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飲食店の内見時に必ず確認すべき6つのポイント

飲食店開業に向け、最初に立ちはだかる壁が物件選び。
中でも、物件を見極める段階として「内見」が非常に重要となります。
通常の住居や事務所と異なり、飲食店の店舗物件を内見する際には、飲食店の成功を大きく左右する「立地」と「物件のスペック」をしっかりと確認しておかなければなりません。その為には、専門的な知識と細やかな視点が必要になります。限られた時間の中でも情報の抜け漏れがないよう、内見時のチェックポイントを事前に押さえておきましょう。
今回は、内見日当日の流れを想定して大事なチェックポイント6つをご紹介していきます。内見時のお供としてぜひご活用ください。
内見前に心得ておくこと
【1】コンセプトやターゲットなど出店イメージは固めておきましょう
【2】可能な限り、一緒に営業する方や内装工事業者同伴で内見しましょう
【3】1つの物件に限らず、数多くの物件を内見して比較検討することをおすすめします
内見時に 必要な物 |
➀筆記用具 | ➁スマートホン (カメラ/ライト) |
➂メジャー |
---|---|---|---|
間取り・要点をメモ | ・聞き逃し防止 ・他物件との比較が可能 ・通電なし物件への備え |
店内の寸法測定 …導入機器の設置可否を確認 |
内見の流れ
ネット検索・不動産会社へ訪問・テナント募集看板で物件を探す
架電またはWEBにて物件問い合わせ、内見・内覧会参加を依頼
店舗オーナーおよび不動産会社と日程調整
内見・内覧会参加
内見の流れとしては上図の通りです。
基本的に内見は不動産会社立ち合いのもとで実施され、営業中の店舗であれば店舗のオーナーやスタッフが同時に立ち会うこともしばしあります。物件のみならず周辺情報や営業状況など不動産会社が知りえない情報も直接聞くことができる絶好のチャンスなので、迷惑にならない程度に質問を投げてみましょう。
また、“参加者が複数の内覧会は人気物件として競争率が高く、契約までのスパンが短い“ということを念頭に置いておいてください。
内見時のチェックポイント
内見時のチェック項目一覧 | |||
---|---|---|---|
1.周辺状況 | 駅の利用者 商圏 |
滞在人口 通行量 |
競合店 周辺施設 |
2.外観 | 視認性 | 間口の広さ 専用階段の有無 |
|
3.フロア | レイアウト 動線 |
客席 (席数) |
|
4.インフラ | 電気・動力 | ガス | 水道・排水 |
5.厨房設備 | ダクト | グリストラップ | 厨房防水 |
6.その他 ヒアリング項目 |
故障・撤去 リース物品 |
トラブル歴 禁止事項 |
賃貸条件 引渡し時期 |
1.周辺状況
現地に行って確かめるべき最初のポイントが「物件の周辺状況」。
都内主要駅や人気の高い駅が最寄りであっても、土地勘がない場所に物件が位置しているとすれば安易に出店場所に選ぶのは危険です。逆に言えば、認知度の低い駅が最寄りであっても、ターゲットとする人口の通行量が多い商圏だと確認できれば大いに出店価値があるといえます。
内見時間をより有効化する為にも、内見日当日は早めに現地に向かい、物件周辺を視察してから内見に臨みましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑駅の利用者 ☑商圏 |
商店街、大手企業のオフィス、 大型スーパー・日用品店の場所をチェックし、 人の集まる場所を把握する。 |
☑滞在人口 ☑通行量 |
曜日や時間帯をかえて数回訪問し、 通行人および地域住民の男女比・年齢層・利用シーンを把握する。 |
☑競合店舗 ☑周辺施設 |
競合は同業態だけではない。 「価格帯」「ターゲット」「利用シーン」が同じ場合も競合。 いち顧客として近隣店舗で食事をすることで、 集客状況やメニュー、価格帯などを把握する。 |
2.外観
「物件の周辺状況」と並び、立地の良し悪しを判断する際に大事なポイントとなるのが「外観」。
“人目につく場所にあるか“”お店を認知してもらえる要素があるか“ということは、集客において最も重要なポイントです。店舗の顔ともいうべき外観は、通行人の店舗イメージを作り上げているということを頭に入れておきましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑視認性 | 角地・大通り沿いなど物件が見えやすい位置にあるか、 看板はどの位置にどのサイズまで掲出できるのかを把握する。 特に、近隣店舗と比較してどのように見えるかを確認すること。 |
☑間口の広さ ☑専用階段の有無 |
間口は単なる出入り口ではない。 店内の営業・集客状況を知らせたり、店舗のイメージを作り出したりと 客の第一印象に影響することを理解しておく。 |
3.フロア
店内に入ったら、まず目にする客席・厨房を含む「フロア」。
居抜き物件であれば造作物に目が行きがちですが、はじめは営業時をイメージしながら売上を立てるだけの客席と動線が確保できるか、レイアウトは適正であるか、といった点に着目しフロア全体を捉えましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑レイアウト ☑動線 |
・調理人の移動距離が最短になるように設計することが理想 ・一般的な厨房の適正面積は、店舗全体面積の25%。 ・動線幅(通路幅)は60~80㎝あれば〇 |
☑客席(席数) | 1坪=1.5席と換算して考える |
★【レイアウト】に関する参考記事:【初開業者・独立者必見!】個人で飲食店開業!小さな飲食店の厨房づくりのコツは?
