都電荒川線の走る街、大塚
鹿児島、博多の朝獲れ活魚が揃うこだわりの店
「チンチン」と懐かしい発車音を鳴らして路面電車の都電荒川線がガタゴトと走る大塚。駅前の商店街には、こぢんまりとした青果商、雑貨店、飲食店が並び、中心部にはこの地域の人々を見守るように天祖神社が静かに鎮座している。新宿・池袋からわずか数駅の都心にありながら、この街では、いまだ昔ながらのゆったりとした雰囲気が感じられる。
この地に昨年10月3日にオープンしたのが『漁師酒場・海亭(かいてい)』である。場所は、JR大塚駅南口から徒歩3分。風格ある木調の外観に、青、紫など色鮮やかな琉球ガラスの皿の装飾が目を引く。この店のいちおしは、鹿児島・佐島・博多・明石浦の各漁港から直送される朝獲れの活魚たち。明け方まで元気に泳ぎ回っていた魚を、同日夕方には都内で食すという贅沢が味わえる。
メニューに並ぶ魚は季節によって変わるが、この時期のおすすめは、生鰹の塩たたき(1,100円)。刺身にできる鮮度の鰹をあえて炙り、ニンニクと薬味で土佐風に頂く。ガーラ、スマカツオ、チカメキントキ等の珍しい魚も揃う。定番の宇和島風鯛飯(680円)は、特製卵だれに天然真鯛をつけこみご飯にかけて食べる逸品。まさに高級TKGといえる。また、ご当地鹿児島・野々湯温泉とここでしか味わえない幻の本格焼酎「旅の途中」など、酒も希少種が豊富に揃う。
席構成は、オープンカウンター10席、テーブル8席、掘りごたつの個室1室(13席)と、宴会でも一人や少人数の飲みでも使いやすい。オーナーの河邉 恒治(かわべ こうじ)さんは、これまで約30年間、飲食とは無関係の業界で会社員を勤めた後、一念発起してこの店を開業したという。今回は、河邉さんに、飲食業に転身した経緯や開業時の苦労、そして魅力的な店舗づくりの工夫などを伺った。