インタビュー
開業者からのアドバイス ~開業するなら、まずは実績作りを~

初めての飲食店開業には不安や心配はつきもの。
そんな時、飲食店の開業を経験した先輩の経験談は大きな参考になります。
今回は、厳選された日本酒とくずし割烹が人気の『和食日和 おさけと』代表・山口直樹さんにインタビューを実施。

山口さんは2018年に『和食日和 おさけと』を初めて開業し、その後は着々と増店。初開業から2年を迎えた時点で既に5店舗を展開し、2020年3月には浜松町・大門エリアに6店目をオープンしました。
今回のインタビューでは山口さんのリアルな経験談をはじめ、これから初めての開業を目指す方へのアドバイスも伺いました。
まずは実績作りを
山口さんが思う、これから初めての開業を目指す人々が行っておくべきこととは―。
この問いに対し、飲食店での実績作りがまずは大事だとの見解が返ってきました。
「飲食店を開業するにあたり、まずはお店で店長や料理長といった役職で実績を作ってから開業することをお勧めします。役職を経験していない若い人たちで『開業したい』と言う人がいますが、まずは与えられた場所で実績を作らないと。もちろんお金があれば開業はできますが、ひとつのお店での店長も務まらないのに開業してしまったら、成功は難しいと思います。」
『和食日和 おさけと』の開業前は北信越料理店の支配人を務めていた山口さん。その間に築き上げた実績があったからこそ、しっかりと事前準備ができた状態での開業に繋がり、想定以上の売り上げを記録できたと振り返ります。
また、実績を積んでいる間に生まれた人脈に関しても現在に至るまで続いており、開業後に実を結ぶことも数多くあったといいます。
もし実績を積まずに開業していたら…?と投げかけてみると、山口さんは「恐怖しかない」と即答。新規開業から瞬く間に多店舗展開を果たした背景には、確かな経験と実績に裏打ちされた堅実な事前準備がありました。
飲食以外の業界から脱サラし「〇〇が好きだから」「〇〇をやってみたいから」と一念発起して開業を目指す方も決して少なくはない昨今。
そのような想いを抱いている人でも、まずはひとつの飲食店で実績と人脈をしっかりと形成したうえで開業に踏み出すことを山口さんは推奨します。
気に入った物件の取得が叶わなくても、逃した物件がすべてではない
初開業から短期間で増店を実現した山口さんですが、これまでに苦労がなかったというわけではありません。
山口さんは2店舗目をオープンさせた時期が特に大変であったと語ります。
経営する店舗を1店舗から2店舗に増やすうえで何より大変なことは、店舗運営に関わるすべてを「2倍」にしなければならないこと。しかしながら経営者である山口さんの体は一つしかないため、既存店の経営を止めずに増店に向けても動くことは決して容易ではありません。
そのような苦労に加え、一度契約が決まりかけていた物件が流れてしまうという事態も発生。この時期は本当に大変だったと振り返ります。
狙っていたエリアでの物件取得が叶わず…。しかし、今となってはその後に出会った物件でオープンして良かった
開業するための物件を探す際、他者との競合負けなどで気に入った物件を逃してしまうこともあり得ることが実情です。
物件を逃してしまった経験は山口さんにも―。
「実は2店舗目の物件を探している時に、決まりかけていた物件が流れてしまったことがありました。そのあとに、流れた物件とは全く違う御茶ノ水エリアの物件を見つけて、そこが現在2店舗目を営業している物件です。」
契約が決まりかけていたところで一転してしまい、狙っていた物件の取得が叶わず…。
それでも、状況が悪化することはなかったと振り返ります。
「流れてしまった物件は家賃が高めで、当時にしては少し背伸びした物件でした。その後に決まった所は背伸びせずにちょうどよく投資できる物件でしたし、何より御茶ノ水エリアに決まったからこそ、そのエリアでの求人によって現在の2店舗目のメンバーが集まってくれたと思っています。結果としては、今やっている物件ですごく良かったと感じていますね。」
気に入っていた物件を逃してしまうと、どうしてもショックを受けてしまうことは人間の性。ショックのあまり動きを止めてしまったり、もう良い物件は出てこないのではないか…と不安になって物件探し自体を辞めてしまうケースも珍しいものではありません。
山口さんも契約が流れた際はショックを受けてしまったそうですが、今となっては流れた物件ではなく現在の物件に決めたことはターニングポイントのひとつであったといいます。
「2店舗目の物件を探している時に流れた物件は、実は大門・浜松町の物件で、ずっと狙っていたエリアでした。巡り巡って(2020年の)3月にそのエリアでお店を出すことになりましたが、今思えば当時流れた所よりも条件と場所の良い物件を見つけることができました。自分にとって良い・悪いに限らず、流れたことが結果的に良くなることもあるんだと思いましたね。」
気に入った物件を逃してしまったとしても、逃したことによって運命が悪くなるとは限りません。
ショックを受けてしまうことは仕方がないとしても、逃した物件が全てではないということを念頭に置いて気持ちを切り替えることが大切です。
開業してから、家族との時間が増えた
続いて、開業によって得た喜びを伺うと、山口さんは「開業前よりも家族との時間が取れるようになった」と笑顔で答えてくれました。
「雇われていた際はシフト勤務でした。たとえ休みだったとしても、誰かが急に休んだ際は代わりで行かなければいけない日もありました。でも、今は自分で日曜は完全にオフにする日だと決められたので、開業する前よりも家族との時間が増えましたね。」
自分自身が経営者だからこそ決められた「完全オフ」の定休日。これは経営者だけでなく、従業員も同じく完全オフに。
「日曜も営業すれば少しは売り上げも増えると思います。でも、それよりもみんなが家族と過ごせる時間や、みんなが一緒に休める時間の方が大事ですからね。」
休日はできるだけ仕事のことは考えないようにしているという山口さん。ご自身だけでなく従業員も含めた全員が、プライベートや家族との時間も大切にできる環境を築き上げました。
働き方改革の意識が高まる現代社会ですが、飲食業界は依然として休みがとりづらい環境が多く存在し続けています。
しかし、飲食業界で働きながらも「プライベートや家族との時間を大切にできる環境」を作りたいとの想いがあるのであれば、そのような想いを実現できる飲食店の開業を目指してみることも一つの手段であると言えます。
これから開業を目指す皆さんへのメッセージ
「開業すると良いこともたくさんありますが、大変なこともたくさんあるので、開業するのであれば覚悟を持って踏み出すべきだと思います。また、『開業して家族との時間を作るんだ!』などのしっかりとした想いがあれば、開業して楽しいと思うこともあります。頑張ってください!」
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