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外国籍の方が日本で飲食店を開業するには?ビザの申請から取得、入居審査対策を含めて開業までの流れを徹底解説!
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外国籍の飲食店開業者様からよく聞くお悩みが「審査が厳しかった」「外国人であることを理由に競合負けしてしまった」などの声です。
今回は、外国籍オーナーとして飲食店を開業する際に必要な在留資格、飲食店オープンまでの流れ、理想の物件を獲得するためのポイントを網羅的にお伝えします。この記事を参考に、外国籍の開業者様が日本で飲食店をオープンするための要点を掴んでいただければ幸いです。
外国籍の方必見!就労ビザでは開業できない?
外国籍の方が日本で飲食店を経営するためには、指定の在留資格(ビザ)の手続きが必要です。なぜなら、「留学」「技術・人文知識・国際業務」「家族滞在」といった在留資格は活動に制限があり、自由に会社を設立できないからです。
もし既に何かしらの在留資格をお持ちの方は、現在の在留資格で経営できるのか、別の在留資格に切り替える必要があるのかを事前に調べなくてはなりません。
開業に必要な在留資格の種類
結論からいうと、国籍や人種は関係なく、個人事業主・法人いずれの形でも日本で飲食店を開業することは可能です。
日本人の開業者と異なる点は、開業のために必要な在留資格の取得や連帯保証人・保証制度が必要となるケースなど、いくつかのステップを乗り越えなくてはならないこと。
まず、外国籍の方が日本で飲食店をオープンするために、個人事業主・法人問わず必要な【在留資格の種類】から解説していきます。
必要な在留資格の種類
外国籍の方が日本で飲食店を開業する場合は、2つの在留資格の必要性を確認しましょう。簡単に説明すると、それぞれの特徴は下記の通りです。
【1】飲食店を経営する場合は「経営・管理ビザ」の取得
【2】厨房で調理をする場合は「技能ビザ」の取得
出入国在留管理庁の「在留資格一覧表」によると、以下のように定義されています。
在留資格 | できる活動 | 該当例 | 在留期間 |
---|---|---|---|
経営・管理ビザ | 本邦において貿易 その他の事業の経営を行い 又は 当該事業の管理に 従事する活動 |
企業等の 経営者・管理者 |
5年 3年 1年 6月 4月または3月 |
技能ビザ | 本邦の公私の機関との 契約に基づいて行う 産業上の特殊な分野に属する 熟練した技能を要する業務に 従事する活動 |
外国料理の調理師 | 5年 3年 1月または3月 |
つまり、あなたの業務内容に応じて、在留資格を上記いずれかのビザを取得または変更する必要があります。ただし、下記いずれかに該当する場合は、日本での活動に制限がないため、改めてビザを申請する必要はありません。
☑ 日本人の配偶者が居る
☑ 定住者
☑ 永住者
☑ 永住者の配偶者が居る
いずれの資格も持たずに開業しようとすると、国外へ強制退去を命じられる可能性もありますので十分に注意しましょう。
外国籍の方におすすめの起業ビザ
まだ日本で在留資格を取得していないのであれば、「4ヶ月の経営・管理ビザ」と「スタートアップビザ」の存在は見逃せません。いずれも外国人起業家を増やす目的で設立されている制度です。
現時点で要件を満たしていなくても、申請内容から見込みがあると認められれば、来日して開業準備を進めることができます。また、開業準備がスムーズに進み、改めて申請し許可がおりれば、期限の延長も認めてもらえる制度です。
4ヶ月の経営・管理ビザ
2015年4月に「4ヶ月の経営・管理ビザ」が新設されました。日本での開業準備を進めていることを証明し承認されれば、有効期限4ヶ月のビザを来日前に取得できます。
つまり、申請が認められれば、来日後すぐに開業に向けて始動できるというわけです。また、日本滞在中に会社を設立し、許可がもらえれば、有効期限1年間の経営・管理ビザに延長もできます。
