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今、飲食店を悩ませる無断キャンセル。その予防策とは

今、飲食店を悩ませる無断キャンセル。その予防策とは

飲食店にとって「予約」とは、その日のお客様の入り状況を把握でき、事前に必要な食材や人員の確保ができるため、とてもありがたいシステムだ。
最近は、グルメサイトやSNSで簡単に飲食店の予約ができるようになり、予約をする客側にとっても、予約を管理する店側にとっても便利な世の中になってきた。スマートフォンさえあれば店の予約がいつでもできる手軽さから、予約が入りやすくなっているという面では店側のメリットも大きいだろう。

しかし飲食店にとっては、いいことばかりというわけでもないのが現状だ。
昨今、予約につきまとうキャンセル問題が、飲食店オーナーを悩ます大きなトラブルへと発展しているからだ。中でも「無断キャンセル」は、飲食店にとって最もダメージの大きいトラブルの一つだろう。
今回は、その原因や予防策、そして法的措置などについても触れながら、昨今、飲食店を悩ませている「無断キャンセル」について考えてみたい。

ドタキャンよりもたちが悪い、「無断キャンセル」とは


土壇場のキャンセルのことを「ドタキャン」というが、予約に備えて準備をしている店側にとってギリギリになってキャンセルの連絡が入ることは、迷惑極まりないことだ。でも、それよりももっとたちが悪いのが「無断キャンセル」だろう。
無断キャンセルとは、予約をしたにも関わらず、何の連絡もないまま店に現れないことをいい、別名、「NoShow」、「ブッチ」、「バックレ」などとも言われている。
つまり、無断キャンセルに比べれば、ドタキャンは連絡が入るだけまだマシということになるのだ。

無断キャンセルの場合、店側は、来るか来ないかもわからないお客様を最後まで待ち続けなければならず、みすみすその分の売り上げの機会を逃してしまうことになる。
飲食店は、いかに効率よく席を埋めるかで利益を計上している箱もの商売だけに、空席を空席のまま開けておくということが経営上よくないというのは誰もが簡単に理解できるだろう。
その上、用意した食材はすべて無駄になってしまうため、団体客であればあるほどその損失は大きくなる。さらに団体客に備えてアルバイトの増員などをしていれば、その人件費もばかにならないのだ。

 

無断キャンセルの現状。お隣 韓国でも社会問題化!?


最近では平昌オリンピックでも、この無断キャンセル問題がメディアを賑わせていた。会場周辺の飲食店で、団体客の無断キャンセルが相次いだのだ。
実際に被害にあった飲食店では、連絡もなく25人分の予約がキャンセルされ、他にも一切連絡がない客や電話をしても出ない客が続出したという。そのため、この店ではなるべく予約を受け付けないことでリスクを最小限に抑えるという対策がとられた。

同じように、日本でも毎年忘年会シーズンになると飲食店の無断キャンセルのニュースが話題にのぼる。
昨年末、下北沢のとある居酒屋が、ある学生団体130人の無断キャンセルにあった事件は、ネット上でも様々な意見が飛び交っていた。この店の席数は140席で、ほぼ貸し切り状態での予約だったという点も事態を深刻にさせた原因の一つだ。
当日、約束の時間を過ぎても姿を現さない客に不安になった店主が電話をかけてみると、「すみません、じゃあキャンセルで」という答えが返ってきたそうだ。なんでも、他の店を予約していて、キャンセルするのを忘れてしまっていたとのこと。

この無断キャンセルで店側が被った損害は、食材の原価だけでも10万を超えていたというが、店主は「近隣の方なので、お金をいただくより長期的に利用していただくほうが今後のためになる」と判断し、法的措置はとらなかった。
無断キャンセルをした学生も、その後きちんと謝罪に訪れ、誠意ある対応を見せてくれたこともあり、今後も“長いお付き合いを”ということで和解したそうだ。
この店の店主は、今回のような大規模な予約の場合は特に、事前連絡が重要だったと感じたという。
しかも、これだけの大人数の予約だったため、ネットや電話だけでなく、直接顔を合わせて打ち合わせの機会を設けてもよかったと、自らの行動を反省していた。

無断キャンセルが起こった際に、店側がどういう態度をとるのがベストかは、被害状況や相手の対応によっても変わってくるだろう。
この店の場合、争うことよりも今後の付き合いを重視することで、店のあり方を貫いた。そしてその後も学生たちは店を利用してくれているのだから、その判断は間違っていなかったのだろう。

 

悪気はないが、マナーに問題あり? 無断キャンセルの原因とは

それでは、どうしてこのような無断キャンセルは起こってしまうのだろうか。考えられる理由をいくつか挙げてみたいと思う。

1 予約したことを忘れていた
2 うっかり予約日を取り違えていた
3 複数の店に仮予約のつもりで予約し、ついキャンセルの連絡をするのを忘れていた
4 体調不良や、何らかのトラブルなどに巻き込まれ、連絡したくてもできなかった
5 ギリギリになってキャンセルと伝えるのは気が引けて連絡しなかった

ちなみに、予約台帳管理システムを販売する(株)Tablecheck(旧VESPER)の2018年の調査によると、無断キャンセルをしてしまう理由のトップは、1位「複数飲食店をとりあえず予約した」、2位「予約したことをうっかり忘れていた」、3位「人気店だからとりあえず予約を入れて確保した」となっている。

