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今、オフィス街で飲食店を開業するために知っておきたいこと

今、オフィス街で飲食店を開業するために知っておきたいこと

「物件選びは立地が7割」という言葉が表す通り、これから飲食店を開業しようとする人にとって、物件探しは最初に取り組むべき最大の山場となる。そして飲食店オーナーに最も人気の高い立地がオフィス街・ビジネス街といわれるエリアだ。すでに物件をお探し中の方ならお気づきだと思うが、オフィス街の好立地は激戦区で、運よく居抜き物件が出てきたとしても、多数の申込みが殺到してしまうというケースも少なくない。そのため本当に取得したい物件に出会ったら、他のエリア以上に早めの判断、早めの申込みが必要不可欠となるだろう。

では、それほどまでに人気のオフィス街・ビジネス街とはいったいどんなエリアなのだろうか。今回は、そもそもオフィス街とは何か?という基本から、ターゲットとなる客層や賃料相場、今オフィス街に求められている飲食需要は?など、オフィス街・ビジネス街で飲食店開業を考えている人なら知っておいて損はない、開業に役立つノウハウをお伝えしたい。

そもそも、オフィス街・ビジネス街の定義とは?

本題に入る前に、そもそもオフィス街・ビジネス街とはどのようなエリアなのかという基本からみてみよう。

一般的に、都市部において会社などのオフィスビルや事務所が集中して立地しているエリアのことをオフィス街またはビジネス街と言う。多くの人が利用することから交通の利便性も高く、電車やバスなどの各種交通網が充実しているのも特徴の一つだ。またオフィスがたくさんあるのはもちろんのこと、飲食店や金融機関、コンビニなどといった店舗や施設も充実し、ウィークデイのオフィス街では、スーツ姿のビジネスパーソンたちが街を行き交う姿を頻繁に目にすることができるだろう。

 

都内には16ものオフィス街と言われるエリアがある。

そのようなオフィス街は、都内にたくさん存在している。

日本屈指のビジネス街である東京駅周辺エリア(=丸の内・八重洲・大手町など)をはじめ、金融系・外資系企業が多いといわれている有楽町エリア、近年大規模な複合ビルの建設に成功した虎ノ門エリア、日本の政治中枢を担う官庁街の霞が関エリア、繁華街のイメージも強い六本木、赤坂、新宿、池袋など、東京には大きく分けても16ものオフィス街と言われるエリアが存在しているのだ。そしてそれらは、それぞれエリアごとの特徴を持っている。

例えば古くからビジネス街として栄えてきた新橋は、「サラリーマンの聖地」という愛称でも親しまれているが、中小のオフィスビルが林立するエリアだ。よくテレビなどで、SL広場前でお酒に酔ったサラリーマンが街頭インタビューに答えている姿を目にすることがあると思うが、駅周辺は昼夜問わずビジネスパーソンたちで賑やかだ。

一方、世界一のターミナル駅としても知られる新宿駅は、ご存知のように都内随一の繁華街としても知られている。そのため東西南北に区画整理された街には、商業施設やオフィスビル、飲み屋街など雑多な業種が所狭しと軒を連ね、ビジネスパーソンのみならず、デートや飲み会や買い物に訪れる、多種多様な人々で入り乱れている。

このように、ひとことでオフィス街と言っても、街によってその特徴は様々だ。

 

オフィス街の居抜き物件取得には決断力が必須!

冒頭でお伝えした通り、オフィス街は飲食店激戦区だ。特に駅近だったり、一階路面店だったりと好条件の物件には、情報公開直後に申し込みが殺到してしまうケースも少なくない。そのため、もしもオフィス街で自分の条件に近いと思える物件に出会ったなら、即決するくらいの俊敏さと決断力が必要になってくるだろう。

居抜き物件には、初期費用を安く抑えることができるというメリットがある反面、スケルトンと異なり、内見で確認しておくべきチェックポイントがたくさんある。そのため、単にイメージが近いからといって即決してしまうのは非常に危険だ。厨房や水道・電気・ガス・給排気設備など自分では判断できない要素も多いため、いざ好条件の物件に出会ったときに即決できるようにするためにも、内見時には内装業者に同行してもらい、専門家の視点でチェックしてもらうことをおすすめしたい。また、自分のやろうとしている業態になるべく近い業態の居抜き物件を選ぶことで、費用面を大幅に抑えることも居抜き物件ならではのメリットだろう。早めの決断が必要とされるオフィス街の居抜き物件を探す時には、これらの点を注意しておくとよいだろう。

 

オフィス街のランチは稼ぎ時!売上を上げる秘訣とは?


