攻略コラム
審査のチェックポイント③「収支見通し」

創業融資の審査のチェックポイントは、「経営者としての資質」「財政状態」「収支見通し」の3点があることをお伝えしました。今回はそのうち「収支見通し」に関して知っておくべきことを解説します。
「収支見通し」は事業計画書の根幹をなす部分であり、融資担当者が企業維持力や返済能力を判定する重要なポイントです。しかし、多くの場合「開業してみなければ分からない」のが実態なので、開業希望者が記入するのにもっとも頭を抱える項目です。
融資担当者がチェックするポイントは次の3点です。
1.投資内容と資金調達方法は妥当か
収支予測の前提となるのが、「開業時に何にいくら投資するのか」という投資内容に関する部分です。予定している開業計画に対して妥当な投資か、過大な投資ではないか、投資効果は見込めるか、という点が検証されます。
飲食店の場合は、店舗物件の初期投資がチェックポイントです。とくに、内装工事や厨房設備にどれくらいの金額をかける計画なのかが重要です。融資担当者は、内装工事について見積書から坪単価を計算して妥当性を検証することがあります。
たとえば15坪の物件で、内装工事を1,500万円かける計画の場合、坪単価は100万円ですね。坪単価100万円だと「ちょっと高すぎるのではないか」という見方をされることが多いといえます。「融資金額ができるだけ高くなるように実際よりも高い見積書を金融機関へ提出したほうがいい」と思っている方もいますが、それは禁物です。単価が高い場合は、「盛っているのではないか」と、融資担当者に疑われる可能性があります。
明確な基準があるわけではないのですが、およそ坪単価50万円を超える場合は「少し高いように思うのですが、なぜですか?」といった質問をされることがあります。実際にそれくらいかけたい場合は「高級感を出したいので、比較的高い材料を使う」「ユニークな内装にするために、床や壁に凝りたい」など、具体的な理由を説明することが重要です。
また、資金調達方法とは、必要な投資金額をどこから調達するのかということです。自己資金や借入について、「間違いなく調達できるか」という観点でチェックされます。
2.予想収益の実現可能性はどうか
日本政策金融公庫の「創業計画書」の場合、「事業の見通し(月平均)」という欄があり、ここに記載した内容の実現可能性がチェックされます。開業希望者がもっとも記入するのに苦労する部分ですが、同様に融資担当者も非常に判断に迷う箇所です。融資の稟議書には、予想収益の根拠を明記しなければならないからです。
飲食店開業で、売上を「客単価3,000円で30席あって1日あたり1回転する(30人のお客様が来店する)」と予測した場合、融資担当者から「1回転するという根拠は何ですか?」と質問されます。この難しい質問にうまく答えることが、融資OKの結論を引き出すために肝要なのです。
その根拠として有効なのは、店の立地条件や付近の競合店の状況などをしっかりと調べて表にまとめたものです。融資を申し込みする前に、予定店舗の立地条件などを自分の眼で調査することが欠かせないとお考えください。
なお、原価、経費などについても、「業界平均と比べて妥当か」「経費の金額が過少ではないか」「(家賃などが)高コストすぎないか」といった観点でチェックされます。
3.収益が予想よりも少ない場合の補てん方法はあるか
予想収益に妥当性が認められたとしても、「開業してみたら予想よりも売上が少なかった」ということがあります(実際にはほとんどの場合がそうです)。もし、補てんできるものがあるならば、融資担当者へ説明しておくことが有効です。
たとえば、配偶者に安定収入がある、アパート経営をしており家賃収入があるなど、別の収入源があるなら積極的に情報開示することをお勧めします。
【まとめ】
「収支見通し」は、審査の決め手といっても過言ではないほど重要な部分です。しかし明確な根拠をもった計画を示すのは、簡単ではありません。説得力のある数字にするには、ご自身のお店のコンセプトを明確にするとともに、立地条件や競合店の調査が欠かせません。
「なかなか時間がない」「めんどう」と思うかもしれませんが、融資の審査にパスすることだけではなく、開業後に店が繁盛することにもつながります。ぜひ、時間をつくってしっかりと調査してください。
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