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飲食店を開業してお酒を提供するには免許が必要?「酒類販売業免許」が必要な場合と申請時のポイントを解説

飲食店を開業してお酒を提供するには免許が必要?「酒類販売業免許」が必要な場合と申請時のポイントを解説

飲食店を開業する場合、事業計画や物件探し、資金調達など数多くのステップが必要となりますが、意外にも手間のかかる準備が営業開始に必要な資格取得と申請手続きです。

特に、居酒屋やBARなどのお酒を取り扱う飲食店は、他の飲食店よりもルールが複雑化しており、店舗の営業方法や条件によって必要となる手続きが異なります。

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飲食店でお酒を提供する場合に手続きは必要?

国税庁のホームページでは、「酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場で飲用に供する業を行う場合には、販売業免許は必要ありません」と記載してあります。

つまり、メニューの一つとして店内でお酒を提供する場合、必要となる資格・免許、申請手続きはありません。

ただし、「食事として店内で飲ませる」場合に限ります(※コップに注いで露店販売する場合は可能)。

ビンやボトルのお酒をテイクアウト販売したり、顧客が飲み残しを持ち帰ったりする場合には、「酒類販売業免許」が必要です。
また、深夜0時から午前6時までの間に酒類を提供して営業を行う場合には、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要となります。

こちらでは、あまり知られていない「酒類販売業免許」について詳しくみていきます。

「深夜酒類提供飲食店営業開始届」については
こちらの記事をご参照ください。
https://www.abc-tenpo.com/contents/knowhow/10467.html

「酒類販売業免許」とは

「酒類販売業免許」とは、「酒販免許」ともいわれる酒類の販売を行うために必要な免許のことで、酒税法によって規定されています。

ビアホールや日本酒バーなど特定のお酒をウリとする飲食店であれば、店内での提供に限らず持ち帰り販売を検討している方も多いかと思いますが、この酒類販売業免許の取得にはいくつかの要件が必要であり、許可が下りないケースも稀ではありません。

具体的に許可が下りない理由としては、飲食店営業スペース内に酒類を陳列し、同じ会計場所を使って商品と代金の受渡しをすることが認められないことがあげられます。

酒類販売免許の種類

酒類販売免許には、「小売免許」「卸売業免許」の2種類があります。

小売免許

小売免許とは、酒類を小売店等で販売する場合に必要な免許になります。
小売店で酒類を購入する消費者、料理店の営業者で酒類を小売で扱う者、お菓子の製造業者などに対し、継続的に酒類の小売販売を行うことを認める免許になります。

卸売業免許

卸売業免許とは、酒類販売業者・酒類製造業者に対して、継続的に酒類の卸売販売を行うことを認める免許です。

これら2つの免許は、販売方法やお酒の種類、販売先などに応じて細分化されていますが、中でも、飲食店での販売に関係する「小売免許」の区分けについて細かくみていきます。

小売免許の区分

小売免許には、「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」の2種類の区分があります。

一般酒類小売業免許

一般酒類小売免許とは、小売免許の中で通信販売を除いた全ての品目の酒類を小売できる免許のことを指します。
この免許は、店舗において接客をする業者、つまり酒類を取り扱う居酒屋や料理店などの飲食店などに対しての許可です。

通信販売酒類小売業免許

通信販売酒類小売業免許とは、2都道府県以上の広域な消費者を対象とした通信販売によって酒類を小売するための免許です。
通信販売、つまりインターネットやカタログ、郵便や電話での販売についての免許になります。
通信販売酒類小売業免許は、上記の一般酒類小売業免許と違って、全ての品目の酒類を小売できるわけではありません課税移出数量が3,000キロリットル未満であることや、地酒など小さな製造上で製造された日本産の酒類、または輸入酒しか扱えないなどといった規定があります。

以上より、飲食店が持ち帰りを目的とした酒類を販売する場合には一般酒類小売業免許が必要ということになります。

飲食店での販売に必要な「一般酒類小売業免許」の取得要件

一般酒類小売業免許を取得するためには、以下全ての要件を満たす必要があります。

一般酒類小売業免許の取得要件
人的要件 場所的要件
経営基礎要件 需給調整要件

万が一、これらの要件を満たすことなく不正行為により免許を取得した場合には、その不正行為によって取得した免許だけでなく、その者が保持している酒類の販売業免許すべてが取消になることがあります。また、免許の取消処分を受けた場合、取消処分を受けた免許者およびその者が役員となっている法人は、原則として新たに免許を取得することはできなくなりますのでご注意ください。

ここからは、それぞれの要件について詳しく解説していきます。

人的要件

人的要件では、販売者や販売会社の役員等が取消処分や刑罰等を受けていないかをみられます。この要件に該当する者は免許取得ができないというです。

■酒税法の免許やアルコール事業法の許可を取り消されたことがない
■法人の免許取り消し等前一年内に業務執行役員であったもので当該取り消し処分の日から3年経過していること
■申請者が未成年者または成年被後見人、被保佐人もしくは被補助人であって、その法定代理人が欠格事由に該当していないこと
■申請者又は法定代理人が法人の場合で、その役員が欠格事由に該当していないこと
■支配人が欠格事由に該当していないこと
■免許の申請前二年内に、国税又は地方税の滞納処分を受けていないこと
■国税・地方税に関する法令、酒類業組合法、アルコール事業法の規定により罰金刑に処せられ、または国税犯則取締法等の規定により通告処分を受け、刑の執行を終わった日等から3年経過していること
■未成年者飲酒禁止法、風俗営業等適正化法(未成年者に対する酒類の提供に関わる部分に限る)、暴力団員不当行為防止法、刑法(傷害、暴行、凶器準備集合、脅迫、背任等に限る)、暴力行為等処罰法により、罰金刑に処せられ、刑の執行を終わった日等から3年を経過していること

