インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

幅広い世代が行き交う「五反田」
瀬戸内の鮮魚と利酒師厳選の日本酒が楽しめる居酒屋

繁華街とオフィス街、その両方の顔を持つ五反田。近年では高層マンションも建ち並び、駅周辺は常に賑やかで幅広い世代の人々が行き交う街だ。
JR五反田駅の西口を出て、目黒川を渡った大通り沿いに店を構えるのが2016年7月にオープンした「瀬戸内朝採れ鮮魚と酒菜 五反田 蒼」。
松山港から直送の鮮魚と、野菜ソムリエ厳選の野菜をふんだんに使った逸品料理、利酒師が厳選した全国各地の地酒が楽しめる。
飲み放題の中には常時7~8種類の地酒が入っており、リーズナブルな価格でおいしい日本酒を飲み比べることができると大好評だ。

もちろん、共同オーナーシェフである大里さんと浅井さんが生み出す逸品料理の数々も、居酒屋の定番メニューからオリジナルアレンジを利かせた創作料理まで豊富なラインナップが揃う。たとえば店のウリでもある朝採れ鮮魚の「刺し盛り(5種類)」(1900円~)や、魚を酒と昆布で蒸しシンプルに旨みを引き出した「瀬戸内鮮魚の骨蒸し」(800円)、野菜ソムリエの資格を持つ大里さん自慢の「野菜ソムリエのセレクトサラダ」(699円)、ヒゴグリラーの遠赤外線効果で外こんがり中ふっくらに仕上げた焼鳥が入った「焼鳥10本 盛り合わせ」(1699円)など。
ランチにはこだわり抜いて厳選した北海道産特Aの銘柄米〝ふっくりんこ〟を使用した「瀬戸内海鮮丼」(1000円)や「週替わり定食」(800~900円)などを揃える。
こだわっているのは銘柄米だけではなくその炊き方。今の時代では大変希少な〝蒸しかまど〟を使用しているのだ。炭火で熱を起こしてその熱で蒸し上げるので、通常よりもふっくらと炊き上がり、お米だけを食べても味わいのある贅沢な仕上がりとなる。
手間ひまかけた料理は近隣のオフィスに勤める人たちや地元住民を中心にすぐさまファンが増加し、昨年のオープンから1年足らずで連日満席の日が続く人気店となった。

勤務先で意気投合した2人が独立開業目指しスタート
あらゆる手段を活用し人気物件を獲得!

店を営むのは浅井圭太郎さんと大里大輔さん。2人とも専門学校卒業後から飲食業界に飛び込み、様々な業態を経験してきた。今から6年程前、お互い勤めていた和食店で出会い意気投合。後に別店舗勤務となり離れ離れになってからも連絡を取り合う仲だったという。
「前々から浅井が独立願望を持っているのは知っていたので〝ちょうどいいのがいるな〟と思って誘ったんです(笑)」(大里さん)
「一緒に働いていたときから気が合って仲が良かったけれど、まさか一緒に店をやるようになるとは全く想像していませんでしたね(笑)。1年ほど同じ店舗にいて、その後お互い同じ会社の別店舗で働き始めて少し経った頃、彼から〝一緒に店をやらないか〟と声をかけられて。僕は13歳の頃からずっと自分の店をやるのが夢で、35歳くらいまでにできたらいいなと思ってたんです。でも、一人でやるつもりはなく何人かでやりたかったので、ちょうどいいタイミングでしたね」(浅井さん)

いよいよ始まった物件探し。当初の希望エリアは中央区~千代田区、皇居周辺だった。「前の会社は10店舗あって、その中でも業績の良い場所でやろうと言ってたんです。具体的には中央区~千代田区、皇居周辺で探していました。曙橋、神田、本郷三丁目、門前仲町、日本橋……かなりの数の物件を見に行きましたが、条件が合わなかったり既に申込みが入っていたりで、良い物件がなかなか出てこず。そんなときに、エリアを拡大して探し始めたらこの物件に出合ったんです」(浅井さん)
「いろいろ見た中で一番希望に合ってましたね。駅からは離れてますが、路面店で厨房も内装もきれい。だからこそ当然人気物件で、内覧会の際も店内は満席でした。これまでに申し込んでも取得できなかった物件もあったので、今回は負けたくないという思いも強かったですね。僕たちは個人なのでどうしても弱くて」(大里さん)

