意を決して脱サラ開業
旧友と手に入れた、飲食業界への第一歩
オフィス街、繁華街として知られる五反田。西口を出て、目黒川を越えたあたりまで来ると、駅前の喧騒は少し落ち着いてくる。オフィスビルが建ち並ぶ「桜田通り」から西に2 本はいった裏通り、中小のオフィスや古くからの住宅に周りを囲まれた穏やかなエリアに、薄緑色の建物がある。その一階に、2016 年11 月から店を構えているのが、六本木、新宿、池袋、新橋に店舗をもつ、「ステーキてっぺい」の五反田店だ。
“ミートソルジャー” こと寺門ジモンさんも愛してやまないこの店は、氏が主催するグルメ祭りにもミシュラン獲得店と肩を並べて出店する名店で、なんと創業は昭和50 年。 “知る人ぞ知るステーキ店” として日本の飲食業界において確固たる地位を獲得している。そんな「ステーキてっぺい」を、ここ五反田にフランチャイズ(以下FC)でオープンさせたのが、中学から大学まで同じ学校だった旧友同士の飯沼隆光さんと中江賢士朗さんだ。
飲食業界での経験は学生時代のアルバイトのみというお二人は、大学卒業後それぞれ大手企業で社会人経験を積んでいた。飯沼さんは車のディーラー、中江さんは、営業や管理に近い仕事で研鑽を積む中、会えば、学生時代からの共通の夢「飲食店開業」について語り合っていたそうだ。
そんなお二人が、夢を実現するため会社を辞めたのが2016年4月 のこと。そこから、決して平坦ではないが、希望に満ちた開業への道のりが幕を開けた。当初は、飯沼さん、中江さんの他に、夢を共有したもう一人の友人がいたそうだ。しかし「この話にはやっぱりのれない…」と、その人は途中で降りてしまう。もともと車のディーラーで、接客のプロでもあった飯沼さん、日常的に数字を扱い、管理のプロでもあった中江さん、そして調理のプロだったもう一人の友人と、三人が集まることで最高のチームができるはずだった計画は、調理面の技術を支える存在がいなくなってしまうことで、一時的に迷走してしまうことになる。