場所的要件

場所的要件では、酒類を販売する場所として適切か否かが判断されます。飲食店で酒類を販売する場合には、飲食店スペースとは別に販売場を設けることが必要となります。この販売場は、酒類販売における受発注業務や帳簿を備えつけるスペースを指しており、必ずしも棚などに酒類の陳列されない場合にも該当します。

■申請販売場が酒類の製造場、酒類の販売場、酒場、旅館、料理店等と同一の場所でないこと
■申請販売場における営業が、販売場の区画割り・専属の販売従事者の有無・代金決済の独立性その他販売行為において、他の営業主体の営業と明確に区分されていること

上記の要件をわかりやすく説明すると、以下の通りです。

一つ目は、飲食店スペースと酒類の販売場所は明確に分けなければならないということ。具体的に、内装工事を行う場合には、壁や扉で仕切る、フロア(階数)を別にするといったことが必要になります。

また、店内の飲食スペースで提供する酒類と販売用の酒類とでは、仕入れも保管場所も別にしなければいけません。飲食店提供用の酒類は一般酒類小売業免許業者から、酒類販売用の酒類は酒類卸売業者から仕入れ、納品伝票は別々に。もしもどちらかの在庫が足りなくなった場合には、伝票上返品扱いにして、購入し直すなどの処理を行う必要があります。(※仕入先業者が小売、卸売と両方の免許を持っている場合は同じ業者から仕入れても問題ありません)

さらに、酒類の仕入販売において記帳義務があり、飲食店での酒類提供用酒類とは別に帳簿を作成記帳のためのスペースも確保しなければならず、閉店時に客室テーブルを使用するのは認められていません。

二つ目は、飲食の会計場所と商品販売の会計場所を別にしなければならないということ。ここで注意すべきが、レジの置き場所が2箇所に分かれていたとしても、酒類商品を手に取って商品販売の会計場所にたどり着くまでに飲食店スペースを通過する場合は認められないということです。

経営基礎要件

経営基礎要件では、酒類販売を行う者に十分な知識や経験、資金があるかどうかをみられます。

■申請者が破産者で復権を得ていない場合に該当しないこと
■以下の判断基準をもとに、経営の基礎が薄弱であると認められる場合に該当しないこと
・現に国税もしくは地方税を滞納していないか
・申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けていないか
・最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が、資本等の額を上回っていないか
・最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じていないか
・酒税に関係のある法令に違反し通告処分を受け履行していない、または告発されていないか
・販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令または地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却もしくは移転を命じられていないか
・申請酒類小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれていないか
・申請者(申請者が法人の場合はその役員)および申請販売場の支配人が「一定の経歴」を有していて、酒類に関する知識及び記帳能力等、酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力を有し、独立して営業ができるものと認められるか
・申請者は、酒類を継続的に販売するために必要な資金・施設・設備を有している、または必要な資金を有し、申請がなされた免許年度の終了日までに施設・設備を有することが確実と認められるか

需給調整要件

需給調整要件では、「酒類の仕入れ・販売が適正な方法で行えるか」「販売時に品質・価格などが適正に保たれるか」について以下の基準をもとに判断されます。

■免許申請者の設立趣旨からみて、その販売先が免許申請者の構成員に特定されている法人または団体でないこと
■免許の申請者が、酒場・旅館・料理店など酒類を取り扱う接客業者でないこと

酒類販売免許の申請方法

酒類販売免許は国税庁の管轄であり、税務署で所定の手続きが必要になります。
提出する書類は販売するお酒の種類や販売方法によって異なり、書類の数も比較的多い為、事前に確認しておくことが大切です。

酒類販売免許の申請の流れ

酒類販売免許の申請の流れについて、順を追って説明します。

【1】酒類指導官付職員に相談する

要件の確認や提出する書類などについての相談を事前にします。
酒類指導官設置の税務署に行って指導を受け、問題がなければ申請に進むことができます。

【2】取得要件を満たしているかチェックする

人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件の4つの要件をすべて満たしているかチェックします。

【3】必要書類を準備する

酒類販売免許申請の提出書類は以下の通りです。
➀酒類販売業免許申請書
➁販売免許申請次葉(販売場の敷地状況、建物等の配置図、事業概要、収支見込、所要資金の額及び調達方法、「酒類の販売管理の方法」に関する取り組み計画書)
➂役員全員の履歴書
➃酒類販売業免許の免許要件誓約書
➄登記事項証明書(事業目的に「酒類の販売」記載)
➅定款(事業目的に「酒類の販売」記載)
➆最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
➇都道府県及び市区町村が発行の納税証明書
➈建物賃貸契約書(使用承諾書が必要な場合も)
➉酒類販売業免許申請書チェック表
⑪所要資金を証明するもの(残高証明書等)
⑫取引承諾書(輸出入酒類卸売業免許、洋酒卸売業免許)
⑬酒類販売管理研修受講証写し(一般酒類小売業免許、通信販売酒類小売業免許)
⑭「未成年者への酒類販売防止についての取り組み」に関するもの(通信販売酒類小売業免許)

【4】管轄の税務署に提出する

書類を管轄の税務署に提出して申請します。
販売場の所在地を所轄する税務署については、国税庁ホームページ内「税務署の所在地などを知りたい方」にて確認ができます。

酒類販売免許取得にあたっての所要期間

酒類販売免許取得にあたっては、申請前に数多くの書類を揃えなければならないため、準備期間として1か月程度かかることを頭に入れておきましょう。

また、審査期間としては、原則2か月以内(※税務署長限りで処理するものに限る)となっています。ただし、審査の途中で書類の不備が見つかった場合には、更に期間が伸びてしまいますので記入漏れがないかの最終チェックは欠かさず行いましょう。

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