、驚きのあまり直ぐに本部に行きました。事情を聞くと以前から赤字続きでリニューアルをしてみたが状況は変わらないので店を閉めたいと言われました。」その時、自分ならきっとうまくやれると思い前オーナーから居抜き物件として購入を決意。

多くの人に感謝したい

夢だった日本での飲食店開業。最低限のコストで営業するには事業引き継ぎという形を取り店舗名はそのままでメニューと看板の一部を交換するのみでリニューアルオープン。しかしながら、実際は苦労の連続で事業引き継ぎとはいえ、飲食店営業許可の取得や食品衛生責任者の講習を受けたりと日本語が話せない頼さんにとっては大変な労力。また、メニューブックと店頭のポスターにはこだわりたかったが、作るにもどこに頼んでいいかわからない…

 「日本語が全くしゃべれないので申請書ひとつでも日本語のしゃべれる中国人の友人や、前の店のスタッフに手続きを手伝ってもらいました。 まわりの人が本当に親切だったので救われました。」と日本に来日し4年間で知り合った人々に感謝の気持ちを強く語る。なんとか短期間で自分の店「麺王翔記」として再スタートを切る。

(取材日:2016年1月9日)

トラブルを乗り切れた、妻の言葉

リニューアルオープンしてから1ヶ月も経たないうちに冷凍庫が故障し食材の半分以上がダメになったり、エアコンが原因不明のガス漏れで全く効かないなど度重なるトラブルに頭を抱えていた時に一緒に働いている奥様から「日本でこんなに早くお店が開けたのだからこのぐらいのことは何てことないでしょ。ゆっくりやりましょう。」という言葉で気持ちを切り替えられたという。

「急がなくてもいい、お客様が喜ぶ料理を毎日作り続けていこう、本当にこれだけです。料理を始めたあの頃の気持ちを思い出しました。お店を運営していかなければという重圧でちょっと気疲れしていたのかもしれません(笑)」

現在オープンから半年が過ぎ、自身が考案し人気料理となった‟麻辣担々刀削麺“と‟四川陳麻婆豆腐”を求めるお客様で賑わっているという。今後の目標はと聞くと「刀削麺も麻婆豆腐も中国では庶民的な料理。誰でも気軽に食べに来られるような店を続けていきたい。あ、それと次は兄さんとお店を開きたいね(笑)」と人懐っこい笑顔で語ってくれた。

店舗情報【西安刀削麺 麺王翔記】

この記事で紹介された人

頼 長平さん

1976年、中国四川省生まれ。横浜中華街 麺王翔記オーナーシェフ。四川省のホテルで修業をした後、兄を追いかけ日本へ来日。現在は自ら厨房に立ち家族とともに店を切り盛りしている。たくさんのお客さんに気軽に料理とお酒を楽しんでもらえる、アットホームな店であり続けたいと語る。

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