インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

入った瞬間から南国にワープ!?
沖縄感満載の工夫された店内

 サザエさんで有名な東急田園都市線「桜新町」駅の西口を出ると、早速サザエさん一家の銅像が迎えてくれる。その先の信号を渡りサザエさん通りを歩くこと3~4分。老舗文房具店の隣のビル3階に「いちゃりばちょーでー」はある。下から見上げると店内のオリオンビールの提灯が見え、それだけで期待が高まる。階段を上がると2階に入り口があり、暖簾をくぐるともう沖縄の世界。赤瓦にシーサー、泡盛の酒瓶や沖縄グッズが飾られた壁を見ながら3階へ。

 入店 してまず目を引くのが、ずらりと並んだ泡盛の多さ!そしてカウンター席に設えられた屋根!!いきなり南国にワープした気分にさせてくれる。各テーブルの照 明には沖縄伝統のくば笠がランプシェードに使われており、一段上がった奥の座敷には琉球畳風の素材が敷き詰められ壁一面によしずが張られている。カウンター及びテーブル席は外、座敷はお家のイメージだ。

 店名の「いちゃりばちょーでー」は沖縄の方言で「出会えばみな兄弟」の意味。兄弟、家族のようなあったかいお店だ。「いちゃりばちょーでー」の特徴は何と言っても沖縄の全48蔵の泡盛を150種類以上置いていること。全島の泡盛を常時味わえる店はそうそうないだろう。そして沖縄料理も100種類以上と多種多様だ。富澤さんも当然沖縄出身なのだろうと思って伺うと「僕は東京生まれの東京育ちなんです」と意外な返事が返ってきた。ではなぜ沖縄料理のお店を…?そこには必然とも思える偶然が重なっていた。

就職を却下された社長に偶然再会し
沖縄料理店をまかされたのが転機となった

 富澤さんは学生時代にアルバイトをしていた居酒屋に就職を希望した。が、社長に「お前は社会を知らなさすぎる」と却下され、一度はアパレル業界に就職した。しかし30歳になる前にやはり飲食業界に行きたいと居酒屋に転職。その後、精肉店で働き配達中に、くだんの居酒屋の社長をバッタリ会っ た。「駒澤の交差点の角に沖縄そばの店を出すんだけどやらないか?」社会経験をもう十分に積んだと一目見て判断されたのだろう、いきなりのスカウトだった。

 当時沖縄料理と言えばゴーヤチャンプルとタコライスしか知らなかった富澤さんだったが、まぁいいか!と引き受けた。駅から一つ先の交差点角という悪くはないが良くもな いという立地で、年間7,000万円売り上げる店に成長した。しかしこの店舗は元々都市開発にかかっていたため2年半で閉店。次の店を探している最中に震災があり、宮城出身の社長は心労が重なったのか脳梗塞で倒れてしまった。このまま残っていては迷惑をかけてしまうと思い退社し、しばらく同級生がやっていたホルモン焼き屋を手伝った。しかし同級生が上司というのはやりにくい面もあり、そろそろ自分の店を持ちたいなぁと考え始めたそうだ。

 ちょうどその頃、行きたいお店がなくなったなぁ…と感じるようになり、だったら自分が行きたいお店を作ろう!と心を決めた。義兄が学芸大学でお店を経営していたこと、駒澤の店のすぐ近くに物件が出たことなども独立への後押しになった。そんな折、通勤で使っていた原付バイクが故障。新しく来たバイクのナンバーがなんと 「79713(なんくるないさー)」。そんな偶然も沖縄料理店開業への後押しになったんですよ、と富澤さんは笑った。

自分の舌で確かめた150本の泡盛と
100種類以上の豊富なメニューで勝負!

 自分は沖縄出身ではないから、自分の島・町の泡盛や料理というこだわりがない。これを長所ととらえて、東京で食べられない沖縄料理をなくそうとメニューを考え、その種類は100を超えた。沖縄の食材を使い、東京の人が食べて美味しいと感じる味を追求した。また全ての蔵元から泡盛を仕入れた。最初は48蔵1本ずつのつもりだったが、飲んで気に入った泡盛を仕入れていくうちに一つの蔵から2本3本と増え、オープン時で100本、現在は150本の泡盛がずらりと並ぶ他に類を見ない店になった。

 2012年2月28日、沖縄酒食堂「いちゃりばちょーでー」開店。特に宣伝はしなかったが、予想を超え最初から好調だっ た。オープンから1年経った頃、遊びに行った沖縄のライブ居酒屋で知り合った人たちとのつながりで「三線ライブ」をさせてほしいと申し出があり、それから年に数回琉球音楽のライブを行っている。今年の2月1日からはランチ営業を開始。一品ものの麺類・丼ものの他に定食もあり、ランチとしては多くの種類を提供している。この辺りも富澤さんらしいこだわりだ。

 「この店に手を入れたいところもたくさんあるし、別業態でもう1店舗出したい気持ちもある。でも未来は未定ですよ」と笑う富澤さんの目はなにやら企んでいそうで、この先も楽しみで仕方がない。
(取材日:2016年2月18日)

冨澤 英一さん
学生時代に居酒屋でアルバイトをしたのが飲食業との出会い。大学卒業後はアパレル業界にて営業を担当。しかしやはり飲食業界に行きたいと30歳を前に転職。居酒屋、精肉店、沖縄料理店、ホルモン焼き屋と経験を積み、2012年2月に独 立。桜新町に「いちゃりばちょーでー」をオープンした。

いちゃりばちょーでー
住所:世田谷区桜新町1-15-22 イイダアネックス3F
TEL:03-3420-7852
営業時間:17:00~24:00
定休日:火曜日
店舗情報:食べログ