★【内装工事】に関する参考シート:ダウンロード可能☟
★【内装工事費用】に関する参考記事:内装工事にかかる費用の目安
4.インフラ設備・容量
次に見るべきポイントが「インフラ設備」。
住居であれば、当たり前のように生活に必要な分引き込みがなされていますが、飲食店舗は業態や使用機器によって必要な容量が異なるので現状で備わっていないケースが多々あります。さらに、インフラ設備の新設や容量の引上げ工事を行う場合には、内装工事費以上に数百万円のコストがかかるといわれているので、必ず確認しておきましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑電気・動力 | 照明・エアコン・厨房機器等を稼働させるのに必要な電気・動力が どのくらい備わっているか、漏電はないかを確認する。 |
☑ガス | 出店業態に対して引き込まれているガス容量が足りていない場合、 工事でガスの容量を増やせるかどうかを聞いておく。 |
☑水道・排水 | ・建物に住居が存在する場合、 水道経路が分岐して子メーターで管理されているケースがある。 その場合、支払いは直接水道局に支払うのではなく 大家又は管理会社に支払うこともあるので注意。 ・実際に水道の水を流して、排水管の破損・詰まり・漏水をチェック |
5.厨房設備
予期せぬコストが発生する恐れのある「厨房設備」。
特に、重飲食での出店希望者にとっては物件選びの判断基準として大きく関係してきます。物件によって設備の有無・状態が異なる為こちらも見逃さずにチェックしておきましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑ダクト | ・ガスと同様に、業態によって必要となるダクトの種類やサイズが異なる! また、ダクトを上階まで引き上げなければいけない場合、 建物の階数によって費用が大きく異なるので要注意。 |
☑グリストラップ | グリストラップの設置は明確に義務化されていないが 「下水道法」等の排水基準を満たす為、 排水管や下水管が詰まるリスクを回避する為には必須といえる。 ただし、グリストラップは新品の置き型で約10万円程度、 加えて業者の設置費用がかかる為、 物件に備わっているかどうかでコストに大きな差が生まれる。 |
☑厨房防水 | 地下階のある物件や空中階の物件では排水の詰まり等で漏水し、 厨房の衛生度を損ねたり、階下の店舗とトラブルになるリスクがある。 防水の種類によっても異なるが、 工事費用の相場として1㎡あたり5,000~10,000円とされている。 |
★【ダクト】に関する参考記事:飲食店にダクトは必要?ダクトの役割と設置費用の相場を解説!
6.その他ヒアリングすべき項目
居抜き物件は、「コストを抑えられる」「開業準備期間を短くできる」といったメリットが先行して飲食店開業者に人気の物件となっていますが、メリットの裏にはデメリットが隠れていることも頭に入れておかなければなりません。
スムーズな契約取引と入居後のリスク・トラブル回避の為にも、自分の目で確認するだけではなく、不動産業者や店舗オーナーにきちんと話を聞いておきましょう。
チェック項目 | ワンポイントアドバイス |
---|---|
☑故障・撤去 リース物品 |
契約後又は入居後に、故障・撤去・リース物品が発覚し トラブルとなるケースは多々ある。 営業に支障をきたさない為にも事前に確認しておくことが大事。 【実際に故障・リースが多い物品】 エアコン、冷蔵・冷凍庫(コールドテーブル)、製氷機
|
☑トラブル歴 ☑禁止事項 (害虫・害獣、近隣・大家との関係) |
物件契約から1年以内にトラブルが発生する確率は約30%! 物件内外問わずゴキブリホイホイが多く置かれている場合や 壁面に穴が開いている場合は要注意! 入居してすぐに害虫・害獣駆除業者の手配が必要になる可能性もあるので、 不動産業者や前テナントに状況を確認しておく。 |
☑賃貸条件 ☑引渡し時期 |
・契約時の条件だけでなく、解約時の保証金償却や解約期間、 引渡し条件など解約時の条件も確認しておく。 ・入居中の物件の場合、店舗オーナーの営業期間とすり合わせて 引渡し時期を決めるケースがほとんどである為、 物件を気に入った場合は事前に目安を確認しておく。 |
★【トラブル】に関する参考シート:ダウンロード可能☟
★【契約】に関する参考記事:
【1】【居抜き物件のメリット・デメリット】事前にトラブルを防ぐ物件選びのコツ
【2】【新規開業者必見】飲食店舗の物件探しにおいて知っておきたいお金事情
最後に
いかがでしたでしょうか。
これから内見を始める方にとっては見るべきポイントが多く感じられたかもしれません。しかし、単に物件の雰囲気を見に行くだけではダメだということがお分かりいただけたかと思います。
物件探し含め、飲食店オープンまでは体力勝負です。時間と労力を無駄にしない為にもご紹介したポイントをきちんと押さえ、間違いのない物件選びを目指しましょう。
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