 
オフィス街の飲食店のメリットといえば、ずば抜けたランチの需要の高さがあげられる。平日は、溢れんばかりに押し寄せる人をさばくのに手いっぱいといった嬉しい悲鳴をよく耳にするほどだ。また、夜は夜で仕事帰りの会社員が比較的早い時間から来店して店を盛り上げてくれる。その反面、土日や休日の集客に苦戦する店舗が多いのも事実だろう。

これらの特徴を踏まえると、オフィス街の飲食店は「いかに平日のランチで売上を稼ぐか」がまず重要になってくる。そのためには、おいしいだけでなく短い時間で誰もが簡単に作れるメニューを開発し、注文を受けてから提供までの時間を最短にする努力が必要だ。そして、意外に思うかもしれないが、オフィス街ではランチで行列を作らないことも大切になってくる。限られた休憩時間の中でお昼を楽しみたいビジネスパーソンたちは、よっぽどのことがない限り、行列をみた段階で諦めて他店に流れていってしまうことが多いからだ。

 

オフィス街で生き残るためには、ピークタイム以外の売上を伸ばす努力を!

特に12時~13時の平日のランチの盛況ぶりは前述の通りだ。それに加えて、金曜の夜は何もしなくても繁盛するという飲食店も多いだろう。しかし、そういったピークタイムの売上だけを頼りにしていては、経営は成り立たない。飲食店激戦区ともいえるオフィス街で生き残るためには、それ以外の時間にいかに売上を伸ばすかを考えることが重要になってくるのだ。

例えばランチは11時~16時までというように営業時間をなるべく長めにとり、11時台や14時以降の来店客にはドリンクサービスをおこなってみるなどもよいだろう。また、集客に苦戦しがちな月曜日~火曜日の夜には小皿料理を一品サービスしたり、ポイントカードを導入して、「月曜日はポイント3倍!」などと特別感を煽りつつリピート客もしっかり獲得していくなどの戦略も効果的だ。

とにかくオフィス街の飲食店では、このようなアイドルタイムの集客術が、お店の命運を分けることになる。そのため、割引サービスやプレゼントなどお店独自の手法を取り入れ、ピークタイム以外の時間の来店動機につなげていきたい。

 

ランチだけじゃない、オフィス街ならではの隠れたニーズとは?

ランチ・ディナーに限らず、オフィス街ならではのニーズとしてテイクアウト需要がある。出勤前に朝食を調達していく人や、残業のため夕飯を買いにくる人、また、ランチを安く簡単に済ませたいという理由から、お昼時にお弁当などのテイクアウトを求める人も多い。朝食には手軽にテイクアウトできるサンドウィッチやバケット、昼ごはんや夜ご飯には生姜焼きや唐揚げなどのがっつり系のお弁当と、時間帯によっても様々なニーズが考えられるだろう。

またテイクアウトに加え、オフィス街では朝食のニーズも高い。昨今の朝活や朝食ブームも相まって、出勤前に勤務先の最寄り駅で朝食を済ませるという人が増えてきているのだ。すでにスターバックスコーヒーでは、東京23区内にある約300店舗のうち39店舗が早朝営業を始めている。店舗によって開始時間にはばらつきがあるものの、品川や浜松町など6時台から営業しているオフィス街の店舗も多く、朝からたくさんの人で賑わっているようだ。そのほか、忙しい毎日だからこそ朝の時間を有効活用しようと、ビジネスパーソン同士の朝食会などもちょっとしたブームになっている。

 

ビジネスパーソンだけじゃない!?オフィス街の飲食店の隠れたターゲットとは…

続いてオフィス街の人口について考えてみたい。オフィス街と聞くと、平日昼間や仕事終わりの夕方以降は多くのビジネスパーソンたちで溢れるものの、夜間になると人口が激減するというイメージを持たれる方も多いだろう。つまり、オフィス街に実際に住んでいる人は少なく、仕事が終われば皆、都心に近い郊外の家へ帰っていくということだ。

確かに、オフィス街のような中心市街地にはもともと一般住宅は少なく、都市部の人口の空洞化=ドーナツ化現象が騒がれて久しい。しかし、最近のオフィス街をとりまく現状をみれば、その認識も変わりつつあるということがわかっていただけるのではないだろうか。

例えば、将来リニアモーターカーの始発駅になることでも注目されている品川駅は、オフィスビルが林立するビジネスの拠点としても名高いが、近年は、タワーマンションの建設が相次いでいる。そのため、「住みたい街ランキング」の上位に選ばれるなど、生活拠点としての魅力も兼ね備えた街として急速に成長してきているのだ。同じく、大規模な再開発によって年々オフィス街としての存在感を増している大崎も、オフィスとタワーマンションが共存する街だ。また飲食業界にその名を轟かせる名店の多い五反田は、表通りに大きなオフィスビルが目立つものの、その周辺には一般住宅も多く、商業エリアを抜けた先には高級住宅街も広がっているという二面性を持っている。

このように、オフィス街といっても居住者がほとんどいないというような街は少なく、とりわけ近年の再開発の影響によるタワーマンションの建設で、オフィス街の居住人口は年々増加していっているというのが現状なのだ。

ちなみにタワーマンションに住む富裕層たちは出不精で、外食よりもケータリングや宅配を好む傾向にあるため、土日はケータリング業に特化する周辺飲食店も増えてきているようだ。そうすることで、従来のオフィス街が問題点としてきた休日の売上をカバーすることができ、売上もあげることができる。このように、やり方次第ではオフィス街=休日も稼げる立地になり得る可能性を秘めているのだ。

 

オフィス街の物件の賃料は高い?安い?

