居抜き物件で飲食店の営業許可申請！保健所検査の４つのポイント（厨房編）

開業許可を取得するための検査を受けるには、保健所への相談や申請が必要となります。詳しい手順や申請方法については、こちらをご覧ください。

飲食店を開業するためには、いくつかの関門がありますが、店舗の内装工事などが終わり、開業まであと一歩のところで立ちはだかるのが、保健所の検査ではないでしょうか。営業許可を申請したあとに行われる施設検査においては、とりわけ以下の点がよく指摘されているようです。

１．厨房機器の設置場所について
２．厨房区画の明確化について
３．手洗い器の設置有無について
４．食器棚への戸の設置有無について

これらのことは、飲食店を開業する際の内装計画や居抜き物件取得の際などに念頭においておくと、よりスムーズな店舗開業を実現することができます。
内装工事が終わってから保健所検査で指摘を受け、最悪一部再工事ということも充分にありえます。
そこで、ここでは、飲食店開業時の保健所検査を合格するための基礎知識として、さまざまな事例を交えて傾向と対策をお伝えしたいと思います。

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開業ノウハウ

営業時間中に使用する冷蔵庫は厨房内に設置

保健所検査基準違反事例

・営業時間内に使用する冷蔵庫やストッカーが、客席や倉庫に設置されている
・営業時間内に使用する厨房機器が、厨房区画からはみ出して設置されている

飲食店でよくみかける誤った事例として、厨房内の導線確保や業務の効率化のため、冷蔵庫やストッカーなどの食材を保管する機器が客席側に配置されているというケースをよくみかけます。
もし、この食材を保管する機器が、業務時間中に使用する営業用の機器である場合、こちらは厨房内に設置されていないといけません。ただし業務時間内に使用しないものであれば、厨房以外にも設置は可能です。

対策方法

・営業時間内に使用する厨房機器は、必ず厨房内に設置する
・厨房の区画を明確にする

厨房区画を明確化

保健所検査基準違反事例

・カウンター横のウエスタン扉が設置されていない
・居抜き物件の取得時、厨房扉が撤去されていてそのままにしている
・厨房がカーテンや暖簾で区画分けされている

飲食店は、厨房とその他の区画を明確に区別するため、厨房区画を出入りする場所にはドアや跳ね上げカウンター、またはそれに準ずる造作物を設置することが定められています。
しかし、営業開始後、通行の利便性や安全性といったオペレーションの実運用を経た結果、動かないように固定されていたり、撤去されたりしてしまうことも珍しくありません。

対策方法

・ウエスタン扉や跳ね上げカウンター（天板の一部が上開きするものを指す）、またはそれに準ずる造作物を取り付ける
・居抜き物件で取得した物件に厨房扉がなかった場合はご自身で設置する
・布製の仕切りではなく、耐久性のある扉で厨房を区画分けする

手洗い器は厨房とトイレに設置

保健所検査基準違反事例

・手洗い器が設置されていない
・手洗い器は設置されているが、故障していて使用できない
・厨房とトイレのどちらかにしか手洗い器が設置されていない
・手洗い器は正しく設置されているが、ハンドソープが設置されていないまたは補充されていない

飲食店では、店舗関係者・利用客の双方が衛生を保つために厨房とトイレに手洗い器とハンドソープを最低でも一つずつ設置する必要があります。
しかし、必要な厨房機器などを優先してしまうため、スペースを確保する目的などで手洗い器を取り外してしまう飲食店も多いようです。

対策方法

・厨房、トイレには、手洗い器をそれぞれ最低一つ設置する
・居抜きで引き継いだ手洗い器の稼働確認を必ず行う。もし、故障していた場合は修理もしくは交換する
・シンクが3層以上ある場合は、1層を手洗い専用として使用する（食器洗いや食材洗いとの併用は不可）
・手洗い器にはハンドソープを設置（補充）する

令和3年6月の食品衛生法施行条例改正に伴う注意点

令和3年6月1日に食品衛生法施行条例が改正されました。この改正により、手洗い後に手指が再汚染されることを防ぐため、厨房の手洗い器は蛇口に手を触れずに止水できる構造であることが定められました。
上記の改正により、手で開閉するタイプの蛇口は、洗った手が再び汚染されてしまうことにつながるため使用が認められないことになります。そのため、新基準に合わせて、センサー式やレバー式など蛇口に手指を触れなくても水が止まるタイプの手洗い器が必要になります。

新基準：水を止める際に、蛇口に手指が触れない構造（再汚染防止構造）になっている

新基準適合例：センサー式、肘で操作可能なレバーハンドル式

新基準では不適合とされる手洗い器 例：手で回すタイプの蛇口式

なお、新基準は令和3年6月1日の条例改正非以降の営業許可申請や営業許可証の更新から適用されます。
条例改正以前に営業許可を受けた店舗は、次回の営業許可証更新時までは適用外となります。

食器棚は戸が付いたものを使用

保健所検査基準違反事例

・戸がついた食器棚が一つも設置されていない
・食器棚の戸が外されている
・吊戸棚の戸が外されている
・戸が付いていないタイプの棚が食器棚として使われている

飲食店では、油はね・ほこり・虫の侵入などによって食器が汚れてしまうことを防ぐために、戸が付いた棚に食器を収納する必要があります。
しかし店舗によっては、食器の出し入れをしやすくするために戸が外されていたり、戸がない棚が食器棚として使用されているというケースが見受けられます。

対策方法

・最低でも一つは戸の付いた食器棚を厨房に設置する
・食器棚の戸は外さない
・居抜き物件で戸が外された棚を引き継いだ場合、食器の収納に使用するのであれば必ず戸を設置する
・戸が付いていないタイプの棚には食器を収納しない

失敗しないためにも、保健所の事前相談を活用

保健所の検査は、食の安全を守るための「食品衛生法」に基づいて行われていますが、自治体によって細かい基準等が異なります。

保健所の検査は、食の安全を守るための「食品衛生法」に基づいて行われています。食を扱う飲食店であれば、衛生的であることは基本中の基本ですので、きちんとルールを守って営業することが何より大切です。ただしそのルールは自治体によって細かい基準が異なります。保健所では、営業許可申請実施者を対象に内装工事着工前の事前相談をすることができるため、よくわからないという方には、まずは事前相談に足を運んでみてください。
事前相談では、物件の平面図や内装工事の設計図を保健所の担当者と確認し、注意点や改善点を事前に把握することができます。自治体ごとに異なる基準についても明確にできるため、保健所の検査に不安があるという方は、ぜひ早めに相談窓口へ行くことをオススメします。