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【飲食店開業の始め方】希望物件で契約!申込み前に押さえておくべき融資・入居審査・条件交渉のポイント

目次
融資申請のタイミング
入居審査で知っておきたい3つのポイント
事前に準備しておくと良いもの
契約前に必ず確認すべきこと
賃料発生のタイミング
理想の物件を逃さないために

理想的な物件を見つけたのに「既に入居者が決まっていた」「迷っているうちに物件がとられてしまった」など悔しい思いをした方も多いのではないでしょうか。

理想的な物件を見つけたら、申込みから契約まではスピード勝負です迷って保留にしたり、条件交渉のタイミングを見誤ったりしたために、理想の物件を取り逃してしまう可能性はゼロではありません。

そうならないためにも、今回は飲食店開業を考えている方に向けて、物件契約の流れやポイントをお伝えしたいと思います。スムーズに入居審査を通過し、後悔しない物件選びに必要な知識を身につけ、店舗経営に活かしていきましょう。

入居審査や賃料に関して心配事がある方でも、この記事をきっかけに物件契約の要点を掴み取っていただければ幸いです。

申込み~契約締結までの流れ

気になる物件を見つけた際に素早く【申込み】【契約】へと進めるよう、まずは全体の流れとスケジュール感を把握し準備体制を整えていきましょう。

不動産会社へ物件を申込み

融資申請:約2週間

入居審査:約1~2週間

賃貸借契約・造作譲渡契約締結

融資申請のタイミング

新規開業者の中には、自己資金では足りない部分を補う為、融資を利用する方が多くあります。

しかし、”物件が決まってから融資を申請するのか””融資を申請して資金確保が決まってから物件を決めるのか”といった融資申請のタイミングについて疑問の声が多くあがっているのもまた事実です。

結論から申し上げると、「融資は物件を決めてから申請する」というのが正解です。
資金を貸す立場からすると、事業計画書が作成されていたとしても、物件が特定していない状態で「事業計画に実現性があるのか」「返済可能な範囲での物件取得費なのか」といった判断を行うのは当然ながら無理なことです。従って、物件を決めてから融資申請という順番になります。

また、ここでいう「物件を決める」は”物件を契約する”という意味ではないことに注意しましょう。物件を契約すればもちろん物件取得費用が発生してしまいますので、不動産会社に「融資を受けられたら物件を契約します」という約束のもと申込みを行い、”借りる予定の物件を一つに絞る”ことを指します。

融資に時間がかかることは不動産会社もよく理解しており、新規開業者が融資を利用して契約するケースはごく普通のこと。複数の申込みが集中した物件では競合が優先される場合もありますが、基本的には手付金を払うことで融資が決まるまでの期間待ってくれる会社が多く、手付金無しでも待ってくれる不動産会社は少なくありません。

とはいえ、融資申請にも準備が必要です。物件探しと併行して、日本政策金融公庫に一度相談することが得策です。融資申請に必要な書類や融資が決定するまでの流れを把握しておくことで、余計な不安を払拭しスムーズに契約へと足を進めることができるでしょう。

入居審査で知っておきたい3つのポイント

内見後に契約の意思が固まったら、なるべく早く申込むことが大切です。
申込みから契約まではスピード勝負!
以下3つのポイントをおさえて、スムーズに審査を通過しましょう。

―1.入居審査の内容

物件申込み後、入居可否を判断する審査の中でも重要なのが貸主による「入居審査」。
ここでは、いかに貸主が安心して契約できる人物・事業であるかをアピールすることが大切になってきます。
貸主の判断基準としては、以下3つが大きなポイントです。

☑事業計画が明確、且つ現実的であるか
☑収支計画が具体的か
☑融資利用の場合のスケジュール感

「安心して契約できるな」と思ってもらうためには、申込書とあわせて上記の補足資料を準備しておくことが功を奏すでしょう。

また、物件によっては、借主となる契約者だけでなく、家賃を滞納したり物件を汚損したりした時に借主に代わって弁済する義務を負う連帯保証人が必要となり、いずれも審査対象となります。一般的に、ご家族や親しい友人にお願いするケースが多くみられますが、借主と同等の支払い義務を背負うことになる為、関係性が出来ていたとしても契約直前ではなく事前に相談しておくことをおすすめします。

その他、家賃滞納のリスク回避として、賃貸借契約と併行して保証会社との契約が必須となる場合もあり、その際には保証会社による審査があることも頭に入れておきましょう。保証会社の審査では、主に勤務状況や収入、クレジット滞納履歴などがみられます。

