開業者インタビュー

雰囲気抜群の隠れ家ワインバル “自分らしさ”が個人店成功の鍵

荻谷 敏明さん
雰囲気抜群の隠れ家ワインバル “自分らしさ”が個人店成功の鍵

祖師ヶ谷大蔵の味な路地裏
アンティークと和要素が融合した趣あるワインバル

「ワイン食堂 オクノカド」は小田急線・祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩5分。車道からクイッと入った路地の先の、文字通り奥の角っこに開く小さなワインバル。味ある小料理店のような格子の引き戸と、店名を配した白の大きな暖簾が目印だ。

中に入ると、洋のアンティーク家具と和の古道具が絶妙に配置された洒落た内装に意表を突かれる。雰囲気あるカウンター席とテーブル席の奥には、隠れ家風の個室も。オモチャ箱のような空間に、実際に小学校で使われていたという小さな子ども椅子がかわいらしい。

店主の荻谷さんは、メディア関係のビジネスマンから一念発起、2014年6月28日にこの店をオープンした。地元で高い人気を誇る地域情報誌『世田谷ライフマガジン』(枻出版社)やテレビなどでも取り上げられ、訪れる人がたえない繁盛店の成功の秘訣を荻谷さんにインタビューした。

めちゃ売れたのに収益ほぼナシだった開店当時
原価計算はプロなら必須!

荻谷さんの実家は吉祥寺の寿司店。小さい頃から飲食の世界に馴染み、会社員をしながらも「いつかは自分も店を」という思いを抱いていたという。京都好き、ヨーロッパ好きの荻谷さんが思い描いていたのは、和と洋が融合した魅力的な空間。本格的に開業に乗り出してからは、50を超える駅を訪ねて、「これぞ」という物件を探し歩いた。

祖師ヶ谷大蔵は自宅から通いやすかったということもあるが、何より気に入ったのは、ロケーションと物件そのもの。「この立派な欄間のついた入り口を見て、『あ、これこれ』って。座敷もナイス。京都の先斗町界隈なんかにある、石畳とフレンチのちょっと違和感あるけど魅かれる組み合わせのような。店に踏み込んだとき、そんな内装が自分でイメージができた」。

未経験からの脱サラ開業だったが、メディアに掲載されたこともあり、オープン当初から店は大繁盛に。2ヶ月目の来店数は580人を超えた。しかし売上を集計して荻谷さんは愕然とした。手元にほぼ利益が残らなかったからだ。「横須賀まで車を飛ばして鮮魚や鎌倉野菜を調達。もちろんお客様は喜んでくれたけど、収益を見たら10万円。要するにこれでは単なる料理好きな人」。

この出来事によって、商売ベースできちんと原価計算することの大切さを思い知ったという。適切な予測を助けてくれたのは、ある人から譲り受けた原価計算表。「開業前、軽井沢のオーベルジュにいる野菜の達人といわれるシェフに会いに行った。そこでシェフが『これ使いなよ』と気前よくくれたのがこの計算表。売上が出なかったとき、慌ててそれを引っ張り出してきて、以降はそれを書かないとメニューには載せない、というマイルールを設けています」。

食べ歩き研究がライフワーク!
目標はどこにもない「目玉商品」づくり

このような苦い失敗もあったが、開店以来、お店は好調。種類豊富なワインに、30~40種を数える荻谷さんの独創的でインスタジェニックな料理が人気の理由だ。「お客様に楽しんでほしいので、ワインリストもフードメニューも四半期ごとに頻繁に変える。最近好評なのが、雑誌にも掲載された『お野菜とチキンのラクレットチーズがけ』。小さな鍋でラクレットを温め溶かし、お客様の席でとろりとおかけします」。バーベキューポーク、味噌漬け牛ステーキ、ラザニアなどメニュー更新を生き抜いた定番メニューたちの人気も堅い。

いま一番の課題となっているのは、店の目玉となる“看板商品づくり”だという。「1個だけでいいので、何かどーんというのが欲しいですね。この店ならコレ!という」。そのために欠かさないのが、食べ歩きによるメニュー研究。「飲食の人はとにかく勉強しないと。先輩たちからも口ぐせのように『食ってるか?』と聞かれます。都内は全域、大阪・京都もよく行きます。食べすぎて10kg太って体調をこわしてしまったことも(笑)。飲食とは別のトレンドを掴むことも大事。新聞は全紙に目を通すなど感覚を鈍らせないようにしています」。

小規模店舗でキャパに限界があるため、熱心な研究をもとに、第2店目の計画も進行中。「場所は吉祥寺や西荻、奥渋あたりで。今度は“豚”というワンアイテムで勝負。飲食のマーケティングでよくいわれるのが、人は7つ以上のものを並べられると選べなくなる。なので6メニューくらいに絞った、テーマ店の趣向です」。来るべきオリンピックによる外国人需要も狙っていきたいと語る。

とにかく自分らしいことをやること
人の真似をしても失敗する

荻谷さんの店は深夜1時に閉店で、片付けが終わるともう2時過ぎ。飲食業がこれほど体力を使うものだとは正直思わなかった。しかし、お客様や同業の友達も増え、とても楽しく充実した毎日だという。「子どもの頃、たまに実家の寿司屋に遅くまでいると、夜11時ころからみんなで水掃除をするんです。自分の店で初日の夜に同じことをしたとき、『あぁ、俺がやりたかった仕事はこれだったんだなぁ』って感動して。自分の中にある親父の血を感じましたね」。

開業して嬉しかったのは、来店した知人が「すごい、お前そのものだ。だからお客さんが来るんだ!」と言ってくれたこと。これから開業する人に向けても次のように語ってくれた。「飲食店がうまくいくには、“自分らしいこと”をやること。人の真似をしても板についてないから絶対失敗する。自分起点の店は、軌道修正もしやすいし、アイディアが枯渇することもない。お店は自分らしさを表現するのが一番いい。そう思います」。
(取材日:2017年6月8日)

荻谷 敏明さん
1963年、東京都生まれ。メディア系の仕事で長年活躍の後、まったく異業種の飲食業にチャレンジ。2014年、祖師谷大蔵に『ワイン食堂 オクノカド』をオープン。
アンティークと和テイストが融合した味ある雰囲気のなかで、オーナー自慢の厳選素材の料理とワインを楽しめる店として好評を博している。

ワイン食堂 オクノカド
住所:世田谷区祖師谷3-1-17 1F
TEL:03-5429-1122
営業時間:18:00~翌1:00(L.O. 0:00)
定休日:日曜日
店舗情報:Facebook食べログ


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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