スタートアップビザ
スタートアップビザは、日本で開業を目指す外国人の活動を促進するための制度で、国から認可を受けた一部の地域(国家戦略特区)で発行されています。ビザの有効期限は6ヶ月。
創業活動計画書や指定の書類を提出し、日本で要件を満たす見込みが認められれば、「6ヶ月の経営・管理ビザ」が認められます。その後、日本滞在中に会社を設立し、許可がもらえれば、さらに6ヶ月期間を延長できます。
申請方法などの詳細については、
経済産業省が記載している
『外国人起業活動促進事業に関する告示』をご確認ください。
「経営・管理ビザ」の取得に必要な3つの条件
ここでは、飲食店開業と最も親和性の高い【「経営・管理ビザ」の取得に必要な3つの条件】をお伝えします。申請を認めてもらうためには、下記を満たさなくてはなりません。
条件を満たした上で出入国在留管理局へ申請を行い、無事に審査を通過すれば「経営・管理ビザ」の取得となります。
【1】店舗や事業所の確保
まず、店舗や事業所など、経営の拠点となる場所の確保が必要です。
しかし、開業準備中の場合は、まだ出店先や事業所の物件を契約できていないケースが大半。このような場合は、物件の契約後に在留資格を取得し、貸主(不動産会社)に報告する流れとなります。具体的には、審査時に物件オーナー・不動産会社に、在留資格の申請スケジュールや承認後の証明を提出できる日程を伝え、その条件のもとで審査が進みます。
万が一、「在留資格が認められませんでした」「ビザの更新ができませんでした」という結果になった場合には、そこで契約は打ち切りとなり、開業および滞在が認められなくなってしまうので申請漏れには十分に注意しましょう。
【2】資本金500万円以上の証明 or 常勤の従業員2名以上の雇用
次に、「500万円以上の資本金または出資額の証明」または「常勤の従業員2名以上を雇用」する必要があります。いずれかの対応でよいので、実現可能な条件を選びましょう。
500万円以上の資本金または出資額の証明
法人であれば、資本金という形で500万円の出資を証明できます。しかし、個人事業主の場合は、出資額を具体的に証明できる書類を出入国在留管理局へ提出しなくてはなりません。「個人の銀行口座に500万円ある」という事実だけでは認めてもらえないため、法人よりも申請のハードルが高いように感じる方もいるでしょう。
個人事業主が出資額の証明として認めてもらいやすい書類の例は、以下の通りです。
■店舗・事業所の契約時の支払い領収書(賃料・保証金・仲介手数料など)
■店舗の改装・設備費用の領収書
■雇用する社員・アルバイトの人件費
上記のように、飲食店開業・経営にかかる必要経費の出費は、出資額として認められやすいです。それぞれの領収書や支払いの事実がわかる書類をまとめ、出入国在留管理局へ提出しましょう。
常勤の従業員2名以上を雇用
開業者本人を除く、日本在住の常勤従業員2名以上を職員として雇用する必要があります。このとき、従業員は下記いずれかに該当する従業員でなければ認められません。
☑日本人
☑ 日本人の配偶者が居る
☑ 特別永住者
☑ 永住者
☑ 永住者の配偶者が居る
☑ 定住者
※入管法別表第1の在留資格者を除く
以上のとおり、「常勤職員であれば誰でも可」というわけではないので、注意しましょう。
【3】事業計画書の提出
審査時は、事業内容が安定して継続できそうかを注視されます。
あなたの描く事業プランが資金内で実現可能か、開業スケジュールや戦略が現実的であるかを事業計画書で説明しましょう。
具体的な事業計画書を提出することは、計画的で経営能力をもつ申請者だと認識してもらうためにも重要です。
外国籍の方が法人として開業する流れ
個人事業主として開業する場合と異なり、法人で開業する場合は、会社設立の手続きも必要です。しかし、在留資格の取得もしなければならないとなると、順序が混乱してしまいやすいでますよね。
