スピード重視なら居抜き開業

ぐずぐずしている間に、人生は一気に過ぎ去っていく――古代ローマの哲学者であるセネカの名言だ。時間は有限な資源で、浪費した分は一生戻ってはこない。だからこそ、本屋には「超速仕事術」なるビジネス書が並び、いかに速度をもって成果を出していくかについて人は考え続ける。

飲食店開業志望者の中には、居抜き開業のメリットとして開業までのスピードを挙げる人も多い。スケルトンの物件でゼロからお店を作り上げていくよりも、引き継いだ造作を活かし、準備期間を短縮したいという狙いだ。事実、ABC店舗を利用したオーナーの方にも、居抜き開業によって驚くべきスピード開業を実現させた方もいる。今回はそんな彼らの話をもとに、居抜き店舗を利用したスピード開業のコツに迫ってみたい。

スピード開業を実現した3人の事例

上林さんは、東急田園都市線で渋谷から1駅、人気の三軒茶屋駅前エリアに「魚ぎょ 三軒茶屋店」をオープンさせた。上林さんはにとっては若林の本店に次いで2号店のオープンだ。一店目の開業で様々な困難を経験し、初期投資は最小限に」という成功法則を導き出した上林さん。手のかからない物件を見極めることはもちろん、上林さんを含めた店舗スタッフがアイデアを出して手を動かすことで、引き渡し後わずか14日で開店という驚きのスピードへ繋げることができた。壁一面に描かれた味のある大きな蛸の壁画はアルバイトスタッフの作で、天井に酒瓶のラベルを並べるアイディアも自分たちで発案するなど、創意工夫を重ねた結果、元が韓国料理の居抜き物件とは思えない程のイメージチェンジに成功している。

東京メトロ千代田線・湯島駅から徒歩1分の距離に、黒と茶をベースにデザインされたシックな焼肉店「炭火ホルモン ハルマキ」がある。この店のオーナーである大名さんも、物件引き渡しからおよそ1ヶ月で開店を迎えることに成功している。「あれは今思い返してもドタバタの日々でした(笑)」と苦労を語る大名さんだが、前店舗の白い壁面を自らペンキを用意して黒く塗り直すなど、自らの手を動かすことでスピーディーな開業を実現。壁面については、業者に依頼する場合と比べ、10分の1程度のコストに抑えることにも成功した。

東急東横線の人気エリア、学芸大学駅に「和彩 遊佐」を構えた遊佐さんも、知人デザイナーの協力や自らの有田焼コレクションを用いることで店舗の雰囲気を素早く一変させた。遊佐さんの場合、前店舗と開業予定の店舗がどちらも和食屋であり、また引き継いだ設備の保存状態も素晴らしいものであったため、8割方の設備を継続使用できたという。物件内覧からオープンまでわずか3ヶ月、十分なスピード開業といえよう。

大切なのは「見極め」

彼らの話を振り返ると、手のかからない物件選び、そして自分や協力者と共に手を動かしてお店づくりを進めることが共通項として挙げられる。当然、内装業者に大規模な依頼をすれば、その分予算も時間も発生してしまう。物件のどの部分に手を加える必要があるのか、それは業者に依頼すべきか自分たちで手を加えるべきか、その見極めを行うことがスピード開業のコツといえよう。素早いオープンを目指す開店希望者にとって、「ぐずぐずしている間」はないのだ。