個人で飲食店を始める場合、10〜15坪前後の小規模物件からスタートした方が初期投資額を抑えられるほか、ローコストオペレーションができ、経営効率のよい運営が期待できる。今回はこうした小規模飲食店の厨房に注目し、厨房機器から設計、工事に至るまでを説明していく。

厨房機器の導入方法

まずは厨房機器から見ていこう。
厨房機器は購入するか、リース契約をするかによって、イニシャルコスト/ランニングコストに大きく影響する。それぞれのメリット・デメリットを確認し、自店に合った導入方法を正しく選択したい。

購入する場合

厨房機器を購入する場合、新品購入では大きな出費となる。しかし長く安心して使えるという意味では、新品を購入した方がよい。メーカーによっては、分割支払いに応じてくれるケースもある。また厨房のサイズに合わせ、機器自体の大きさをカスタマイズしてくれるメーカーも多く、使い勝手のよい厨房づくりを適えてくれる。さらにメーカー保証もついているため、急な故障にも対応してくれるなどメリットは多い。
一方で、中古購入という選択肢もある。新品で数百万円の機器が、中古品では半額以下になることもあり、安く導入できる点が大きなメリットだろう。しかし中古品はサイズが合わない、自店の電気・ガスの仕様が合わないなど、実際に厨房へ搬入してからのトラブルも多い。事前にしっかりと自店の仕様に合った厨房機器かを確認することが大切だ。また中古品は、メーカー保証が切れていることがほとんどのため、故障時には修理費がかかってしまう。製造年数の古いものでは、修理部品がないこともあるため、購入時に部品在庫があるかも確認しておいた方が得策だ。また自身でメーカーや販売店とやり取りし、修理をしなければならないなど、日々の営業にもかかわるトラブルを招く可能性もあるので注意したい。
中古品購入のトラブルを予防するため、導入時点で動作確認を行なおう。動作不良の場合、販売店へ問い合わせをし、無料修理対象かを聞くのがベストだ。
中古市場には、新古品や展示品も多数販売されている。メーカー保証がつくケースが多く、新古品を狙うのも一案だ。
小規模飲食店では、補助的に小型の冷蔵庫・ショーケースや家庭用冷蔵庫で代用することも可能。特にアルコールメイン業態であれば、ガス台がなくともIHやガスコンロを購入するなど、工夫次第で初期投資を下げることも難しくない。

リース契約をする場合

リースとは冷蔵庫や食洗機などの製品の購入代金を借金し、リース料率とリース期間で算出した手数料を支払うこと。借金である点がレンタルとは異なる。
リース契約最大のメリットは、最新の厨房機器を月々のコストを抑えて使用できる点。購入した場合は不要になったときの処分を自分でしなければならないが、リース契約の場合、リース会社が処分してくれるため、手間や処分経費がかからない。契約期間は通常4〜7年。所有権はリース会社にあるため、期間満了であっても返却しなければならいのが原則だ。
リース契約は会計面でのメリットが大きい。例えば固定資産税の申告が不要、月の支払額が明確なため資金計画が立てやすいなど。基本的に10万円以上で購入したものには固定資産税がかかるが、リース契約の場合はリース会社が税金を支払うことになっている。また初期投資がかからず、毎月の支払いで厨房機器を利用できるため、特に現金商売の個人店では大きなメリットとなるだろう。
デメリットは、購入よりも総支払額が高くなること。利息を上乗せして支払うため、どうしても高くなってしまうのだ。またリース契約には審査があり、個人では連帯保証人が必要になる場合も多いため、注意が必要だ。
居抜きで譲渡された厨房機器に、リース途中のものがあったというケースも稀にある。原則としてリース期間中の中途解約はできず、できたとしても期間満了までの残金を全額支払う必要があるため、居抜きの場合は十分注意しよう。
■関連ページ:厨房設備の準備方法と費用について

厨房設計

業態によって妥当な厨房面積や導入機器、レイアウトはさまざま。一般的な数値と合わせて、厨房のつくり方や注意点を確認し、厨房設計の際の参考にしてほしい。
■関連ページ:抑えておきたい飲食店内装工事の流れとポイント

厨房機器の種類

業態によって使用する厨房機器はさまざまだが、冷蔵冷凍庫、洗い場、ガス・IHなどの熱源、収納棚は最低限必要だ。食品衛生法の観点から見れば、2槽以上のシンク、厨房と客席を仕切る扉なども設置しなければならない。
その他のオーブンや電子レンジ、フライヤー、製氷機などの厨房機器は、看板メニューを決めてからどれを導入するかを考えた方がよい。お客さまへ売りたいメニューが作りやすい厨房機器や配置になっていなければ、売りたいものを売れないということになってしまう。