「家賃の支払い能力があるか」「事業計画に実現可能性があるか」が注視されるので、トラブルのない人物であることをアピールしましょう。

―2.競合との番手付け

飲食店の物件探しにおいては、飲食需要の高い人気エリアや好立地な物件に申込みが集中し、借りたいと思って申込みをしても競合負けになる可能性があります。

住居がメインの不動産会社では、複数の申込みが重なった場合、基本的には申込み順で番手付けを行い、早期に申込んだ借主から優遇します。

しかし、店舗物件では必ずしも申込み順とは限らず、条件交渉の有無や融資利用の有無、入金・契約までのスピード感など、借主のさまざまな要件を加味して番手付けが行われます。その為、たとえ1番に申込んでいたとしても、後に申込んだ人が優先されて契約締結となるケースもあるのです。

―3.条件交渉

貸主が提示した賃貸条件に従って申込みを行い、融資利用や競合が無ければ、入居審査を通過次第スムーズに契約締結へと進むことができます。

しかし、家賃交渉や契約条件の変更を依頼する場合にはそうはいきません

【競合がいる中で交渉を入れた場合】
もともと一番手とされていたとしても、貸主は契約のメリットが大きい申込者を優先する為、貸主の提示条件通りで承諾をした二番手以降の競合が契約となるケースも少なくありません

【競合がいない中で交渉を入れた場合】
一般的に、貸主への条件交渉は可能となっています。ただし、貸主が譲歩できない内容であれば、借主が決められた条件をのむか、物件を諦めるかの二択を迫られる他ありません。

「ここしかない!」と気に入った物件を確実に取得するのであれば、貸主提示条件で進めることが最良の選択といえます。


条件交渉のタイミング

物件の既存条件に対してどうしても交渉を入れたいという場合、条件交渉のタイミングにも注意が必要です。基本的には、内見後~入居審査完了前までの間に行いましょう。

なお、条件交渉は直接貸主(物件オーナー)に行うのではなく、不動産会社や仲介業者を通して行うことが鉄則です。入居前の段階で貸主(物件オーナー)との関係性が悪化してしまえば、その後の営業に支障をきたすリスクも考えられるからです。

そして、条件交渉の中でも特に押さえておくべき項目は以下4つ。

■家賃
■保証料
■入居時期
■解約費用

特に家賃交渉は、具体的なデータに基づく条件交渉力が大切です。
近隣の坪単価や相場を調査した上で交渉してもらえるので、スムーズかつ確度の高い交渉を進めてもらえるでしょう。

この時、条件交渉が物件オーナーにとってもメリットだと感じてもらうことも重要。事業計画書や収支計画書を提出し、提示条件が経営の安定につながることを具体的に説明できると説得力が増して有効です。

ただし、いずれにしても条件交渉が難航すればするほど競合が増えるということは忘れずに心に留めておきましょう。

 

事前に準備しておくと良いもの

スムーズに審査を進めるためにも、予め提出物の準備は進めておきたいところ。
最近では、インターネットやコンビニで交付してもらえる書類も増えていますが、交付までに時間がかかる書類もあるので事前に用意しておくと安心です。

今回は、申し込み時に必要な書類を法人契約個人契約に分けて、それぞれピックアップしました。

以下のリストを参考に、できるところから準備を進めておきましょう。

法人契約の場合

■会社の登記簿謄本
■印鑑証明
■決算書の写し
■印鑑
■実印
■連帯保証人の印鑑証明書
■事業計画書や収支計画書

個人契約の場合

■住民票
■身分証明書
■印鑑
■実印
■源泉徴収票や預貯金が確認できる書類
■連帯保証人の印鑑証明書
■事業計画書や収支計画書

申込み時には、個人情報を証明するための資料を用意した上で、財務状況を確認できる資料の提出を求められる場合もあります

特に、個人事業主や法人としての実績が無い場合には、必要に応じて源泉徴収票や預貯金がわかるような書類の提出を求められることもあるでしょう。

なお、連帯保証人の印鑑証明書については、不動産会社や仲介業者によって異なります。必要に応じてすぐに手配できるよう、整えておくと安心です。

契約前に必ず確認すべきこと

複雑な専門用語が飛び交う契約書は、読み解くのも苦労するもの。しかし、契約書面記載の内容は原則契約締結後に覆せないので、契約前に必ず徹底した確認を行いましょう。
ここでは、飲食店の物件契約時に必ず確認するべき事項をかみ砕いて説明します。

