開業を目指す個人事業者の方、必見!必要な届け出や手続き、進め方を業種ごとに解説
「個人事業をはじめたいけど、開業手続きがどのようなものか分からない」。こうしたお悩みをお持ちではありませんか? 業種によっては開業届以外にも必要な手続きがあり、どこに何を申請すればいいのかで悩まれる方も多いでしょう。そこでこちらでは、開業に関わる手続きや、用意すべき書類を業種別でご紹介します。事業をスムーズにスタートするために、ぜひ参考にしてください。
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職業ごとの開業手続き
個人事業を行う場合には、事前に税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書(以下、開業届)の提出が必要です。
未提出のままでも罰則はありませんが、法律で定められているほか、確定申告時に青色申告が可能となり控除が受けられます(青色申告承認申請書の届け出が必要)。
また、後から従業員を雇い入れる場合には、税務署へ給与支払事務所等の開設届出書の提出が必要です。
なお、業種次第では用意すべき書類や手続きがあります。以下からは、いくつかの業種を例に、開業手続きの流れや必要手続きについて解説します。
飲食店の開業手続き
飲食店を開業するためには、税務署に開業届を提出しなくてはなりません。また、従業員を雇い入れる場合は給与支払い事務所の開設届も必要です。
加えて、保健所から飲食店営業許可を得なくてはなりません。取得のためには、以下の資格を持つスタッフの在籍が必要です。
〈飲食店開業に必要な資格〉
食品衛生責任者
防火管理者
なお、スナックや深夜営業のカフェ・バーについては上記のほかにいくつかの手続きが必要です。
スナックの開業手続き
喫茶店・カフェの開業手続き
美容室(トリミングサロン)の開業手続き
美容室では、国家資格が求められるサービスの提供が行われます。
そのため開業時には税務署へ開業届を提出する以外に、保健所からいくつかの書類提出が求められます。
<保健所への申請手続きの流れ>
1. 着工前に事前相談をする
2. 開設届を提出する。この際、以下の添付書類を用意する
・施設の構造設備概要
・施設の平面図
・施設付近の見取り図
・従業員一覧
・従業員全員の美・理容師免許、管理美容師の修了証
・従業員全員の医師による診断書
3. 保健所の立ち入り検査を受ける
クリニック(歯医者含む)の開業手続き
クリニックを開業する際には診療所開設届が必要です。なお、院内レイアウトなどに指導が入るケースが多いため、着工前に事前相談を行いましょう。
また、保険医療機関指定申請書の申請には期限が設けられています(原則毎月1日付け)。申請受理後、すぐに開業するために、締め切り日をチェックしておきましょう。
〈主な届出・手続き〉
保健所へ診療所開設届を提出する。必要に応じて以下の書類も用意する
・診療所開設届
・診療所使用許可申請書 ※有床の場合
・診療用X線装置備付届
・麻薬管理者・施用者免許申請書
・結核予防法指定医療機関指定申請書
厚生局へ保険医療機関指定申請書を提出する
福祉事務所等へ生活保護法指定医療機関指定申請書を提出する
地区医師会へ母体保護法指定医師指定申請書
労働基準監督署へ労災保険指定医療機関指定申請書
接骨院・整体院・鍼灸の開業手続き
整体院の開業手続きは、主に税務署への開業届のみです。
一方、医業類似行為に分類される施術や、保険を取り扱う事業(柔道整復師や鍼灸師など)には国家資格が必要です。
この場合、税務署だけでなく保健所などへの届け出が必要です。
〈整体師として開業 〉
税務署へ開業届を提出する
施術内容によっては各種届出が必要になるため事前に確認する
マンションなどの一室で開業する場合は管理会社や大家さんへ事前確認を行う
〈接骨院の開業手続き 〉
施術所開設届を国家(地方)公務員共済組合連盟、もしくは防衛省へ提出する。この際、申請書・柔道整復師免許のコピーが必要
保健所へ施術所開設届けを提出する。この際、以下の添付書類が必要
・柔道整復師免許証のコピー ※原本も持参
・身分証明書
・施設の平面図
・周辺地図
・施術所が賃貸の店舗賃貸契約書のコピー
※管轄の保健所によって必要書類が異なる場合があります。事前にご確認ください
税務署へ開業届けを提出する
〈鍼灸院の開設手続き 〉
保健所への開業届を提出する
税務署への開業届を提出する
都道府県税務署への開業届を提出する
※出張専門業務の場合は、「出張専門業務開始届」を提出する
民宿・旅館の開業手続き
旅館業には「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4種類があります。主に和式の構造・設備でつくられた民宿・旅館は、このうちの「旅館営業」に該当します。
旅館営業を開業するためには、都道府県知事による許可が必要になります。以下は、開業に向けた大まかな流れです。
〈旅館業に必要な手続き〉
1. 施設・申請者が条件を満たしているか確認する
2. 旅館業営業許可申請書を提出する。この際は、以下の添付書類が必要
・構造設備概要
・施設の図面
・消防法令適合通知書
3. 保健所による施設調査を受ける