導線

小規模飲食店の場合、十分な客席数を確保するために、厨房はどうしてもコンパクトになってしまう。逆を言えば、その方が一人でも効率的に作業を進めることができる。一方で、厨房機器の配置や動線をうまく設計しなければ、かえって作業効率を落とすことになるので注意したい。
無駄のない動線をつくるには、厨房の中央から2歩以内で注文、調理、提供、食器洗浄まで完結するのが理想だ。
スケルトンから厨房設計をする場合、厨房機器メーカーや代理店がレイアウトを組んでくれることも多い。しかし実際にお店に立ち、使うのは自分。必ずレイアウト立案から入り込み、一緒になって考えるべきだ。

客席とのバランス

売上げを上げるために、適正な客席数の確保が重要。一般的に1坪あたりの客席数は1.5〜2席。高客単価のお店ならゆったりと、居酒屋などなら賑々しさを求めて客席数を多くとるなど、業態によって適正な客席数は異なる。
またお店に占める厨房の面積比は、居酒屋で18〜25%、ラーメン屋で18〜30%、うどん・そば店などの和食店で20〜30%、焼肉店で15〜30%と言われる。10坪の居酒屋で例えると厨房は1.8〜2.5坪、残り約7〜8坪に15〜20席を収める設計をしなければならない。
ただこれらの数字は一般論であるため、調理オペレーションの工夫や厨房設備のミニマム化などの工夫で、客席を広くとるといったことも可能だ。その場合は、客数をさばくほどの生産性をまかなえるかを考慮し、厨房と客席とのバランスを考えよう。

収納

意外と見落としがちなのが厨房の収納だ。食器やカトラリー類はもちろん、調味料や調理器具、ラップやアルミホイルなどの消耗品など、収納スペースはいくらあっても足りないほど、営業していれば物が増えていく。そのため、厨房設計段階で十分な収納スペースは確保しておこう。
とは言え、狭小厨房に収納棚を置くことは非効率。上部の空間や壁をうまく使うのがコツだ。ただ食器収納棚には扉をつけることが義務づけられている。そのあたりにも配慮した収納スペースを工夫したい。

清掃

清掃のしやすさも、厨房設計段階で考えておきたいポイント。サッと汚れが拭き取れる壁や棚など、素材から考えるのもよいだろう。また汚れやすい床は、ホースで水洗いができるようにしておくとよい。
厨房機器もなるべくすきまのないよう採寸し、配置するのがベスト。その方が清掃しやすく、清潔に保てる。
清潔感がなければお客さまはリピートしない。そのため毎日の清掃でも苦痛にならない、効率的な設計が必要だ。

インフラ

飲食店の厨房に必要なインフラは、ガス管や水道管、ダクト、グリーストラップなど。スケルトン物件でも、以前に飲食店が入居していた場合は、床下にインフラが整備されているケースも多い。
特に床下インフラとダクトの工事が、コスト高の要因。床下にインフラが一切なかった、厨房区画を移動したい、炭を使うためダクトを屋上まで伸ばしたいといった場合は、通常の厨房工事費よりも高くつくため注意が必要だ。
また居抜きで借りた場合でも、ガス、水道、ダクトの容量が不十分であれば、新設や容量アップの工事が必要。そのため契約前に各インフラの容量、状態を確認しておく必要がある。

熱源機の種類

飲食店の熱源はガスが一般的だが、最近ではIHで調理をまかなうお店も増えている。特に小規模飲食店なら、IHでまかなえるお店も少なくない。例えばメニュー数の多い居酒屋では、2口のガスで仕込みをまかない、営業中は仕込んだ料理を温めるだけのオペレーションにしておけば、ガス2口でも十分に調理可能だ。さらに煮込み料理はカウンター上のIHで常に温めておくなど、ちょっとした工夫で作業効率を高めるだけでなく、注文を誘発する要素にもなる。
熱源をそれほど必要としないバーなどの業態では、家庭用のガスコンロでまかなえることも多い。
■関連ページ:飲食店開業の流れと準備すべきこと

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オープンキッチンの作り方

小規模飲食店にとってオープンキッチンは、ホールスタッフを必要とせず、オーダーや提供までができる利便性がある。また目の前で調理するライブ感や、店主とコミュニケーションが図れるなど、お客さまにとってのメリットも大きい。こうした利点の多いオープンキッチンのつくり方や見せ方について言及する。

カウンターの作り方、工夫

オープンキッチンは店舗の一部と見られるため、見栄えに注意しなければならない。壁や天井、照明、収納などのデザイン性に留意するほか、ものが溢れた雑多な感じや清潔感に欠ける厨房にならないよう常に気を配る必要がある。
またカウンター席に座ったときのお客さまとの目線の位置にも、注意したい。床下インフラにより、厨房は客席よりも一段上がっていることが多い。客席を同じように上げる、ハイカウンターにするなど、お客さまとの目線が合うよう調整するのがよい。くれぐれもお客さまを見下すように見えてしまうことがないよう注意しよう。
厨房とカウンターの境に段差を設け、そこに食器や食材を並べるデザインは、収納スペースを確保できるため利便性が高い。一方で厨房とカウンターの境をなくした、フラットなカウンターはデザイン性が高く、お客さまとの一体感が生まれる。自店のコンセプトに合わせたオープンキッチンカウンターを造り、お客さまに「カウンターに座りたい!」と思わせる店にしよう。なぜならテーブル席よりも、カウンター席に座ったお客さまの方が常連客になりやすいからだ。

