インタビュー

マグロ料理を主力に料理人がつくる 手仕込みの酒肴で人気を博す大衆酒場

目次
知人・友人の漁師から仕入れる 新鮮な魚介を提供する大衆酒場
理想の店づくりに妥協は不要。 2〜3年かけ物件探し
昭和を感じさせる店内。 和食料理人が手仕込みする酒場メニューでファン獲得
口コミでじわりと認知度アップ! 店舗展開を目指して成長させていく
店舗情報【大衆魚酒場 福松】

知人・友人の漁師から仕入れる 新鮮な魚介を提供する大衆酒場

老舗大衆酒場やトレンドバル、話題の行列店などが林立し、賑わいを見せる東京・五反田の西エリア。オフィスが密集することから会社員が多いイメージが強いが、少し歩くと分譲マンションや戸建て住居もある場所だ。
「大衆魚酒場 福松」は、そんな西五反田エリアのなかでも飲食店街から少し離れた、目黒川に近い裏通りに立地する。

「ビーサン(ビーチサンダル)で気軽に行ける、安くて美味い酒場を目指しました」と話すのは、店長の村岡亮一さん。
売りは神奈川・三崎のマグロを中心に千葉や四国、三陸など全国から届く新鮮な魚介類。それらを刺身や焼き物、煮物などで調理し提供する。

「オーナーが神奈川・湘南の育ちのため漁師の知り合いも多く、そうしたパイプを活かした仕入れルートを確保しています。例えばマグロは三崎のマグロ問屋から仕入れていますが、オーナーと問屋の二代目が幼なじみだったり。顔なじみだからこそ、安心していいものを安価で仕入れられています」と村岡さん。

看板のマグロ料理のなかでも、塩漬けにしたマグロである「塩まぐろ刺」が売れ筋。塩により水分がぬけ、ねっとりとした食感に病み付きになるお客も多く、同商品を目指して来るリピーターもいるほどだ。またマグロの目玉を日本酒で長時間炊いた「目玉煮付け」も人気アイテム。コラーゲンがたっぷりと含まれており、女性客へのフックにもなっている。

理想の店づくりに妥協は不要。 2〜3年かけ物件探し

「僕は18歳の頃からずっと懐石料理店や和食店、居酒屋などで働いてきました。その頃からオーナーとは友達で、『いつかは店を持ちたいね』という夢を叶えたかたちです」と村岡さんは言う。

物件の条件はオフィス街で、15〜20坪ほどの路面店。家賃は物件の価値に応じてと考え、上限は定めなかった。しかしなかなか条件に見合うものが出て来なかったため、2〜3年を費やしじっくりと調査した。
情報公開直後に紹介された現物件は、条件がよかったことから即決。しかし、15〜16社とバッティングしたという。そこでプレゼン資料を作成。マグロを中心とした魚介の大衆酒場という明確なコンセプトと、店長の料理人実績、出店したいという熱い想いを伝えることで見事物件取得に成功した。
元中華料理店の物件は居抜きで譲渡されたが、厨房やトイレの区画を残しただけで解体。天井や壁、床もすべて塗り替え、張り替えを行なった。厨房機器も経年劣化により、使えないものが多かったためにすべて入れ替えた。

「僕は立ち上げから入りましたが、内外装の工事には2ヵ月かかりました。僕もオーナーも内装工事をするうちに、いろいろとやりたいことが増え、追加するうちに工期が伸びた感じですね(笑)。その分思い入れが強く、理想の店にできたと思います」(村岡さん)

昭和を感じさせる店内。 和食料理人が手仕込みする酒場メニューでファン獲得

大衆感を打ち出す提灯が店先を照らし、店内のちょうどよい目隠しになる縄のれんがどこか懐かしい印象を与える外観。戸口の引き戸は、実際に昭和初期に使用されていたガラス戸を再利用したという。あえて古い素材を使うことで、温もりを感じさせる造りにした。
店内は入口から奥の厨房まで一望できる開放的で、シンプルな造り。大工がいちから造ったという可動式のテーブルは、少人数からグループまでに対応する。また一見何の変哲もないパイプ椅子だが、既存の座面にクッション性を加えることで、座り心地を考えた。

一人客を誘引するカウンター席は、厨房を囲むL字で構成。カウンター上部にぶら下げた、手書きの短冊メニューが大衆的な印象をぐっと高める。
ランチ営業もしており「刺身定食」やサバみりん干し、しまほっけ焼きなどの焼き魚炭火焼き定食などを750〜1200円で用意。近隣会社員を中心に、ピーク時はウエイティングが出るほどの人気を集めている。
また夜は魚介メニュー以外にも、酒のアテとなる酒場メニューをラインアップ。例えば「カニクリームコロッケ」や「鯖のへしこ」「ハムカツ」など、バリエーションを豊富に揃えることで、魚介料理以外も楽しめる構成にしている。

「低価格が売りの大衆酒場は、既製品や冷凍食品を多用するお店も多いと思います。一方でうちはすべて手仕込みが基本。カニクリームコロッケもカニの身をほぐすところからやりますし、フライドポテトもオーダーごとにジャガイモをカットします。手間はかかりますが、これがお客さまに喜んでいただけるポイント。違いをわかっていただける方が、リピートしてくださりますね」と村岡さんは話した。

口コミでじわりと認知度アップ! 店舗展開を目指して成長させていく

2015年9月のオープンから、口コミで徐々に集客数を伸ばす「大衆魚酒場 福松」。近隣会社員を中心に、一人利用の常連客や団体利用まで幅広く取り込み、じわじわとその人気に火がついている。夜の客単価は4000円。魚介を主力とした酒場としては低価格で楽しめるとあり、舌の肥えた年配客から支持されている。

「僕らが行きたい店をつくった」という村岡さん。先に述べた通り、ビーチサンダルという気取らない格好で、ふらりと立ち寄れる入りやすさが、店の価値につながっている。
いずれは展開も視野に入れ、1店1店を大切に成長させていきたいと考えており、目下のところ「予約しないと入れない店に成長させること」を目標に掲げている。

(取材日:2017年6月21日)

店舗情報【大衆魚酒場 福松】

この記事で紹介された人

村岡 亮一さん

1977年、北海道・旭川生まれ。18歳で神奈川・藤沢の懐石料理店に入る。その後、神奈川県内の和食店や居酒屋などで修業を積み、先輩で友人だったオーナーに誘われて現職。

将来は10店展開を夢に、 2号店目の和ビストロをオープン
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