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審査のチェックポイント①「経営者としての資質」とは #専門家コラム

審査のチェックポイント①「経営者としての資質」とは #専門家コラム

前回の記事では、創業融資の審査のチェックポイントについて、「経営者としての資質」「財政状態」「収支見通し」の3点があることをお伝えしました。

今回はそのうち「経営者としての資質」をどのようにアピールすればいいか、解説します。

 

1.融資担当者は商売の経験はない

融資を申し込みする開業希望者の中には、融資担当者は飲食店の商売に関して詳しいだろうと思っている人がいます。また、飲食店の専門家がいて審査を担当すると想像している人もいます。ところが実態は、そうではありません。

融資担当者は、財務分析については勉強していますが、大企業に勤めるサラリーマンです。親が飲食店をやっていて手伝った人などごく一部を除けば、商売の実体験はないのです。つまり、商売について詳しいとはいえない人がほとんどです。

「業種業界の専門家」というよりも、様々な業種について広く浅く机上で勉強しているのが融資担当者です。

 

2.「経営者としての資質」はどうやって判断される?

商売に詳しいとはいえない融資担当者が、いったいどうやって「経営者としての資質」の有無を判断するのでしょうか?
日本政策金融公庫の場合、膨大な数の創業融資を行ってきたことから、開業希望者のタイプと経営者の資質の有無の判断について経験則をもっています。そのため、具体的には「経営者としての資質」を次のような観点で把握しようとします。

これまでの経歴や職歴の中で、どんな経験を積んでどのようなスキルやノウハウを得てきたのかを把握します。その培ったスキルやノウハウは、開業計画にどのように関連しているのか、ということが重要です。金融機関は、「経験を積んだ分野で起業するほうが成功する確率が高い」「経験のない事業はうまくいかない」という経験則をもっています。とくに飲食店の場合は、飲食店の勤務経験がお店の成否に大いに関係があると認識しています。

また、店長や役職についていたなど、マネジメント能力の高さを裏付ける経歴があれば、プラス材料になるので積極的に示すことが有効です。

飲食店は、経営者が接客する場合が多くあります。また営業活動も、経営者自身が出ていかなければならないことがほとんどです。そのため接客や営業ができる人物かどうか、ということがチェックされます。

では、どうやって融資担当者が接客や営業の能力を把握できるのでしょうか?

唯一把握できるのは、融資の面談の場面です。飲食店経営者にふさわしい雰囲気を持っている人かどうか、お客さんの立場からみていい印象の人か、会話のキャッチボールがうまくできるかどうかが、重要なポイントになります。

経営者は、サラリーマンよりもハイレベルな思考能力が求められるのが普通です。これも面談の会話の中で、「頭の回転が速い」「頭脳明晰な人だ」といった印象を植え付けられると、融資担当者が稟議書に書く「人物印象」という欄が高評価になるのです。

開業することに関して真剣に準備をしているか、是が非でも成功させるという意欲に溢れているか、ということが問われます。

開業するときこそ「何事も自己責任」という姿勢であるべきで、その覚悟を融資担当者が感じるように振る舞うことが重要です。

融資担当者が、確信をもって融資OKの結論を出すためには、開業希望者に関して知るべき情報を正確に把握することが必要です。そのため、正直に情報開示をする姿勢がある人のほうがスムーズに融資が決まります。

お金や数字に関する説明がうまくできるか、返済や支払いに関して期日を守る人かどうか、ということがポイントです。

経営者としてふさわしいタイプかどうか、面談のときの雰囲気で把握しようとします。融資担当者が「元気がある人」「危機を乗り越えるタフさがある」「前向きな考え方ができる」という印象をもてば、安心して融資できるという気持ちになるものです。

 

3.飲食店の経験が少ない場合の対処法


飲食店の経験が少ない方の場合は、かなり審査のハードルが高くなるのは事実ですが、可能性がゼロというわけではありません。経験が少なくてもそれをカバーできる理由があることを、融資担当者へ伝えることで審査をパスできる可能性が出てきます。

これについては「こうやれば大丈夫」といった方法はないですが、たとえば次のようなことがアピールできると有効です。
・学生時代に4年間○○店でアルバイトをしてバイトリーダーになった
・都内の居酒屋を数年間かけて食べ飲み歩きをして研究した
・飲食店ではないが他の店舗に勤務してサービス業の経験を積んでいる

 

まとめ

「経営者としての資質」は、これまでどんな経歴を積んで、飲食店経営をするための準備をしているか、ということがポイントとなります。過去のことは忘れている方も少なくないですが、しっかりと思い出して「創業計画書」の経歴を書く欄に記載しましょう。

 

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記事を書いた人

上野 光夫 氏

株式会社 MMコンサルティング 代表取締役・中小企業診断士

1962 年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に 26 年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社以上の中小企業への融資を担当した。融資総額は約 2,000 億円。

2011 年4月にコンサルタントとして独立。起業支援、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。資金調達サポートでは、年間約 100 社の融資を成功に導いている。リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。

主な著書

『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)
『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』(明日香出版社)
『事業計画書は1枚にまとめなさい』(ダイヤモンド社)

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