看板掲載範囲

飲食店で多いトラブルのひとつが、看板設置の可否です。
賃貸契約書に詳細が書かれていない場合は、必ず貸主に確認しましょう。

特に、本来掲載禁止となっている箇所に前テナントが掲載しており、ご自身の入居のタイミングで再度禁じられるといったケースも稀ではありません。「前テナントも掲示していた場所だから利用できるだろう」と安易に解釈していると、トラブルに発展してしまう可能性もあるので注意しておきましょう。

譲渡対象となる造作物

居抜き物件で造作物を引き継ぐ場合、造作譲渡契約を交わします。
こちらは、貸主(物件オーナー)と交わす賃貸借契約とは別で前テナントと交わす契約であり、前テナントが利用していた設備や備品を引き継ぐことでイチから店舗を立ち上げるよりも大幅に開業コストを抑えられます。その引継ぎにかかる費用(=造作譲渡料)は物件ごとに異なり、無償の場合もあれば300万円以上の高額設定とされている場合もあります。

造作譲渡契約書には、譲渡対象リストが添付されています。
入居後に「引継ぐと思っていたものが無い」「引き継いだ造作物が故障している」といったことでトラブルにならないよう、どの設備・備品が譲渡対象となっているのか、故障品やリース品はないか等を必ず確認しておきましょう

解約予告期間

解約予告期間とは、物件の解約が完了するまでに必要な期間を指します。従って、解約届を提出したからといってすぐに退去できる訳ではなく、解約完了までの期間分は賃料が発生することに注意しましょう

なお、飲食店の場合は、解約予定日の3~6か月前に事前通知(解約届を提出)するよう義務付けられているケースが多いです。

ただ、入居者にとっては解約予告期間が長ければ長いほどランニングコストの負担が嵩んでしまうので、当初の解約予告期間を経過せずとも次期テナントが決まり次第退去可能としている、良心的な不動産会社も増えています。

原状回復

2022年4月に施行された改正民法では、借主の原状回復義務が定められています。
飲食店の場合は、借主が退去時に全額自己負担で入居時同等に物件を回復させなければならないケースが一般的です。

原状回復が必要な範囲は、物件によって条件が異なります。
間取り変更時の壁だけを回復させればよいのか、天井や床に至るすべても改修工事が必要なのかなど、詳細を必ず確認しましょう。

物件ごとの特約

物件ごとに取り決められる特約は、主に貸主(物件オーナー)や管理会社の意向が反映されており、飲食店舗においては【営業制限】【設備の利用】に関して記載されていることが多くあります。

下記の代表例を参考に、契約締結前には特約の見落としがないよう細部まで確認しましょう。

・深夜営業の禁止、営業時間の制限(営業23時までetc.)
・業態の制限(臭い・煙の強い業態禁止etc.)、業態変更の禁止
・カラオケの使用禁止
・看板掲載の制限(掲載箇所の指定etc.)、店外照明の利用
・商店会費の支払い義務

賃料発生のタイミング

住居と同様に、賃料が発生するのは、フリーレント期間がある場合を除き、入居日からの契約期間分になります
(例:5月1日に物件契約を締結したとしても、入居日(契約始期)が7月1日であれば、賃料の発生は7月1日から)

ただし、通例、賃貸借契約を締結する際に物件取得費用とあわせて前払い家賃が請求されるケースがほとんどなので、それを踏まえた資金準備を行いましょう。なお、前払い家賃の金額としては、入居日からの1ヶ月分家賃または入居日から月末までの期間を日割りで計算した家賃が一般的となっています。

理想の物件を逃さないために

ここまで、「いい物件を見つけたらどうすべきか」手順を追ってご説明してきました。まずはスピーディーな入居申込み、次に具体的かつ明確な事業計画書の提出。そして、取りこぼしがないよう契約内容を細部まで確認した上で希望条件と擦り合わせていきます。ここで大事なのは、早期の段階でコンセプトや事業計画を設計し、ご自身が理想とする店舗像を明確化させておくことです。そうすることで、契約前に慌てることなく対応することができ、貸主(物件オーナー)から「この人であれば物件を貸しても大丈夫だ」と思ってもらえる判断材料となります。

物件探しは、その後の店舗経営を大きく左右する大切な決断です。理想とする条件を最大限満たした物件を獲得するためにも、この記事を参考にしていただけたら嬉しいです。

東京都板橋区

東武東上線
大山駅 / 徒歩5分

面積
40.84坪 / 135㎡
賃料
725,000
詳細を見る

東京都中野区

東京メトロ丸の内線
方南町駅 / 徒歩9分

面積
8.4坪 / 27.77㎡
賃料
110,000
詳細を見る

東京都大田区

京急空港線
糀谷駅 / 徒歩2分

面積
8.27坪 / 27.33㎡
賃料
363,636
詳細を見る
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