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あえて、郊外で飲食店を開業する。郊外立地の魅力とは

あえて、郊外で飲食店を開業する。郊外立地の魅力とは

「飲食店は立地が七割」とよく言われる通り、飲食店が成功するためのカギを握っているのは、やはり「立地条件」だろう。とはいえどんな立地であっても、この立地は「良い立地」だとか、ここは「悪い立地」だといったように一概に判断することは難しい。
なぜなら、立地条件の良し悪しは、出店する店舗のコンセプトや誰をターゲットにしているか、などによって変わってくるからだ。
つまり、たとえ誰もが認める一等地の物件を取得できたからといって、そこでの成功を約束されたわけでは決してなく、その立地条件が自店のコンセプトとぴったりとマッチしていなければ、宝の持ち腐れになってしまうこともあるということだ。

逆に言えば、二等立地や三等立地でも、やり方によっては大成功を収める可能性を秘めているといえる。
今回は、あえて都心から離れた「郊外の立地」に焦点をあて、そのメリットやデメリットも踏まえ、郊外で飲食店を開業する際のポイントや魅力について考えてみたい。

「郊外」の定義


本題に入る前に、まず「郊外」という言葉について確認しておこう。郊外とは、都市に隣接した地域のことを言い、もともとの意味においては、市街地周辺の田園地帯を指していたようだ。
しかし19世紀以降の住宅地の発展に伴い、次第にその意味を変化させ、現代においては「都市の近くの住宅地」を指すようになってきた。
ただし、どこまでが都心でどこからが郊外なのかという明確な定義はなく、ひとことで郊外といっても、その範囲は広いといえる。

郊外の店と聞くと、まっさきに地方のロードサイドにあるような店舗を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれないが、ここでは、東京から電車で行くことのできる、いわゆる二等地や三等地といわれるベッドタウンエリアも含めた郊外立地について考えていきたい。

郊外立地のメリット、デメリット

郊外にある物件は、繁華街やオフィス街のような都心の物件と比べて、どのような違いがあるのだろうか。まず、皆さんの頭に思い浮かぶのは、「駅から遠い」「人通りが少ない」などといったマイナスイメージの方かもしれない。もちろんそれも間違ってはいない。しかしそれだけではなく、郊外には郊外ならではのメリットもたくさんあるのだ。
ではさっそく、郊外に飲食店を開業する際のメリットとデメリットを整理してみよう。

1.比較的物件が取得しやすい
激戦区の一等地には、どうしても申し込みが殺到してしまうため、大家さんの審査などが入り、結果が出るまでに時間がかかることが多い。
また実績の少ないオーナーにとってはハードルの高い審査となるため、長々と待たされた挙句、取得もかなわなかったというような話もこれまで多く耳にしてきた。
その点、競争率が少ない郊外店舗は、ある程度ゆとりを持って物件を吟味することができる上に、はじめての開業でも取得しやすいというメリットがあるだろう。

2.店舗の広さに対して、家賃や保証金が安めに設定されている
都心部の激戦区などと比べ、郊外の物件はなんといっても家賃が安いというメリットがある。それだけでなく、物件取得にかかる初期費用(保証金、仲介手数料、礼金など)も抑えることができるため、開業時の出費を少なくすることができるのだ。
そうした理由から、できるだけ少ない予算で開業したいと考えている新規開業者の方などには、特におすすめの立地といえる。

また、初期費用で予算を節約できた分は、そのまま運転資金にまわすことができるため、開業後も余裕を持って営業できるという安心感があるのも魅力だろう。
このような費用面でのメリットは、郊外で開業する際の最も大きなポイントと言える。

3.店舗数自体が少ないため、競合店も少ない
店舗が密集する都心の激戦区とは異なり、郊外にはそもそも飲食店そのものが少ない傾向にある。ということは、その分競合店も少ないということになる。
もし自分が開業しようと思っているエリアに目立った競合店がなければ、開業してからも常連客を取り込むのにはそれほど苦労することもないだろう。
そういう意味でも、息の長い営業を続けていきやすいという点も、郊外店舗のメリットといえるだろう。