悔しい思いをしたこともあり、少しでも良い物件を取得したいという気持ちからABC店舗のリアル日記モニターを開始。
この「リアル日記」(リンク貼る)は、新規開業を目指す方々が物件探しからオープンまでをブログ形式で紹介していくABC店舗のオリジナルコンテンツ。事前にABC店舗がお客様の内容を把握しているから、申し込みから成約までがスムーズになるというメリットもある。大里さんと浅井さんは、このリアル日記をうまく活用し自分たちの物件探しを実況しながら自らを奮い立たせた。

そしてようやくこの五反田の物件を勝ち取り、契約。初期費用節約のため、内装はほぼ自分たちで取り組んだ。
新たなカウンターの取り付けや壁の塗り替え、棚や外観、外看板の作成。名刺のデザインに至るまで全て自分たちで手がけた。
内外観ともに、ふんだんに木を使用することへこだわり、浅井さんの奥様のご実家が林業を営んでいるのと、独立して内装業を始めたばかりの義理の弟も駆けつけてくれて、木材調達を手伝ってくれた。
しかし、内装を一から全て自分たちで行うのはかなりの重労働。開店までは前の会社での勤務と並行しながらだったため、睡眠時間を削っての作業が続いたが、大変ながらも楽しい日々だったと振り返る。
「初めての内装工事だったので試行錯誤を繰り返し時間がかかりましたが、段々形になっていく過程が楽しかったですね。お互い板前なのであんまり計算が得意じゃなくて(笑)、内装工事よりメニューの値段決めのほうが悩みました」(浅井さん)

それほどまで愛されるようになった理由を自己分析すると、大里さんは〝居心地の良さ〟がポイントなのでは、と語る。
「うちらの感じが楽だから、居やすいんだと思います。料理と接客のバランスが良いというか。利き酒師でもあるスタッフがホールを担当してくれていて、彼がお客様とコミュニケーションを取るのが上手なんですよね。僕たちは基本的に調理場にいるので、お客様と密にコミュニケーションをとるホールは重要。僕たちは料理を人数分に分けて出すことに気を遣ったりして、料理で接客をするのがこだわりです。4名様だったらお刺身の盛り合わせも4つに分けるとかですね。そういうちょっとしたことの積み重ねが居心地の良さにつながって、一度来てくれたお客様の多くがリピートしてくださってるんじゃないかと思ってます」(大里さん)

店の雰囲気というのは、内装や料理も勿論だが、何より〝人〟が作り出す。
大里さんは「うちらの感じが楽だから、居やすい」と表現したが、客はその「うちら」の料理、店に対する想いに何より敏感だ。味や価格も店選びの決め手となるポイントだが、リピートするにはそれなりの理由が必要になる。そこで重要になってくるのが店の雰囲気であり、「うちら」の人となり。
お二人を拝見していると、二人の間に流れている空気感ですでに居心地の良さを感じる。多くのお客様がリピーターになるというのも納得だ。

料理、接客、店の雰囲気……総合的なバランスの良さで
多くのお客様がリピーターに

やることが山積みながらも自分たちの店に対する情熱を絶やさず、ついにオープン日を迎えた2人。特に大きなトラブルもなく、開店からひと月ほどで常連さんがついてきたり、新規予約が入るようになってきたりしたという。
「客層も現地調査の段階で予想していた通り、3~40代のお客様を中心に男女問わずお越し頂いています。ランチは女性のほうが多いですかね。反応も良く〝五反田で一番おいしい〟と言っていただくこともあります。もちろんウチの店の価格帯の中で、ということなんでしょうけど、すごく嬉しいですね」(浅井さん)

オープン後は客の様子を見ながらメニュー数を調整した。当初は豊富に揃えていたグランドメニューを徐々に厳選し、その分日替わりの黒板オススメメニューを増やして季節を追えるようにするなど、客層に合わせた店作りは怠らない。また、お客様からのリクエストには出来る限り応え、大里さんがふぐ免許を持っていることからふぐ料理のオーダーもあるという。
7月のオープン以降、年末頃には当初の予想よりお客様が入るようになってきた。予約が入っていない日も満席になる日が増え、近所のお客様が遅い時間から来てくれることも多い。
「中には1日3回来店される常連さんもいます。ランチ、夜、一度帰ってまた来る、みたいな(笑)。それが週5回とか続くこともあって。本当にありがたいですよね」(浅井さん)

