開業者インタビュー

ラーメンに正解は無し!顧客への思いやりから生れた世界に一つの鶏白湯麺

麺や KICHŌMENさん
ラーメンに正解は無し!顧客への思いやりから生れた世界に一つの鶏白湯麺

歴史あるラーメン激戦区・荻窪
几帳面な店主が編み出した、とことん身体に優しい鶏白湯

JR 中央線・東京メトロ丸の内線「荻窪」駅は、新宿まで10 分、丸の内線始発を使えば都心まで座って移動できるため、若い会社員や学生達に人気の街である。食の名店も多いが、特に有名なのがラーメンだろう。戦後初期にルーツを持つ「春木屋」「丸長中華そば店」といった歴史ある荻窪ラーメン老舗店にくわえて、豚骨・魚介・家系・味噌・油そば・つけ麺――ありとあらゆる種類の麺屋が百花繚乱の様相を示し、マニアのみならずラーメン愛好者にとっては訪問必須の街となっている。

その荻窪の駅周辺繁華街の喧噪から少し離れた住宅地に、2015 年12 月17 日、新たに個性的な店がオープンした。駅南口徒歩10分、環八通り沿いの「麺や KICHŌMEN( きちょーめん)」である。店名の通り「几帳面」を自負する店主様が一人で切り盛りし、低脂肪・高タンパクのオリジナル鶏白湯「鶏こく麺」を提供している。「ここは駅前と違い、すぐ裏は高級住宅街。単身OL さん向けのマンションも多い。だから脂こってりの豚骨とかじゃなくて、年配の方や女性に喜ばれるような“身体に優しいラーメン” を作ろうと思ったんです」。そう語る店主様の作る鶏白湯は100%鶏ベース。白濁したスープはとろみがありながら脂っぽさを全く感じさせず、最後までゴクッと飲んでしまえそうな旨さだ。

「身体への優しさ」という観点から、食材も国産の宮崎鶏・三元豚を使用する。具材は手作りの炭火焼チャーシュー、味玉、メンマ、水菜。これに複数のスパイスから作る自家製薬味が添えられ、まろやかなスープの絶好のアクセントとなっている。細麺はのびやすいので一度に2 玉しか茹でないというこだわりよう。こうした丁寧な味づくりが受けて、狙いどおり、顧客の50%以上が女性客の日もよくあり、上は80 代、下は2 歳 のお子様まで幅広い年齢層からの支持を得ている。今回はこの素敵なお店が出来るまでの誕生ストーリーや、店づくりの工夫、ワン・オペレーション個人店の苦労や喜びなどを詳細に伺った。

サラリーマンからラーメン開業!
内外装は「女性の入りやすい店づくり」に細部までこだわり

元サラリーマンだった店主様が飲食店開業に至った経緯は、もともと料理が好きで、「和食などと違い、扱う材料が少ないラーメン店は比較的やりやすいのでは」と思い立ったことから。会社を退職し、ラーメン専門スクールで麺についてのイロハを習得しながら、前から好きだった中央線エリアで出店地を検討。特にラーメン激戦区の荻窪は主要候補地のひとつだったが、駅前は高家賃、空室が出ても2 階だったりとなかなか理想的な物件が見つからなかった。

数えきれないほどの物件にあたった末、ようやく4 ヶ月後に出会ったのが、立ち飲み居酒屋居抜きのこの物件だった。荻窪の家賃相場からすると高めの物件だったが、その代わり、造作が美麗だったため、双方の釣り合いで契約を決めたという。「特にカウンターは一枚板の立派なもの。職人さんに4 日間かけて削り直してもらい、木目を美しく出して活用しています。同じ家賃でスケルトンだったら初期費用がかかりすぎて、借りるのは難しかったかもしれませんね」。

内外装デザインはターゲット層を意識して「女性ひとりでもすっと入りやすい、食べやすい店づくり」をコンセプトとした。それに沿って、客席側の壁色は暖かみのあるローズを、厨房側は明るく清潔感があり手入れもしやすいホワイトのメラミン素材を採用し、ラーメン店には珍しいほどあか抜けた印象を打ち出した。細かいところでは、客席に髪ゴムを入れた瓶を置くという配慮も。「いま検討中なのは、入口の目隠し。全面ガラス張りなので、中にいるお客様が通りからの視線が気にならないように、うまいぐあいに隠せるものが必要かも」と、顧客の入店障壁を低くする工夫を重ねつづけている。

改装工事で難しかったのは、レイアウト上の制限だった。入居ビルの階段位置により、L 字が2 つ重なる間取り。そのため、スペース上の問題から4 ドアではなく2 ドア冷蔵庫しか置けず、仕入れの量やタイミングを調節したりと食材のストックに苦心している。その他にも、店を借りた後に、店頭の鍵の使いづらさや裏口ドアの重さなどに気づいた。「ラーメン作りには直接支障はないけど、ちょっと不便ではありますね」。居抜き物件の見極めポイントを挙げれば切りがないが、こうした箇所の確認も考慮に入れた方が良いかもしれない。

