会社員から料理人の道へ
自戒の念込めた店名は「身ノ程知ラズ」
閑静な住宅街の落ち着きと、学生街の賑やかさが共存する稀有な街、明大前。駅を降り、幾重にも重なる小路を抜けると、荒々しく塗られた手塗の壁に、木製の扉が趣を漂わせる一軒の店にたどり着く。表札に「身ノ程知ラズ」の文字が躍るこの店は、オーナーの千場 誉さんがお一人で営むコース一本の割烹だ。
元々東京海上日動火災保険に務める会社員だった千場さんは、よく週末に同僚や友人たちとホームパーティを開いていたそうだ。「最初は各々が好きなつまみを持ち寄っていたんですけど、なんか物足りなくなってきて自分で料理するようになったんです。その延長線上で、今みたいなコース仕立てにするようになって、そしたらこれ楽しいなって。笑」 ここから、千場さんが料理人を目指す日々がはじまった。9年間務めた会社を辞め、見様見真似で技を学び、たった2年で独立を果たしたのだ。店名の身ノ程知ラズは、そんな飲食業経験の少ない自分への戒めも込めて名付けたという。