見せる収納の作り方

オープンキッチンの場合、収納場所をうまく工夫することでインテリアの一部として活用できる。例えばワイングラスを吊ることで、ワインのお店であることをアピールできるし、旬の食材をカウンター上に置くことで、良質な食材の宣伝につながるなど。
注意したいのは単なる収納ではなく、見せるというポイントに気を配ること。雑多な置かれ方をした食器や調味料などがお客さまの目にとまると、お店の印象を悪くしかねない。
また棚にほこりがたまっているなどが目につくと、衛生面でも悪い印象を与えてしまうため、清掃しやすい収納を考えたい。

厨房工事

導入する厨房機器、厨房レイアウトなどが決まったらいよいよ着工だ。しかし工事前に確認すべき事象はさまざまある。また相性のよい工事会社を選ばなければ、費用や準備期間の大幅なロスとなるため十分に気をつけたい。

気を付けるべき点

「インフラ」の項目で先述したように、まずはガス、電気、水道の容量が不足していないかを確認しよう。それによって工事費用も大きく変わってくる。また空調も気をつけて見たいポイント。空調の室外機をどこに置くかによって工事費は異なり、床面に置けるならよいが、ビルの状況によっては屋上にクレーンで室外機を持っていく必要があるケースも。その場合、設置費用だけで高コストになってしまう。
床下の防水も飲食店の厨房になくてはならないもの。これがなければ、営業中の漏水で工事のために休業せざるを得ないといったことになりかねない。
居抜きで借りた場合、厨房の床が木材のときは防水工事が必要である可能性が高い。モルタルの場合であっても、造作所有者に漏水の有無を確認しておこう。防水工事は厨房機器を運び出し、床を解体する大掛かりな工事となる。そのため約3週間〜1ヵ月を要してしまう場合も。また、おおよそ3〜6坪の厨房の場合、防水工事だけで300万円かかると言われており、無駄な出費を抑えるためにも物件契約時点から細心の注意を払いたい。

厨房レイアウト

厨房機器メーカーは、厨房機器の取扱いだけでなく、厨房設計までをサポートしてくれる企業も多い。厨房の区画に合わせ、自社製品を組み合わせた厨房をレイアウトしてくれるため、使い勝手のよい厨房に仕上がる。着工前に3Dで厨房イメージを提示してくれたりと、大手企業ならではのサポートも嬉しいところ。
ただプロ任せにせず、一緒に造り上げることを念頭に入れておこう。厨房機器メーカーの提案通りでは、自分が思い描いていた厨房イメージとの齟齬が生じる可能性もある。

業者選び

一般的に、スケルトンから施工する場合、内外装工事費を占める厨房工事費は20〜40%。居抜き物件の場合、そのまま使えるのであれば厨房工事費はほとんどかからないが、自分が使いやすいよう手直しはした方がよいだろう。
厨房工事は、飲食店の工事実績がある会社を選びたい。住宅専門の場合、飲食店厨房の勝手がわからないということも多いため、その会社の過去の実績を確認しよう。
また工事会社は3社以上から見積もりを取り、比較検討するのがおすすめだ。何店舗も経営している人であれば、工事費用の相場感が掴めるかもしれないが、初めての場合、見積もりを出してもらっても高いか安いかの判断がつかないことが多い。そのため、数社の見積もりから最適なものを選ぶとよい。
工事会社が決まったら、施工内容やスケジュール、予算を相談する。もし予算に収まらない場合は、工事会社からコスト減の提案をしてもらうとよいだろう。実績のある会社は、コスト減の工夫を豊富に持っている。そうしたプロのアドバイスを聞きながら、一緒に厨房を造り上げていきたい。

■関連ページ:個人店向きの15坪以下の物件一覧 / 低賃料の物件一覧
■関連ページ:店舗の内装にかかる費用は?設計から施工までの必要な工程と選択肢

まとめ

大手外食チェーンでさえ、物件規模を縮小して展開をすすめる昨今。お客さまにとっても“お一人さま”ニーズの高まりから、一人で入りやすい小規模飲食店が人気を伸ばしていることも確かだ。
出店メリットの多い小規模飲食店だが、失敗しないためにも、自分が用意できる資金に見合った厨房づくりを考えたい。

■関連ページ:飲食店の内装をDIYで仕上げるメリット
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