4.近隣にはファミリー層が多いため、ターゲットは幅広い
基本的に、郊外の立地はファミリー層が多く居住する住宅地となっているため、お年寄りから小さなお子さんまで、幅広い年齢層がお店の客層となる。
そのため、いわゆるオフィス街や学生街のように、特定のターゲット層に絞った営業はあまり効果的ではないだろう。
つまり、メニューを設定する際は、〇〇専門店のような一点集中型のメニューというよりは、複数のメニューを設けて来てくれる人が自由に選べる余地を残すなど、幅広い年齢層に対応したメニュー提案が重要になってくるといえるのだ。

5.都心部に比べ人口密度が少ないため、集客には工夫が必要
都心から離れれば離れるほど人口密度は少なくなるため、郊外の店舗は、繁華街の店舗のように、看板を見てふらっと入店するといったような一見客を取り込みやすい環境とはいえない。
その分、何らかの形で集客の工夫をする必要がでてくるだろう。そのため、それぞれの状況に合わせた対策なども事前に考えておくと安心だ。

6.都心の店舗に比べ、プロモーションに予算をかける必要がある
上述の対策の一つとして、特にオープンしたての時期などには、お店の存在を知ってもらうための広報やプロモーションにお金をかけることも大切だ。
都心に比べ、人通りが少ない分、ポスティングやオープンキャンペーンなどのイベント、また様々な媒体を利用した広報活動を行い、積極的な集客を心がけるのが成功への近道となる。
費用をかけずにできるSNSによる広報などをうまく利用していくのもよい方法だろう。

7.都心の店舗に比べ、近隣とのトラブルが起こりにくい
どの程度の郊外なのかにもよるが、地方に行けば行くほど隣の店舗や民家との間隔を広く保つことができるようになる。
そのため、店舗が密集している都心部に比べて、近隣同士の騒音や異臭等のトラブルは、比較的起こりにくいというメリットがある。

以上が郊外立地のメリットやデメリットとなる。これらの情報をまとめると、郊外の飲食店は、家賃や物件取得費などを抑えることができるという費用面のメリットが非常に大きいものの、人通りなどは都心に比べ少なくなるため、集客面では工夫が必要だということが見えてくる。

郊外の良い立地の探し方


いざ飲食店を開業するとなった時、まず最初にやるべきことは、自店のコンセプトを考えることだ。開業する店舗のコンセプトが定まっていなければ、どんな立地が自分の店舗に適しているかは見えてこない。
では、ある程度コンセプトが定まったところで、郊外立地を選択するとなった場合、どのような探し方をすれば、自分にとって最良の物件を手に入れることができるのだろうか。
ここでは郊外で成功する立地を探す、探し方のポイントについて考えてみたい。ちなみにそのポイントは、大きくわけて3つある。

1.最初は候補地を限定せず、広い範囲に設定しておく
まずは、はじめから候補地を限定しすぎずに、広いエリアから探してみることが大切だ。
ひとことで郊外といっても、ニューファミリーが多く住んでいる新興住宅地もあれば、高齢者層の多い既存住宅地もある。あらかじめその街の雰囲気や住民タイプをリサーチし、候補となるエリアを複数挙げておくとよいだろう。
そのうえで、それぞれの条件を洗い出し、候補地を絞り込んでいく。同じ郊外でもエリアによっては賃料や初期費用に大きな差がでてくることもあるため、そういった条件を比較し、最終的に最も自分の店舗に適したエリアを選ぶようにしよう。

2.将来性を踏まえたエリア選びをする
そして、二つ目は今後の将来性を踏まえたエリア選びをするということだ。
すでに人気のあるエリアは、その分賃料なども高くついてしまうが、そうでないエリアなら比較的リーズナブルに抑えることができる。そういったエリアの中でも、これから人気が出てきそうなエリアをみつけることができたら、後々の地価が高騰することで、そのメリットも享受することができ一石二鳥だろう。