なお、施設内で飲食店を開業する場合には「飲食店営業許可」が必要となり、食品衛生責任者の有資格者を持つスタッフを1名在籍させる必要があります。
軽貨物の開業手続き
請負の業務委託など、軽貨物運送業を開業するためには個人事業主として開業届けを税務署に提出する必要があります。
必要なのは身分証と印鑑のみ。なお、屋号を記入する欄がありますので、事前に決めておくと銀行口座開設などがスムーズです。
また、青色申告承認申請書を提出し、青色申告を行うと控除が受けられます。節税にもつながりますので、ぜひ申請しましょう。
レンタカー の開業手続き
レンタカー業を開業するためには運輸支局へ「自家用自動車有償貸渡許可申請」の提出を行います。以下の添付書類が必要となるため、事前に用意しましょう。
<用意する書類一覧>
貸渡料金表
貸渡約款
個人事業主の住民票
宣誓書
事務所別車種別配置車両数一覧表
貸渡しの実施計画を記載した書類
申請後、運輸局による審査が行われます。許可が取得できたらレンタカーの車両登録を行い、基本的な手続きは完了です。
薬局(調剤薬局)の開業手続き
医薬品の小売形態は「薬局」「販売業偉業」「薬種商」「その他」の4つに分けられ、薬剤薬局は「薬局」に分類されます。
開業には所在地の各都道府県知事から許可を得る必要があり、以下の申請手続きが必要です。
〈開業に必要な手続き〉
1. 着工前に保健所へ店舗のレイアウト図面等を持参し、構造設備について相談する。
2. 薬局許可申請書と参考様式薬局開設許可申請を提出する。この際、以下の添付書類を持参する。
・店舗の平面図
・調剤及び調剤された薬剤の販売又は授与の業務を行う体制の概要、医薬品の販売又は授与を行う体制の概要
・申請者の診断書 ※診断後3カ月以内
・薬剤師免許証の写し
・販売従事登録証の写し
・雇用証書
3. 保健所の立ち入り検査が行われる
ホテルの開業手続き
旅館業の開業は、運営形態によって異なる許可の申請が必要です。
10室以上の洋式客室が主体となるホテルは「ホテル営業」にあたり、各室にシャワー室やトイレを設置する必要があります。
<ホテル開業までの流れ>
1. 施設・申請者に問題がないかを確認する
2. 旅館営業許可申請書を保健所へ提出する
3. 保健所の施設調査を受ける
なお、旅館営業許可の提出時には「建築基準法に基づく検査済証の写し」と「消防機関が発行する消防法適合通知書」の添付が求められます。
加えて、ホテルで飲食店を営業するのであれば開業届けが必要です。
リラクゼーション・エステサロンの開業手続き
リラクゼーション・エステサロンを開業する場合は、税務署へ開業届けを提出する必要があります。
多くの場合、手続きはこの1点のみです。しかし、国家資格が必要な施術を伴うサロンを開業する場合は、保健所への開設届が求められます。
<国家資格が必要な施術例>
美容院で提供されるメニュー(ヘアカット、カラー、パーマなど)
まつげのエクステ、眉毛カット(いずれも美容師免許が必要)
はり、きゅう
あん摩マッサージ指圧
柔道整復 など
スナックの開業手続き
スナックではアルコールの提供を行うのが一般的なので、飲食店営業許可の取得が求められます。
また、お客様の近くに座りおしゃべりをしたり、お酌をしたり、一緒に立って歌う、手拍子を打つといった行為は接客にあたります。
こうした接客を伴うスナックの営業には、風俗営業許可が必要です。
なお、カウンター越しに注文を聞いたり世間話をしたり、スタッフが一人で歌を歌ったりする行為は接客にはあたりません。この場合は、風俗営業許可の取得は不要です。
ただし、深夜0時を超えてアルコールの提供を行う場合には管轄の警察署へ「深夜種類提供飲食業開始届書」を申請する必要があります。
喫茶店・カフェの開業手続き
喫茶店の営業には税務署へ開業届を提出するほか、食品営業許可を取得する必要があります。
飲食店営業と喫茶店営業の2種類がありますが、後者は軽食(サンドイッチやパスタなど)の提供ができず、アルコールの販売もできません。
そのため、飲食店営業許可を得るのが一般的です。
食品営業許可を取得するには、はじめに地域の保健所へ申請書類を提出します。その後、保健所の検査をクリアすれば営業許可が交付されます。
なお、食品衛生責任者の資格を持つスタッフ1名の在籍が許可要件です。
また、アルコールの提供を伴う深夜営業を行う場合には、管轄の警察署へ「深夜種類提供飲食業開始届書」を提出する必要があるのでご注意ください。
個人塾(教室)の開業手続き
学校法人と違い、個人塾についてはとくに必要となる資格はありません。お料理教室や自宅教室なども同様。あくまでもサービス業の位置づけとです。
一方、事業をはじめるわけですから税務署への開業届は必要です。手続きに必要となるのは身分証と印鑑のみ。届出書1部を税務署に提出してください。
なお、屋号の記入欄がありますので、塾名・教室名を事前に決めておくのがおすすめです。
まとめ
個人の企業では、税務署に対して開業届を提出する必要があります。
加えて、業種によっては保健所や各種関係機関への申請が必要となるので、あらかじめ確認しておきましょう。
とくに国家資格を求められる事業については事前相談や複数の添付資料が必要になります。スムーズな開業のために、事前準備を進めてください。
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