日本人開業者の場合は、開業までに10~12ヶ月を要するイメージでスケジュールを立てます。外国籍の方の場合は+6ヶ月を目安として想定しておくとよいでしょう。
経営・管理ビザは、申請から取得まで平均3ヶ月程度かかります。しかし「取得に6ヶ月かかった」という声もあるため、余裕をもってスケジュールを立てておくと安心です。
ここでは、外国籍の方が日本で法人として飲食店をオープンする流れを説明します。
中でもポイントは、個人・法人問わず「飲食店営業許可の申請」です。店舗の構造や設備を確認されるため、内装や設備がある程度整っている必要があります。
居抜き物件の場合は、最低限の設備条件を満たしているケースが多いです。しかし、激しい傷みや消防法の観点で違反している点を見落としていないか、しっかり確認しましょう。
入居審査を通過するための対策
理想的な物件をスムーズに獲得するためには、上述のさまざまな手続きをクリアすることはもちろん、物件オーナーの心配事を解消する準備が必要です。ここでは、数々の物件オーナーのヒアリングを重ねた当社が【入居審査を通過する為の対策】をご紹介します。
【1】連帯保証人の確保
外国籍の方が物件に申込みをする際には、日本人または永住資格のある連帯保証人をつけることが契約条件となるケースが多くあります。理由としては、トラブルや家賃滞納が発生した際に、解決しないまま母国に帰られてしまうと貸主側が対処できず困ってしまうからです。
しかし、連帯保証人は、契約者が金銭等の債務を履行しない場合に契約者に代わって履行する、契約者と同等の責任を負う立場。親族や親しい友人でも契約直前にすんなりと受け入れてくれるとは限らないので、事前に相談をもちかけ依頼しておくことをおすすめします。なお、連帯保証人の確保は契約の確約というわけではないので、取り違えないよう理解しておきましょう。
【2】潤沢な自己資金で経営の安定性をアピール
国籍を問わず、物件オーナーの審査時にも自己資金や事業内容の確認が生じます。
潤沢な資金額が明記されていると、資金不足による金銭トラブルが生じにくいと思ってもらいやすいです。
特に、借り入れた資金ではなく、自己資金であるということがポイント。「開業準備を計画的に進められる人」「多少集客に悩んでも、一定期間の経営は見込める人」といったイメージをつけ、このテナントであれば任せても大丈夫だろうと判断する安心材料になります。
【3】緻密な事業計画書で経営能力を伝える
物件を申込む際の事業計画や収支の見通しは、より具体的な書類を提出しましょう。「経営・管理ビザ」の申請時同様、提出書類の内容から事業の安定性・継続性を判断されるからです。
その事業計画と収支の見通しを立てる為には、「商圏分析」がとても重要。
日本での滞在が浅い方にとっては見知らぬ場所が多々あり、長らく日本で暮らしてきた方でもお店を経営する立場となれば普段とは異なる視点で出店場所を見極めることが必要となります。
したがって、物件探しでは、金額やエリアのイメージだけで判断するのではなく、その場所で本当に集客が見込めるのかどうか徹底的にリサーチした上で進めていきましょう。そうした活動は出店への熱量として事業計画書に表れ、物件オーナーへの信頼獲得にもつながっていきます。
日本でオーナーとして飲食店を開業するために
ここまで、「外国籍の方の飲食店開業」について、必要な在留資格や取得方法、開業までの流れなどをご説明してきました。
日本で飲食店を開業する際に大切なのは、経営に必要な在留資格を取得し、必要な各種手続きを漏れなく完了させることです。せっかく物件が契約できても、「在留資格が取得できなかった」「ビザが切れていた」などのトラブルが生じては元も子もありません。
日本で飲食店をオープンしようと計画中の方は、理想の物件獲得に向けてこちらの記事を参考にしていただけたら幸いです。
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