インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

通な店が集まる“門仲一丁目”界隈
カンガルーやワニの豪州食材が楽しめるダイニング

江東区・門前仲町は近年ますます人気が高まる飲食激戦区。観光客には深川不動尊や富岡八幡宮の界隈が人気だが、食通を自負する方は、清澄通りを渡って反対側のエリア(住所でいうと門前仲町1丁目)にもぜひ足をのばしていただきたい。この周辺には実に個性的な店々が集まっていて、何度通っても飽きがこない。そのひとつがここ『プラスアルファキッチン』である。

「カラダよろこぶ」をコンセプトに、味だけでなく栄養もたっぷりのおつまみの数々を提供する。とりわけ目を引くのは、カンガルーやワニ、ラムといった“オーストラリア食材”を使ったメニュー。普段なかなかお目にかかれないが、実は、カンガルーは体脂肪率2%で超低脂肪・高タンパク、ワニも低カロリーでコラーゲンたっぷりと超一級の健康食材なのだ。ラムも脂肪燃焼効果があるカルニチン成分が豊富なことで有名だ。「ワニやカンガルーはイメージ先行で最初頼まない方も多いですが、いちど食べてみると想像以上においしい」と語るのはオーナーの星乃健志さん。名物「カンガルーヒレ肉の香り焼き」や「ラムカツ」はリピート続出の人気ぶりだ。

旅好きな星乃さんが全国各地から見つけてくるご当地食材も見逃せない。豪州産ワイン30種、豪州ビール6種に加えて、日本酒も専門店にないレアものが揃う。現在、メインで置くのは、日本酒のイベントで友人に紹介された埼玉県幸手市・石井酒造の地酒。米の旨みが強く、ワニやラムなど主張の強い素材をうまく包んでくれる。2015年4月1日のオープンから、今春でめでたく2周年。下は20代から上は60代まで、幅広い層の常連さんに恵まれているという人気店の開業経緯や店づくりの工夫を、星乃さんに伺った。

人生を変えた大自然の国、オーストラリア
大切な人たちが後押ししてくれた独立開業

星乃さんとオーストラリアとのご縁は、高校時代に遡る。交換留学生として渡航したオーストラリアで、オージー達のイージーゴーイングな考え方にすっかり魅了された。「日本だと世間体を気にしますが、向こうでは自分を出しても全然いやな顔をされない。自分らしくいれた。自然も豊かで大好きになりました」。大学も現地に進学し環境学を専攻。高校時代も含め、通算4年間を大いなる自然の中で過ごした。

大学卒業後は、東京の専門商社に就職。仕事は楽しかったが、星乃さんには忘れられない夢があった。それは、自然の良さを自発的に学んでもらえるような“滞在型レストラン”をつくること。そんなとき、大切な人の訃報が相次いだ。一人はオーストラリアでお世話になったホストマザー。もう一人は大学時代の友人だった。自分の夢を打ち明けていた2人の旅立ちに「究極の方法で背中を押された気がした」と開業を決意した。

しかし、いきなり田舎に滞在型レストランを開いても誰も来ない。ならば、自分という人間を知ってもらうために、まずは東京で店を開こう。これが星乃さんが描いた構想だった。会社に退職の決意を伝えると、最初はおどろかれたが、理由を説明すると「応援する」とあたたかく送り出してくれた。開業の地・門前仲町は会社員時代によく飲み歩いた街だった。「激戦区だけど面白い街。ピンポイントで探しました」。そして実に、物件を探し始めて最初に出会ったのが、現在開業している店だった。夢の滞在型レストランにつながるように、内装は木をふんだん使って山小屋のようなイメージに仕上げた。

栄養、健康、ご当地食材の発信
いろいろなプラスアルファが得られるお店

星乃さんによると、店名の「プラスアルファ」には色々な意味が込められている。一つは、感謝。プラス(+)を「T」、アルファを「A」と読むと、「TA(ター)」となり、これはオーストラリア英語で「ありがとう」を意味する。二つ目は、健康。店の料理で栄養を補給して元気になってほしいという想いがある。そして三つ目は、地方の物産の情報発信。星乃さんがこれまで旅してきた土地の優れた食を紹介する場ともなっている。ただ食欲を満たすだけではない、「プラスアルファ」の価値が得られる。それがこの店の大きな魅力となっている。

4年間のオーストラリア留学以外にも、ピースボート参加経験もあり、現在も平均月1回は国内各地を旅して回るという生粋のトラベラーである星乃さん。開業に際しても、これまで旅先で出会った多くの人たちが応援を寄せてくれた。例えば、店頭ののれんのロゴタイプは、石垣島を訪れた時に仲良くなった友人がデザインしてくれたもの。また、店内の随所に飾られているワイヤーアートは、ピースボート時代に知り合った針金細工師の草深将雄氏の作品。「これからも色々な所から面白いものを引っ張ってきたい。自分の仕事と遊びをリンクさせることができるといいなと思います」。

家のようにあたたかな雰囲気のためか、一度訪れた客のリピーター率はとても高い。一人客の場合も、星乃さんか店長が話しかけたり、常連さんに紹介したりして、居心地のよい空間を心がける。年上の方にもフランクに話しかけるのも打ち解けていただける秘訣だという。開業で一番苦労したのは、補助金や官公庁の許認可申請などの各種手続き。なかでも警察署への深夜営業許可はネットで調べてもなかなか情報が分からずたいへんだった。深夜0時以降に酒類を提供する場合に必要な許可だが、星乃さんの店の閉店時間は0時30分。営業時間短縮も考えたが、門仲の終電時間がだいたいその位の時間のため、それまでお客様が店にいられるようにしたい、とそのままにしている。

将来は、自然に触れられる滞在型レストランを
明確な目標がモチベーションを支えてくれる

今後の増店も視野に入れながら日々の営業に励むとともに、長年の夢である滞在型レストランの構想も膨らませている。「自然豊かで、温泉があって、食べ物が美味しいところで。農家やアクティビティ会社と契約して、お客さんにも畑で収穫してもらったり。長野あたりだと新幹線があるので都会の人も来やすいかもしれませんね」。未来の店も、きっとここのように皆に愛される集いの場となるにちがいない。

これから飲食店開業を目指す人にはこんなメッセージを頂いた。「脱サラした僕でもお店ができた。それにはやっぱりちゃんとした構想。そして、その先のイメージも持っていたら、お店をやるモチベーションも上がる。何としても成功させないと先に進めませんから。お店を開いて終わりじゃなくて、その先も描いていたらいいんじゃないかと思います」。
(取材日:2017年5月25日)

星乃 健志さん
1981年、大阪府生まれ。高校時代、AFS交換留学生としてオーストラリアに留学。大学も現地に進学し、環境学を修める。卒業後、専門商社に9年間勤めた後、門前仲町に『プラスアルファキッチン』を開業。「カラダよろこぶ」をコンセプトに、ヘルシーと美味しいが両立するおつまみメニューを提案する。豪州産のワインやビール、カンガルーやワニなどのオージーフード、日本各地の地酒など旅先で見つけた名食材の紹介にもつとめる。

プラスアルファキッチン
住所:江東区門前仲町1-12-8 ミナミビル1F
TEL:03-6458-8240
営業時間:月~金 11:40~14:00(L.O.13:30)/18:00~翌0:30(L.O.23:30)
土 18:00~翌0:30(L.O.23:30)
定休日:日曜日・祝日
店舗情報:HPFacebook食べログ