カフェの店舗物件・居抜き物件を探すためのポイント

業種の概要

カフェを開業するにあたり、店舗物件の選定は成功への第一歩です。近年、カフェ市場は多様化しており、スペシャルティコーヒー専門店、コンセプトカフェ、テイクアウト専門店など、様々な業態が存在します。初めてカフェを開業される方は、まずご自身の目指すカフェのコンセプトを明確にし、それに合致する物件を探すことが重要となります。

市場動向としては、健康志向の高まりからプラントベースのメニューを提供するカフェや、リモートワークの普及に伴い、電源やWi-Fi環境の充実したカフェが注目されています。物件を探す際には、ターゲットとする顧客層がどのような場所を求めているのか、周辺の競合店の状況、そして将来的な市場の変化なども考慮に入れる必要があります。居抜き物件は、厨房設備や内装が既に整っているため、初期投資を抑えられるメリットがありますが、前のテナントの業態によっては、ご自身のコンセプトに合わない場合もあります。そのため、物件の状態を詳細に確認し、必要に応じて改修費用なども含めて検討することが不可欠です。

また、カフェの開業には、食品衛生責任者の資格取得や保健所への営業許可申請なども必要となります。これらの手続きについても事前に情報収集を行い、計画的に進めましょう。

立地選びのチェックポイント

カフェの店舗物件選びにおいて、立地は集客に直結する極めて重要な要素です。ターゲット顧客層が日常的に利用するエリアであるか、人通りの多さ、そして時間帯による人通りの変化などを詳細に調査する必要があります。例えば、オフィス街であれば平日のランチタイムや夕方以降の需要が見込めますが、休日は閑散とする可能性があります。一方、住宅街ではファミリー層や地域住民の日常的な利用が見込めますが、集客のためにはリピーター獲得に向けた戦略が重要になります。

駅からのアクセスも考慮すべき点であり、主要駅周辺や商店街、商業施設内などは集客が見込めますが、賃料も高くなる傾向があります。競合店の状況も慎重に分析しましょう。単に競合店が多いからといって出店が難しいわけではありません。むしろ、そのエリアにカフェ文化が根付いている証拠とも言えます。差別化できるコンセプトや強みがあれば、競合店が多いエリアでも成功する可能性はあります。

周辺環境としては、大学や病院、公共施設などが近くにあると、学生や職員、患者、来訪者などを新たな顧客層として取り込める可能性があります。また、人通りの多い幹線道路沿いや、視認性の高い角地なども集客に有利に働くことがあります。居抜き物件の場合、前のテナントがどのような立地で成功（あるいは失敗）していたのかを参考にすることも有効ですが、あくまでご自身のコンセプトに合った立地であるかを最優先に検討してください。

建物・内装設備のチェックポイント

カフェの居抜き店舗物件を探す際には、建物自体の構造や、厨房設備、空調設備などの内装設備の状態を専門的な視点から慎重に確認する必要があります。特に厨房設備においては、前のテナントがどのような業態であったかによって、設置されている設備がカフェの運営に適しているかどうかが異なります。

例えば、重飲食に対応していた物件であれば、排気能力やグリストラップなどの設備が強力な場合がありますが、カフェの規模によっては過剰であったり、逆にカフェのメニューによっては対応できない設備であったりする可能性もあります。排気設備は、コーヒーの香りや調理の匂いを適切に排出し、店内にこもらせないために非常に重要です。また、防水設備は厨房やトイレ周りで特に念入りにチェックし、水漏れのリスクがないか確認してください。

電気・ガス容量も、コーヒーメーカー、オーブン、冷蔵庫、製氷機など、カフェで必要とされる設備を稼働させるのに十分な容量があるかを確認する必要があります。不足している場合は、容量の増設工事が必要となり、追加の費用が発生します。給排水設備の状態も、水圧や排水の流れなどを確認し、詰まりや水漏れのリスクを排除することが大切です。

居抜き物件の場合、これらの設備がそのまま利用できるかどうかで、初期投資を大きく左右します。専門家による物件のインスペクション（建物状況調査）を依頼することも、リスクを軽減する上で有効な手段です。店舗の広さや間取りが、ご自身のイメージする客席数や厨房の配置に合っているかも重要な確認事項です。

契約時のチェックポイント

カフェの居抜き店舗物件の契約においては、特に造作譲渡契約の内容を詳細に確認することが不可欠です。造作譲渡契約とは、前のテナントが店舗内に投資した設備や内装（造作）を譲り受ける契約であり、その譲渡範囲、価格、支払い条件などを明確にする必要があります。譲渡される造作が、ご自身のカフェのコンセプトや運営計画に合致しているか、また、その価値に見合った価格であるかを慎重に判断してください。前のテナントが残した借入金や権利関係についても、事前に確認し、引き継ぐ必要がないかなどを専門家（弁護士や不動産業者）に相談することをお勧めします。リース契約となっている設備がある場合、その契約内容や残存期間、名義変更の可否なども確認が必要です。

また、カフェの開業には保健所からの営業許可が必須となります。物件の所在地や建物の構造、設備などが、営業許可の基準を満たしているか、事前に保健所に確認することが重要です。居抜き物件の場合、前のテナントが営業許可を得ていたとしても、ご自身の業態や設備によっては、新たに許可が下りない可能性もゼロではありません。賃貸借契約においては、契約期間、更新料、解約条件、禁止事項などをしっかりと理解し、不明な点は必ず貸主や管理会社に確認してください。特に、将来的な増改築や看板設置の可否などは、事前に確認しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。信頼できる不動産会社や専門家と連携し、法的な観点からも十分な確認を行った上で契約を進めることが、安全な店舗開業につながります。