開業者インタビュー

高円寺でただ1軒の広島お好み焼きの店 100人に100通りの接客を心がける

外木 隆行さん
高円寺でただ1軒の広島お好み焼きの店 100人に100通りの接客を心がける

駅から徒歩4分の住宅街にあるオシャレなお好み焼き屋
具材の麺は焼きそばとうどんから選べる!

「広島お好み焼き 鉄板焼き みかづき」はJR高円寺駅の北口から徒歩約4分。線路沿いに中野方面へ向かい桃太郎寿司の先の信号を左折すると分かりやすい。三日月にヘラを持った鹿のイラストがついた大きなタペストリーが「広島お好み焼き 鉄板焼き みかづき」の目印だ。

高円寺といえば、小説の舞台にもなった高円寺純情商店街を筆頭に、オシャレなカフェや雑貨屋から昔ながらの八百屋や魚屋までさまざまなお店が軒を連ねる商店街がいくつも栄えている街。「みかづき」のある駅の北東側は小さめの飲食店がポツポツある住宅街だ。店舗はマンションの1Fで角地にあり、その一面ずつにテラス席も用意されている。店内は黒壁の上に木材が貼り巡らされ、明るい色調のウッディーなカウンターやテーブルが落ち着いた柔らかい雰囲気を醸し出している。カウンターは8席あり、鉄板前の右4席は目の前でお好み焼きを焼く様子が楽しめる。

「みかづき」のお好み焼きはこんもりした可愛らしい形が特徴。店主の外木さんと幼なじみの小林さんが焼き手を務めている。人気メニューは、豚バラ・卵・キャベツ・焼きそばという組合せのスタンダードな広島お好み焼きと、店名を冠した“みかづきスペシャル”。こちらは卵と肉がダブルでイカ天とネギ入り。広島では王道の組合せなのだそうだ。カップルや若い男性には仕上げにバーナーでマヨネーズを焦がす“炙りねぎマヨ”、女性にはトマトとチーズが乗ったイタリアンテイストの“トマチー”も人気だ。東京では扱う店が少なくあまり知られていないが、広島ではその日の気分によって麺を焼きそばとうどんから選ぶことがポピュラー。「みかづき」では全メニュー麺を選べるようになっている。うどんは返すときに崩れやすいため焼き手に技術が要求される。お店に行ったらその見事なヘラさばきも堪能してほしい。

元々人とコミュニケーションを取るのは苦手だった!?
店内中央にあるカウンターと天井の高さが気に入った

外木さんは元々企業に勤める営業マンだった。実は大学時代まで知らない人とコミュニケーションを取るのが苦手な内弁慶の性格だったという。しかし社会人になって営業に配属され仕事をしていくうちに人と話すのが楽しくなり、コミュニケーションを取る術を身につけた。その会社を辞め、次の仕事までのつなぎとして始めた飲食店のアルバイトを通じて、さらに人とのコミュニケーションや飲食業の楽しさを知った。自分の店を持つのであれば故郷・広島のソウルフードお好み焼きの店を出したいと考え、広島に帰って理想のお好み焼きを考えながらいろいろなお店を食べ歩いた。その中で一番美味しいと感じて見た目もインパクトがあった「電光石火」で1年間修業。「みかづき」ではさらにアレンジを加えているが、「電光石火」の味と形が原点になっている。その後東京に戻り、何軒もの広島お好み焼き店で働いた。地方と東京では経営の仕方が全く違う。どの店の経営方法が自分の店に向いているのか、4年かけて勉強した。

満を持して物件探しを開始。絶対条件は、駅から徒歩5分圏内で天井が高くカウンターがあること。駅名を言って「それ何線?」と聞かれるような場所ではなく、しばらく都内に住んでいる人なら大抵分かるような駅の周辺が希望だった。まずはネットで検索し、気になった物件を内覧した。お好み焼き屋は重飲食に当たるが行ってみたら重飲食不可だったり、天井が低かったりということも多々あった。
この物件は、第一印象でいいなと思ったという。お客様の目の前で焼くという広島スタイルは譲れなかった。その点この店はカウンターが真ん中にあって、テーブル席もある程度取れる。そして何より天井が高い。圧迫感がなく坪数の割に広く感じられるところが気に入った。物件取得費は当初の予定より高かったが、実際に物件を訪れて使えるものと工事が必要な箇所と考えていた予算が合致したのがこの店だった。