上記のように、無断キャンセルには複数の理由が考えられ、しかもその大半がうっかりミスだったり、体調不良だったりと、悪気のあるものではないようだ。
また、飲み会の幹事が仮予約のつもりで “とりあえず“と安易にいくつもの店を予約し、キャンセルし忘れてしまうというケースも多い。
このことからも、無断キャンセル問題には、予約をする側のマナーやリテラシーの低さの問題が深く関わっていることがわかる。

 

無断キャンセルを減らすための予防策


では、無断キャンセルのリスクを最小限に抑えるために、飲食店がすべき対策とはどんなことだろうか。
下記に、無断キャンセルに備えて飲食店が普段から行っておくべきことを、いくつか挙げてみたいと思う。

予約を受ける際の注意点は、正確な情報を聞く

電話予約を受けるときには、お客様の正確な情報を聞くようにする。名前はもちろんフルネームで、日中つながりやすい電話番号も忘れずに聞くことが大切だ。
もしも会社の忘年会などで大人数の予約が入った場合などには、会社の直通の電話番号も聞いておくと安心だろう。聞いた内容については必ず復唱し、間違いがないかも確認しよう。
また、WEB上に申し込みフォームを設けて予約を受け付ける場合は、必要事項に会社名と会社連絡先をいれておくとよいだろう。

そして、予約を受けた後の予約台帳の管理も忘れずに行いたい。
台帳には、いつ、誰が、どの予約を受けたかを記録し、予約日時、名前、連絡先、そのほか特記事項などを明記しておく。そうすれば、万が一店側のミスで予約日を取り違えてしまうというトラブルも未然に防ぐことができるだろう。

事前の予約確認をしっかり行う

予約が確定したら、リマインドの意味も込めて事前の予約確認もしておきたい。
事前確認は、一週間前と前日の二度行えばより安心だ。メールだと気づかない場合も多いため、携帯のショートメッセージ機能などを利用して連絡するのもよいだろう。
また先に述べた下北沢の例のように、大規模な予約の場合は、一度顔を合わせた打ち合わせの機会を設けておくのもおすすめだ。

あらかじめキャンセル料を明確にしておく

また、最近ではあまりに頻発する無断キャンセルのせいか、キャンセル料を定める飲食店も増えてきている。
万が一のことも考え、あらかじめホームページなどにキャンセル料について明記しておくことも大切だ。電話予約などの際には、ひとこと付け加えるとキャンセル抑止にもつながるだろう。

丁寧な対応を心がける

そして忘れてはいけないのが、飲食業はサービス業であるということだ。予約受付時などには、忙しいからといって雑な対応をしてしまわずに、なるべく丁寧な対応を心がけたい。
対応が丁寧であれば店への親近感も沸き、客側にも「キャンセルしたら悪いな…」という心理が働くようになるものだ。
そういう意味でも、普段からお客様にお店をより身近に感じてもらえるような対応を心がけ、親しみを持ってもらうことが、無断キャンセルを減らすための近道といえるのかもしれない。

無断キャンセルで損害賠償は請求できる?

つい最近もテレビの法律相談番組で、タレント業の傍ら飲食店経営も行うはるな愛さんが、無断キャンセルの被害にあったことを明かしていた。その際、「もしも訴えていたらいくらもらえたのか?」と弁護士に質問する場面なども見受けられた。
実際、もしも無断キャンセルの被害にあった場合、店側は賠償金を請求することができるのだろうか…。

その答えは、「賠償請求はできる」だ。
しかし、いくらの損害を受けたかを立証するのは、非常に難しいと言える。また予約時に聞いた名前や連絡先が必ずしも本物であるとは限らないため、請求相手を特定できるか否かも問題となってくるのだ。
何より、今後も店にきてくれる可能性がある潜在的なお客様に対して、あまり強い態度にでられないという飲食店オーナーの本音もあるだろう。
そのため数名の無断キャンセルで賠償請求するというケースはあまりみられない。しかし大規模な団体客で、あまりにも被害が甚大な場合などには、法的措置も考えてみてもよいのかもしれない。
そういう時のためにも、普段から予約時の内容確認と予約台帳の管理は、徹底して行っておくことが大切だ。

 

まとめ

飲食店にとってたくさんの予約が入ることはとてもありがたいことだが、その一方で無断キャンセルやドタキャンといった、キャンセルによる被害も見過ごすことのできない問題になっていることが、わかっていただけたのではないだろうか。
今回のような無断キャンセルは昨今多発しており、店側の損害金額は国内全体で約2000億円ともいわれているほどだ。そして無断キャンセルは、食品廃棄の問題とも決して無縁ではない。

今や深刻な社会問題となりつつある無断キャンセルだが、回避するためには、これまでに述べた対策をとりいれつつ、できる限り予防をしていくしか方法はないのかもしれない。
救いは、最近ニュースなどでも取り上げられるようになり、この問題が可視化されつつあるということだろう。メディアを通じて多くの人がこの問題を共有することで、客側のマナーやリテラシーの向上へつながっていくだろう。
そうすることで、結果的に飲食店オーナーの苦労が少しでも和らいでいけばよいと切に思う。

 

 

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