昨今、住みたい街ランキングの常連として、ファミリー層を中心に人気を集めている「武蔵小杉」も、10年ほど前まではどちらかというと何もない街だったことを思い出してほしい。
そんな武蔵小杉駅周辺が、横須賀線の開通や、タワーマンションの建設など大規模な再開発によって飛躍的に成長し、今では人気の新興住宅地兼商業地へと様変わりした。

このように、今後も開発などによって大きく成長する街はあるだろう。反対に、地形などの問題からこれ以上の発展があまり見込めない街もある。物件探しにおいて、そのような情報を調査することはとても大切なことだ。
また開発だけでなく、最近この付近に人気店が出店し始めている、などの飲食店事情のリサーチも、将来性の高い街を見極めるための物差しになってくれるだろう。

3.最終的には自分の目で見て確かめる
最後に三つ目のポイントだが、最近はネット上に様々な情報が溢れていることから、ついついそれらの情報に頼りがちだ。
しかし、商圏分析はそういったネット情報だけに頼らず、自分の足で歩いて実際に目で見て確かめることが何より重要になってくる。

例えば、グルメサイトなどの口コミを頼りに予約したお店が、実際に食べてみたら自分の口には合わなかったなどということもよくある通り、特に自分の店舗の開業地を決めるときには、自分自身の感覚を基準に決めるべきだろう。
その土地の雰囲気というのは、実際にそこにいってみないことには掴むことができないため、面倒と思うかもしれないが、現地に足を運び、自分の目で見て判断してほしい。
実際、直観やフィーリングで物件を取得したという人気店のオーナーは意外と多い。このことからも、最終的には自分自身の感覚が最も頼りになるということがわかるだろう。

郊外で飲食店を開業するなら・・・


海を臨む古民家のようなたたずまいの「かねよ食堂」は、元漁師小屋を改装した横須賀の走水海岸沿いにあるカフェレストランだ。
漁師町のため周囲には決して多いとは言えない数の飲食店がぽつぽつとある程度で、ここへ行くには車または駅からバス移動が必要となる。そんなアクセスの不便さをよそに、この「かねよ食堂」は今や、海を感じる稀少なロケーションや、提供される料理のクオリティなどから、多くのファンを獲得する人気店となっている。
店内ではライブイベントやアート作品の展示なども頻繁に開催され、日焼けした若い人たちや、新鮮な魚介類を求めて訪れる食通たち、そして地域の人々で店内はいつも賑わっている。

特に大きな観光地というわけでもなく、近隣住民以外に訪れることの少ないエリアであるにも関わらず、「かねよ食堂」がここまでの人気を獲得できたのは、その店に行くこと自体がお客様の目的になっているからだろう。
元漁師小屋を改装したという場所のもつ個性もそうだが、ここでしか見ることのできないロケーション、味わうことのできない料理や体験を提供してくれる場所であれば、そこにいくのが例えどんなに面倒でも、行きたいと思う人はたくさんいる。そのことを「かねよ食堂」の例は証明してくれているようだ。

デメリットは工夫次第でお店の個性やオリジナリティになる

駅から遠く、人通りも少ないという郊外の立地条件を逆手にとることで、来る人に、ここでしか味わうことのできないメニューやサービスを提供している「かねよ食堂」のように、郊外店舗は、マイナスの条件をプラスに変え、工夫次第でお店の個性やオリジナリティに変換していくことができるというもう一つの魅力を持っている。
それさえできれば、郊外立地のデメリットはメリットへと変わり、もともとのメリットである賃料の安さや物件取得のしやすさは、開業にあたってさらに力強い後押しになってくれることは間違いないだろう。

現在、駅から近い都心での開業を考えて物件を探しているという人も、少し発想を切り替えて、郊外立地に目を向けてみるのはいかがだろうか。
また、なかなか物件が決まらないと悩んでいる方は、今一度自店のコンセプトを見直してみてほしい。何を優先順位とするかは人それぞれだが、意外と郊外の方が自店にあっているのかもしれないと思えたら、まずは候補地選びから始めてみよう。

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