予想外のことも多々あったが結果オーライ!
居酒屋ではなく、あくまでもお好み焼き屋の店でありたい

外木さんはお店を構えるまで高円寺という街を全く知らなかったそうだ。朝と晩に人の流れをチェックしに来た時には会社員がたくさん通っているのでこの街ならやっていけると思ったのだが、実際はよそに働きに行く人が多くこの界隈で働く人が少ないため、平日のランチは芳しくない。しかし夜は、会社帰りの人たちが来てくれる。「丸1日チェックして平日の昼間は人がいないと事前に知っていたらいろいろ考えすぎてここに入っていなかったと思うので、それはそれで良かったと思います。結果オーライですよ(笑)」。
開店前に近所の飲食店にご挨拶に行った際、「高円寺は商売が難しいよ。好奇心旺盛な人が多いから最初は来るけどすぐ離れていっちゃうから」と言われたそうだ。開店から3ヵ月は毎日忙しく、周りの人が何を言っているのか分からなかった。しかし、3ヵ月を過ぎた頃にその言葉は突然現実となった。このことだったのか…。だが昔から長く住んでいる方も来てくれ、幸い客足がパッタリ途絶えるようなことはなかった。

予想外だったことは、ターゲットの客層だ。若い女性の集客をイメージして内装をきれいにしたのだが、外から店内がよく見えるため若い女性は入りづらかったようだ。しかし、「高円寺は比較的家賃が安いので若い人が多く、この内装が功を奏してカップルやご夫婦がよく来てくれます」。ただし転勤や故郷に帰るなど引っ越しが多くとても人の流れが激しかった。「半年に一回ガラッとお客様が入れ替わります。これには驚きました。けど、新しいお客様も来てくれているので結果オーライですよ!」と外木さんはポジティブに話してくれた。
東京でのお好み焼きというと、広島のように週に一回は必ず食べるものではない。だから東京にはお好み焼きを出す居酒屋という感じのお店が多いが、外木さんは「あくまでも広島のお好み焼きの店としてやっていきたい。そこは絶対に崩したくないので食事とお酒半々で続けられるようにやっていきたい」と語る。高円寺には他に広島お好み焼きの店がないとリサーチ済みだったが、ラッキーなことに「みかづき」がオープンした昨年12月には、界隈にあった関西のお好み焼き店が2軒閉店していた。1軒だけあるお店はチェーン店で個人で経営するお店とは雰囲気が違うので、この雰囲気を好んで通ってくれるお客様が支えてくれた。

お客様一人ひとりに合ったサービスを大切に!
一生懸命やっていればお客様は応援してくれる

「飲食店をやるからには美味しい食事は当たり前。プラスアルファとして、お客様一人ひとりに合ったサービスを提供して楽しく帰ってもらう」、これが外木さんが大切にしていることだ。「美味しかった」に「楽しかった」がプラスされれば美味しさも何倍にも感じてもらえて「また来よう!」につながるのだ。お客様が100人来たら100通りの接客がある。「あまり会話をしたくない方にはその方に合わせたコミュニケーションの取り方をし、話し好きな方とは積極的に会話し、全員に喜んで帰っていただける接客を心がけています。幸いアルバイトの子たちもみんな明るくて、お客様に可愛がってもらっています」。

これから開業を目指している方たちには、飲食と経営の知識はしっかりつけてほしいということ。すでに飲食業の経験を積んでいる方は問題ないが、ただ料理が好きだからお店借りて開業してみようかなと考えている人には警鐘を鳴らす。「みかづき」の前のお店の人がそれで半年と持たず閉店に追い込まれてしまったからだ。ただ知識をしっかりつけて一生懸命やっていれば心配することはないと話してくれた。お客様に「あなたが頑張っているからまた来たいって思うんですよ!」と言ってもらえる。「一生懸命やっている人は必ず誰かがきちんと見ていてくれて応援してくれます。だから日々精一杯やりきることが大切です!」。

将来的にはお店を増やしたいと考えているが、広島お好み焼きは必ず焼き手が必要だ。だから人を育てなければ次の店は出せない。まずは資金を貯め人を育てていくために、日々プラスアルファのサービスを提供しながらこれからを見据えている。
(取材日:2016年11月9日)

外木 隆行さん
広島県出身。仕事のつなぎで飲食店のアルバイトを始めたところ飲食業の楽しさに気づき、本格的に修業に入る。自分で店を持つなら広島お好み焼きの店を出したい、と広島に戻って1年間修業し、都内でも4年間さまざまな店で学ぶ。
2015年12月、幼なじみと共に「広島お好み焼き 鉄板焼き みかづき」を高円寺にオープン。創意工夫を凝らしながらも本物の“広島のお好み焼き屋さん”にこだわったメニューを提供し、ファンを増やしている。

広島お好み焼き 鉄板焼き みかづき
住所:杉並区高円寺北2-17-7
TEL:03-5356-7175
営業時間:11:30〜24:00
定休日:木曜日
店舗情報:Facebook食べログ


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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