自分の料理で食べる人が笑顔に
その喜びがいまの原点
池袋から各駅停車で15分。東武東上線・東武練馬駅は、交通至便な立地から、近年「住みやすい街」として人気を博している。北口すぐのイオン板橋を左に見て、徒歩3分ほど。三叉路に構えるマンションの1階に入るのが、中華料理「鳳龍亭」である。
マーボー豆腐、中華あんかけおこげなどの定番料理のほかに、お酒に合いそうな「牛アキレス腱の醤油煮込み」、「砂肝とヒザ軟骨のガーリック炒め」、中華には珍しい「石焼シャケ炒飯」、「石焼マグロキムチ炒飯」など、ユニークな品書きがメニューに並ぶ。本格的なラインナップが、主に800~900円台というから驚く。
「中華なのに油っこくない」と、幅広い層に評判の上品な味を支えるのは、オーナーシェフの佐々木剛さん。数々の高級中華料理店を渡り歩き、20年余の経験を積んだ名料理人である。「高級店の味をリーズナブルに楽しめる店を」と、2015年3月、この地に自店をオープンした。
「高校時代に趣味の料理を家族にふるまって喜ばれた経験が、料理人を志すきっかけでした」。佐々木さんの原点は料理が人に与える喜びである。卒業後、料理学校に入学して各種料理を修めた際も、厳しい作法がなく、皆で和やかに食卓を囲める中華料理が、食べる人が一番笑顔になれそう、と中華の道を進みだした。
佐々木さんが独立を考え始めたのは、2010年頃。色々な店で勤務するうちに、より自分らしい料理を、自分らしい飲食空間で提供したい、という思いが強まった。飲食店での接客経験が豊かな奥様の存在も心強かった。まずは地元不動産店での物件探しを開始。しかし、なかなか紹介が受けられず、ネットでの物件検索に転換。5年ほど経って出会ったのが、ABC店舗ホームページで目に留まった現店舗である。