新規開業店の前に立ちはだかる「3 ヶ月の壁」
打開策はパーソナルな顧客対応

開店から1 周年を迎えようとする今、店の一番の課題はリピータの獲得。一般的に飲食店は、開店後3 ヶ月間は新店チェックにやって来る一見客の来訪で繁忙となる。だが、その後客足が落ち着いていくという「3 ヶ月の壁」とも呼ぶべきハードルにぶつかるところも多い。人の流動性が少ない地域で開く地域密着型店舗ではその傾向がより顕著なため、リピータ数を増やすことが安定的経営の要となるのだ。「週3 日で通ってくれるお客様もいますが、ラーメンは中華やイタリアンと違って毎日食べるものではないので、そこも難しいところだと思います」と店主様は語る。

こうしたとき、機敏に対策を実行できるのが個人店のアドバンテージだ。店主様の取り組みのひとつは、お客様の様子を見ながらのパーソナルなサービスの提供。「たとえば、常連さんの顔を見て” 今日はちょっと疲れているな” と思うと、口には出さないけど油をちょっと減らす。すると” なんで分かるの?” とお客さんも喜んでくれる。そういわれるとやっぱ嬉しいですね」。塩分や油の調整の他にも、特に土日に多くなるファミリー客に対しても、子ども向けのチャーシューカット、ミルク用のお湯の提供など細かいカスタマイズを欠かさない。全6 席と余裕ある席構成のためベビーカーが入れられるのも喜ばれているという。お世辞を言わない子どもたちから「美味しい」の声をもらうととりわけ嬉しいという。

来店動機をアップするべく、メニュー数の増加も検討中である。現在は鶏こく麺3 種のみだが、今後はつけ麺、油めん、チャーシュー丼などのご飯ものメニューも出していきたいそうだ。課題は、ワン・オペレーションゆえの多忙さ。「炭火焼チャーシューを炒めるとそれはもう美味しい丼ぶりが出来るんだけど、その分作業が増えちゃうんですね。皿洗うのも僕一人だから。お客さん増えなければ人雇えないし、増やさないとお客さんが飽きてマンネリになっちゃうし。それもジレンマなんだよね」。その一方、常に大盛りや2 杯注文をする熱心なファンに恵まれ、「鶏こく麺一本でいい」と言ってくださるお客様も多く、研究を重ねた味には確かな手応えを感じている。

真っ直ぐで飾らぬ性格が何よりの魅力
「何でもあり」のラーメンの可能性追い求めつづける

実は「オープン以来、丸々休めたのは1 日だけ」という激務ぶりで、体調を崩してしまったこともあったそうだが、飲食は苦労の分、喜びも大きいという。「商売も大事だけど、地元の人とのコミュニケーションも大切。時にはお客さんと一緒に飲んじゃうときもある(笑)。収入面では会社員時代にはまだ及ばないけれど、サラリーマンと違って面と向かって接客して、何百円のラーメンを作って喜んでもらえる。お客様が帰りたくなくて1 時間くらい話し込んでいくこともある。苦労も多いけど、楽しみもあるんですよね」。飲食業の醍醐味についてそう語ってくれた。

実際、話を伺っているだけでも、店主様の誠実なお人柄がよく分かる。改装時に排水溝が未整備で土にまで水や油が浸みこんでいるのを発見して、セメントやコーティング剤を買い込み、高校時代に習った三角関数の知識までフル動員して、自作で溝を施工。「あのままだとコバエや臭いも出て不衛生。それにこうして少しでも綺麗に長く使っていけば、ABC さんも前に僕が借りたときよりも貸しやすくなると思ってね」。不動産会社のことまで思いやっての配慮には頭が下がるばかりだ。

几帳面な性格は随所に現れており、衛生面のため調理時には必ず透明なプラスチックのマスクを着用。会計時に硬貨に手が触れるのを防ぐため、以前は小さな「お釣りバッグ」を沢山用意していたという。その一方、後は差込口にコードを入れるだけの固定電話には手が付かず、この1 年間、店電はつながらないままという大らかさも。シャイでもあり、先日持ち込まれた雑誌掲載オファーはすげなく断ってしまった。何とももったいない話だが、こうした店主様の豊かな個性に魅かれる方も多いことだろう。

最後に、これから開業する方々に向けてのアドバイスを伺った。「やはり、店を借りるのにいかに親身になってくれる不動産屋さんを探すか。あと、場所を安易な気持ちで決めると失敗する。重飲食の店を借りるときにはグリーストラップや排水のチェックも必要ですね」。ご自身もさらなる店の繁盛に向けて奮闘中だが、ラーメンに対する探求心は尽きない。目下、健康食品とコラボさせたよりヘルシーなラーメンを極秘開発中という。「僕の先生が言っていたことだけど、ラーメンには正解はない。旨ければいい。ラーメンは何でもあり、何でもいい。凄い奥が深いんです」。ハイクオリティな食とあたたかな人間味が揃ったこの店の魅力を、ぜひ沢山の方々に体験していただきたい。
(取材日:2016 年11 月17 日)

麺や KICHŌMEN
住所:杉並区南荻窪1-22-12
TEL:03-5941-8813
営業時間:平日 11:45 ~ 14:00/18:00 ~ 21:00
土・日・祝日 11:30 ~ 14:30/18:00 ~ 20:00
定休日:火曜日
店舗情報:食べログ


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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