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店舗側の罰則も強化!みかじめ料(ショバ代)を請求されたときの断り方

店舗側の罰則も強化!みかじめ料(ショバ代)を請求されたときの断り方

「新しく開いた居酒屋に地元のヤクザがたびたびやってくるので困っている……」
そんな悩みを持つ経営者の方はいませんか?
特に繁華街で営業する飲食店の場合、多かれ少なかれ「みかじめ料」を払うよう要求された経験があるのではないでしょうか。
みかじめ料の要求はもちろん違法ですので払ってはいけません。
とはいえ、ヤクザを目の前にして「帰れ!」と追い払うことは難しいのが現実。
そこで今回は、みかじめ料の意味や相場、規制する法律、要求されたときの正しい対処法など、飲食店経営者であればぜひ押さえておきたい情報をご紹介します。

みかじめ料(ショバ代)とは


みかじめ料(ショバ代)とは、暴力団などが飲食店などから徴収する「ショバ代」「挨拶代」「用心棒代」「交際費」などのことで、いわゆる「シノギ」の一種です。
ここでは、みかじめ料の語源や相場などを説明します。

みかじめ料の語源や背景

みかじめ料という言葉の語源にはいくつかの説があります。

・管理・監督を意味する「見ヶ〆」という古い言葉に由来するという説
・「みかじめの『み』=見守る、『じめ』=締め」であり、店を見守り、部外者の侵入を取り締まってやる代わりにもらう手数料という意味に捉える説
・毎月3日に支払うまたは要求してから3日以内に支払わないと店を締め上げるという意味の「3日〆」という言葉に由来するという説。

いずれの説にもそれなりの説得力がありますが、どれが正しい説なのか明確には分かっていません。

みかじめ料の相場

みかじめ料の相場は、「小さな田舎町のスナックなら1万、大都市の駅前にあり売上の大きなパチンコ店なら30万」といった具合に、ターゲットにされる店の規模や売上によって変わります。

みかじめ料は、「備品代」「広告費」「定期購読料」といった名目で徴収されることが多く、正規の営業で発生した取引と区別できないことがよくあります。
そのため、どれだけのみかじめ料がやりとりされているのか、警察でさえも完全には把握できていません。

みかじめ料は請求するのも支払うのも違法


みかじめ料は請求するのも支払うのも違法です。
ここでは、みかじめ料がどのような法律により規制されているか、またみかじめ料にまつわるトラブルとしてどのような事例があるのか、さらには東京オリンピックに備えた罰則強化の動向などについて説明していきます。

みかじめ料を取り締まる法律

みかじめ料を取り締まる法律には、「刑法」「暴力団対策法」「暴力団排除条例」があります。
以下、各法令について説明していきます。

刑法(恐喝罪/恐喝未遂罪)

みかじめ料に関係する刑法の規定には「恐喝罪」とその未遂罪である「恐喝未遂罪」があります。
恐喝罪について規定する刑法249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定めています。

もっとも、この規定だけでは、具体的にどのような要件を満たせば恐喝罪が成立するのか不明確です。
恐喝罪が成立するには次の4つの要件を満たす必要があります。

1.暴行や脅迫を用いたこと 
恐喝罪が成立するには、加害者が被害者に対して暴行や脅迫を加える必要があります。
2.被害者が畏怖(恐怖)を感じたこと 
「恐喝」には「恐れる」という文字が含まれています。
みかじめ料の要求行為が恐喝罪と認定されるには、「被害者が恐怖を感じる(畏怖する)→加害者に対して助けを求めるために、対価として金銭などを渡した」という要件が必要です。
3.被害者が恐怖により金銭その他の財物を処分したこと 
被害者が暴力団に脅された結果、「みかじめ料を渡さないと何をされるか分からない。怖いので払おう」というように、恐怖心を感じて金銭などを渡した場合に恐喝罪が成立します。
言い換えると、あわれみの気持ちや、「面倒くさいからさっさとお金を払って追い払おう」といった気持ちでみかじめ料を支払った場合は恐喝罪が成立しない可能性があります。
4.金銭その他の財物が加害者または第三者に渡ったか
恐喝罪は財産犯ですので、金銭などの財物が被害者から加害者へ実際に交付されないかぎり、犯罪は既遂になりません。
その場合は恐喝が未完成に終わったと解釈し、恐喝未遂罪の成否が問われます。

暴力団対策法

刑法の恐喝罪規定以外でみかじめ料を規制する法律としては、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる暴力団対策法があります(以下、暴対法)。
暴対法とは、暴力団による不当行為や組同士の抗争による危険の防止などを目的として平成3年に制定された法律です。

暴対法の内容は、「暴力団の定義」「規制対象となる指定暴力団の定義」「不当行為の禁止、措置命令、罰則」「民法が定める損害賠償責任の特則」などで構成されていますが、その中でもっとも重要なのが不当行為に関する規定です。

不当行為に関する規定には、みかじめ料の要求はもちろんのこと、高金利の融資、地上げ、事業への不当な介入、交通事故の示談への介入、役所へのクレームなど、27例の禁止行為が列挙されています。
指定暴力団員がこれら27例のいずれかに当たる行為を行うと、都道府県警察署長または公安委員会が中止命令や再発防止命令を出します。
中止命令や再発防止命令が出たあとも不当行為が続く場合は、その段階でただちに罰則が適用されます。