これまでオフィス街の様々なメリットやデメリットをみてきたが、肝心な賃料はどのくらいなのだろうか。オフィス街の物件は、駅から近い立地の場合が多く、かつ人が集まりやすい場所にあるため、比較的賃料平均は高めといえるだろう。もちろんオフィス街といっても多種多様なエリアがあるため、いくつかの例を挙げてみてみることにしよう。

例えば、外資系企業の多い六本木の平均坪単価は2018年のデータで29,155円。最高値の物件の坪単価は86,347円となっている。一方東京と品川の交通の要衝に位置する浜松町では、最高値の物件の坪単価は42,000円と六本木の半額以下だが、平均では27,114円と近い数字となっている。

田園調布や二子玉川のような住宅街になると坪単価は1万円台後半~2万円台前半まで下がってくるので、それに比べれば高い印象を受けるが、「日本一長い商店街」で知られる戸越銀座が平均坪単価20,323円なのに対し、東京駅からほど近いオフィス街の大手町が20,221円と戸越銀座を下回っており、オフィス街といえども選ぶエリアによって賃料相場にかなり開きがあることがわかる。そのため、一概に高い安いと判断できないというのが正解だろう。ちなみに、都内で最も賃料相場が高いエリアは明治神宮前や表参道・原宿といった繁華街になり、最高値の明治神宮前では平均坪単価が35,220円となっている。

 

今、都内のオフィス街で支持される人気店

最後に、都内の人気店を通して昨今のオフィス街の飲食店事情をみていきたいと思う。

忙しいビジネスパーソンのランチに欠かせないのが、立ち食いそばやラーメンなどの手軽な飲食店だ。有楽町のガード下から五反田に移転した立ち食いそば屋「名代 後楽そば」では、ちょっと変わったメニューが人気を集めている。昔懐かしい庶民の味を体現したソース焼きそばだ。そば屋らしく焼きそばといなりずしのセットメニューなどもあり、大盛りでも500円以下というコスパのよさで、来店客の多くが注文する名物メニューとなっているのだそうだ。

また、忙しいからこそランチタイムを思う存分満喫したいという人たちに人気が高いのがランチビュッフェだ。お腹いっぱい食べられ、いろいろな食材をバランスよくとれるビュッフェには、グループで訪れる女性客も多い。金額は2000円前後~1000円前後の店が多く、中でも大手町のダイニング「グランドセントラル」のサラダビュッフェは950円と破格の値段で人気を集めている。ローストチキンなどのその日のメインにビーフシチューやサラダ、パン、ドリンクバーまでがついた大満足の内容で、近隣の会社員たちの絶大な支持を得ているようだ。

そのほか、倹約家のビジネスパーソンに人気が高いのがワンコインランチだ。ランチは毎日のことなのでできるだけ安く抑えたいという周辺会社員たちのニーズをうまく取り込み人気を得ているのが、銀座の隠れ家居酒屋「橙(だいだい)」の行列のできるワンコインランチだ。銀座と聞くとつい高級店を想像してしまうが、ここは、2種類から選べるメインに選べる小鉢が2品ついて税込500円という驚くべき金額でランチを提供している。しかもメニューは日替わりで、毎日訪れても飽きがこないという点もニーズに合っており、並んででも食べたいというビジネスパーソンが多いようだ。

 

まとめ

これまでオフィス街・ビジネス街の様々な特徴をみてきたが、オフィス街の多様さとエリアに応じたニーズを発掘していく大切さをご理解いただけたのではないだろうか。昨今は、大規模開発によるタワーマンションの建設などでオフィス街のニーズも変わりつつある。時代の空気を読み取り、自店のオリジナリティを活かしたサービスを展開していくことが、今のオフィス街の飲食店には求められているのだ。

オフィス街・ビジネス街で働くビジネスパーソンにとって飲食店の存在は、単にお腹を満たしてくれるだけでなく疲れた心も癒してくれる、なくてはならない存在だ。そんな彼ら・彼女らのニーズにじっくりと耳を傾け、寄り添っていく姿勢も、オフィス街の飲食店には欠かせない意識なのだろう。

 

 

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