共同経営は時としてメリットと同じくデメリットもつきまとう。飲食店経営の場合は特に、可能性は拡がるがリスクも増えると危惧されがちだが、大里さんと浅井さんは徹底的な役割分担ができているからこそ共同経営で良かったと言う。
「お互いタイプが違うので、得意なところと不得意なところを補えるんですよね。彼が嫁で、僕が旦那みたいな感じだと思います(笑)。ひとりだとさぼっちゃうところを相方がいると〝あいつが来てるんだからやらなきゃ〟という張り合いがあるので頑張れる。一人だったら開業できてないですね」(大里さん)
「彼は何でも率先してやるんですよ。料理も掃除も気になったことはガンガンやる。それは自分にはないところなのですごく助かってますね。周りからは〝共同経営はやめたほうがいい〟って言われるんですけど、僕は2人でやったほうがいいと思います。もちろんメリットは減るかもしれない。でもその分次に挑戦しやすいですよね。店舗を増やしたいと思ったら、今うちらが一人ずつに分かれればできるじゃないですか。一人だとすぐには無理だし、売上が良くて店舗を出したいのに人材不足であきらめている人もいるので。経営に関しては何でも話し合える環境を作るようにしています。我慢するより言い合えるほうが大事ですよね」(浅井さん)

そして、共同経営を始めるにあたり大里さんからのこんな一言に突き動かされて決断できたという浅井さん。
「〝仮に失敗したら、車1台失くした程度で済む〟って言われたんですよ。車って平均的に4~500万くらいで買うじゃないですか。今回の開業はお互いそれくらいの金額を出し合って始めたので、確かに失敗しても車1台なくなったくらいじゃ大したことないかなって。1人で始めたら1000万負債を抱えるところを、半分だったら頑張れば何とかなるかな、それが共同経営のメリットだとすごく腑に落ちたんです」(浅井さん)
夢を膨らませるような誘い文句ではなく、リスクを負うことを踏まえた上での冷静な一言。主張しあうだけではなく、補いあう関係を築けるかどうかが成功へつながっているのかもしれない。

夫婦のように役割分担できる〝相方〟だからこそ
周囲に反対されても共同経営を選んでよかった

今後開業を目指す人達へのアドバイスを聞くと、夫役の大里さんはこう答えてくれた。
「〝仲が良ければ〟2人でやるのはおすすめです。あくまでも仲が良ければ、ですね(笑)。うちらは代表者をじゃんけんで決めたんですけど、それに納得できる関係性だからこそ一緒にできるのかなと思います。だから、じゃんけんで代表を決められるような相手だったら、2人でやってもうまくいくんじゃないですかね(笑)」(大里さん)
この言葉から、友達以上のパートナーとして、共同経営者として、お互い対等な関係を維持するための見えない努力がひしひしと伝わってきた。
そんな2人でも、ひとつだけ相談なしにお互い好きなようにしていることがあるという。
「料理のラインナップだけはお互い作りたいものを自由に作ってるんです。そこは一切相談なし(笑)」(浅井さん)
お互い料理人だからこそ、自分の料理に妥協したくない、その熱意を誰かに妨げられたくない。その気持ちをお互いが誰よりもわかっているから、相手の料理に一切口は出さない。
経営者同士である前に料理人同士が作る店。全てにこだわりがつまったこの店には、ますますリピーターが増えるだろうと確信した。
(取材日:2017年3月27日)

浅井 圭太郎さん&大里 大輔さん

オーナー 浅井 圭太郎さん(右)
1981年、埼玉県生まれ。専門学校卒業後、神田明神の式場レストランで修業後、焼き鳥屋、神楽坂のミシュラン二つ星店などを経験。その後、飯田橋の人気店で活躍。

オーナー 大里 大輔さん(左)
1980年、千葉県生まれ。専門学校卒業後、飲食業界へ。表参道の懐石料理屋など数店舗で料理長を務める。野菜ソムリエ、ふぐ調理師の資格を持ち、独創的な料理が特徴。
(以前お2人が同じ和食店に勤務していた際に意気投合し、今回共同経営で新規開業に至る。)

瀬戸内朝採れ鮮魚と酒菜 蒼
住所:東京都品川区西五反田7-7-2 エスティメゾン1F
TEL:03-6431-8869
営業時間:ランチ 月~金 11:30~14:00(13:30LO)/ディナー 月~土 17:00~23:00
定休日:日・祝
店舗情報:食べログぐるなび