都道府県ごとの暴力団排除条例

すべての都道府県下で暴力団排除条例(暴排条例)が制定されています。
各地域事情を反映して、「暴力団員の定義」や「禁止される行為」など一部の内容に差があるものの、「公共工事からの排除」「事務所開設の禁止」といった主要な項目はどの地域でも共通しています。
もちろんみかじめ料のやりとりも全都道府県の暴排条例で禁止されています。

みかじめ料のトラブル事例

暴対法や暴排条例ができたあとも、残念ながらみかじめ料のトラブルがなくなることはありません。

2017年には、銀座の飲食店約40店が9年間に渡り1億円近いみかじめ料を暴力団に払っていた事件がニュースになり、大きな話題となりました。
ある繁華街でみかじめ料を払う店が1店でも出てしまうと、そこから芋づる式に他の店にもみかじめ料の要求が来るのです。

また2018年には、指定暴力団が大量の日雇い労働者を違法に派遣し、派遣先からみかじめ料を徴収したという事件が起きています。みかじめ料のターゲットになるのは飲食店に限られないことが分かります。

オリンピックに向けて飲食店側にも罰則強化の動き

2020年開催予定の東京オリンピックに向けて、東京都は暴力団排除条例を改正しました。
この改正では、銀座、赤坂、新宿、町田など都内の繁華街29地区を暴力団排除特別強化地域に指定し、該当地域で営業する店がみかじめ料を払った場合の罰則が強化されました(2019年10月1日から施行)。

条例改正前、みかじめ料を払った店を罰するためには、「勧告→公表→命令」という手続が必要でした。
改正後は、みかじめ料を払ってしまった段階でただちに罰則が適用され、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

みかじめ料を請求されたときの断り方


みかじめ料を請求されたときは絶対に応じてはいけません。みかじめ料を要求された場合にそなえて、正しい対処法をここで確認しましょう。

法を守って営業していれば請求されることはない

現代では企業に求められるコンプライアンスも厳しくなっています。
暴力団に言われるままみかじめ料を払った事実が公になると、会社の信頼は地に落ちるでしょう。

暴力団の要求には一切応じないことを宣言し、堂々と営業している企業には、暴力団も近づきません。
そのような企業に対して下手に近づけば、たちまち警察に通報されて家宅捜索を受けるおそれがあることを、暴力団もよく分かっているからです。

しかるべき機関に通報する

暴対法施行後、暴力団は摘発を逃れるため地下に潜り、代わりに企業舎弟の活動が活発化しました。
企業舎弟は一見すると普通の企業であるため、知らぬ間に取引先として潜り込んでいることも珍しくありません。
そのため、たとえ正々堂々と「みかじめ料には応じない」と宣言し、法を遵守して営業していたとしても、暴力団の介入を完全には排除できず、みかじめ料を払う羽目になるケースも起こりえます。

もしみかじめ料を要求された(あるいは払っていたことが判明した)場合は、以下に例示するようなしかるべき機関へすぐに通報、相談しましょう。

警察に通報

みかじめ料を要求された場合、まずは最寄りの警察に通報するのが最善です。
各都道府県警察には暴力団対策を専門とする部署が設置されており、「みかじめ料を要求された」と通報すればすぐに動いてくれるからです。

警察は通報者の情報が漏れないよう注意しながら捜査するので、警察に相談した事実が暴力団にバレる心配はありません。

弁護士/民事介入暴力対策特別委員会へ相談

弁護士もしくは弁護士会に相談することもおすすめします。
弁護士は警察に次いで暴力団問題に詳しい専門家だからです。

各都道府県には必ず弁護士会がありますが、中でも東京や愛知など暴力団の活動が活発な地域の弁護士会は、「民事介入暴力対策特別委員会」を開設して随時相談を受け付けています。
民事介入暴力対策特別委員会に所属する弁護士は、みかじめ料のような民事介入暴力事件のエキスパートばかりなので、とても頼りになります。

暴力追放運動推進センターへ相談

暴力団追放運動推進センター(暴追センター)へ相談することも、みかじめ料問題を解決する助けになります。
暴追センターとは、暴力団員による不当行為の防止と被害救済を目的とする団体です。
暴追センターは暴対法に基づき各都道府県に一カ所ずつ開設されており、民事介入暴力に悩む被害者の駆け込み寺として機能しています。

ただし、警察や弁護士とは異なり、暴追センターに公権力や法を動かす力はありません。
あくまでも相談機関ですので、被害を確実に防ぎたい場合は警察か弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

繁華街には必ずそこを「シマ」にする暴力団の存在があります。
飲食店を繁華街に開店すれば、遅かれ早かれ、みかじめ料を要求される可能性があるわけです。

繰り返しますが、みかじめ料の要求は違法ですので、絶対に応じてはいけません。
「幸いにも、まだみかじめ料は要求されていない」という場合でも、油断は禁物です。
日頃から所轄の交番や弁護士会と連絡を取り合い、トラブルが起きそうなときはすぐに動いてもらえるよう準備しておきましょう。


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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