シャンパンシェア、ロシアンルーレット、男氣じゃんけん!
男女共にエンジョイできる大盛り上がりのバータイム
オープン前は店がうまくいくか心配もしたというが、蓋を開いてみると、結果は予想を遥かに上回る大盛況だった。「今思うと最初の1ヶ月ってすごい数のお客さんが来てますね。何でこんなに来たのか、どこで知ったのかと思うくらい。販促はリアルにチケットを配ったり、知り合いに声をかけたりはしたけど、想像以上にこの辺の方がバババッと。まぁ私もかなり強引に客引きしましたけど。これまで一番入った記録は22人。厨房まで人でギッチリで、私とスタッフは端っこの方で動けなくなって。バケツリレーでお客さんに全部取ってもらう感じ。そうすると道行く人も興味を示して外でもいいからって、通りにも2~3人。どれくらい入れていいか分からないんですよ、最初は慣れないから」。
こうした盛り上がりを生む秘訣は、前嶋さんの提供する顧客参加型のサービスシステムだ。1,000円ずつの割り勘でシャンパンを注文できるシェア飲み、ワニのおもちゃを回して噛まれた人がテキーラを飲み干すロシアンルーレット、そして極めつけは、手を挙げた人でジャンケン大会を行い“勝者”が皆にシャンパン「Moët(モエ)」(10,000円)を振る舞う大迫力の「男氣じゃんけん」である。DJミキサーや液晶ディスプレイも完備し、その日の客層に合わせて、スマートフォンに繋げて好みの音楽を流してもらったり、みんなで踊ったり、はたまた映画鑑賞会を開いたり、自由自在にエンターテイメントを提供できる。「オタ芸のお客様が来たときはAKBかけてそこでグワ~ッてやってたり。このキャパだからできる楽しみ方。だから私も店やっているって感覚じゃないんです。もう私の部屋に来てもらってるような感覚」。
近隣店舗からの出前もOKの自由な店で、店とお客様を繋ぐファシリテーター的役割を果たしてくれているのが、常連客の中から自然発生的に現れた「大将」と呼ばれる人々だ。繁忙時に厨房に入り店を手伝ったり、お客様側の意見を吸い上げたり、そういう頼れる存在の人が何人も名乗りを挙げてくれている。客層は男女半々で30~50代のひとり客が多い。特徴的なのは男女での客単価の大きな開き。女性はだいたい1,000~2,000円という安さだが、女性達にご馳走して気分の良くなった男性陣は5,000~6,000円、さらに気分が良くなれば1万、2万落としていってくれる。最近導入したスマホで決済できる「楽天スマートペイ」も売上向上に貢献している。「現金がなくてもこれがあれば『じゃあいいか』ってなってシャンパンモエ(笑)。1万円の売り上げが立って手数料3%なら全然痛くないですから、ビジネスチャンスを失わない為にやらない手はない」。
どこの店も混雑する休前日だけでなく、休み明けの月曜夜もクローズまで賑わうというから驚きだが、これは御徒町という街の特性によるところも大きい。狭いエリアに上野御徒町駅(大江戸線)、仲御徒町駅(日比谷線)、上野広小路駅(銀座線)など複数の駅が隣接するため、乗り継ぎをする会社員達が夜遅くまで多数往来するのだ。前嶋さんいわく、酒場は地元客というのが意外に少ない。というのも地元民は最寄駅に着いたら普通に帰宅したいものだからである。中には寄り道していく呑んべえもいるが、それはごく一握り、そこでは商売できない。出店地を選ぶにあたっては、こうした地の利も考慮に入れたそうだ。