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居酒屋を経営するときに必要なことって何?開業段階の進め方 Vol.1

居酒屋を経営するときに必要なことって何?開業段階の進め方 Vol.1

外食業のなかでも店舗数が比較的多い「居酒屋」。専門特化業態より参入障壁が低く、料理人経験がなくとも開業できるメリットがある。近年ではチェーン系居酒屋よりも、串カツや均一焼鳥などの専門居酒屋が急成長。総合居酒屋は息をひそめている傾向にある。

こうした流れを踏まえ、今回は居酒屋を開業・経営する際に必要なこと、そして成功するための方法を紹介。開業前にぜひ読んで欲しい内容を収めた。

開業前に必要な準備は?

開業資金の確保

独立を目指している人なら、資金の用意はしているだろう。先立つものがなければ、理想のお店を築くことはできない。だが実際に開業費用にはどんな資金用途があるのか。順立てて説明する。

1.物件取得費

「物件取得費」は物件契約の際に支払うお金。ただ一口に物件取得費と言っても、細かく内訳があるので事前に知っておく必要がある。

だいたい契約時に支払うものは通常「家賃(前家賃)」「保証金(敷金)」「不動産仲介手数料」となる。また稀に「礼金」を設けている物件もある。これらは部屋を賃貸契約する際と同様のものと考えてよい。

これらに加え、居抜き物件を借りる際に必要となるのが「造作譲渡料」だ。前のお店の内装や厨房機器、什器備品などを買い取る資金で、造作の状態ではなく、物件の立地によって価格が決まっていることが多い。また造作譲渡料は前オーナーが値づけしているため、金額の交渉が可能だ。

余談ではあるが、なかには「初期投資0円」を謳う店舗転貸会社が存在する。仕組みとしては物件取得費分を月賦払いにし、5〜10年契約を締結するもの。初期投資額を抑えての開業ができるため魅力的ではあるが、月々の経費を圧迫する。また契約年数を経たずに退店した場合のトラブルなどにもつながるため、十分に仕組みや契約内容を理解した上で契約したい。

 

2.内外装工事費

開業資金の50%以上を占めると言われるのが「内外装工事費」だ。居抜きの場合は状態によるが、最低0〜30万円で開業したというお店も少なくない。一方でスケルトンからの施工の場合は、坪30〜50万円が相場と言われる。

例えば前テナントが飲食店でない場合は、厨房インフラから造る必要があるため、当然その分のコストがかさむ。また電気容量やガス容量が足りない場合、追加工事が必要となり、さらに上乗せして工事費がかかる。そのため事前に不動産屋か大家に、物件の設備容量を確認しておこう。

こうした「内外装工事費」は、内装業者や施工会社に支払うものだが、これも交渉できる。できれば最初に投資額を伝えておきたい。そうすれば予算に合わせて業者が工事内容や期間を提案してくれるだろう。

工事費の支払いは現金払いが基本。着工前に3分の1、工事途中で3分の1、引き渡しで3分の1を支払うのが一般的だ。あとは業者との交渉次第で、支払いを変更できる場合もある。

 

3.厨房機器費

一般的な居酒屋に必要な厨房機器は次の通り。冷凍冷蔵庫、シンク、ガスストーブ、製氷機、コールドテーブル、オーブン、フライヤーなど。業態によって炭焼き台やサラマンダー、スチームコンベクションオーブンなどが必要となってくる。

新品で購入した方が長く使え、保障もきくため安心だが、新品で揃えるのは難しいだろう。その際は中古機器を探して購入するのがよい。ただ中古で購入する際は、設置場所が十分確保できるかに注意したい。

譲渡された厨房機器を使う場合は、より注意を払った方がよい。営業後にある日突然故障することも多く、その際にかかる費用が思った以上に高かった、休業して工事をしなければならなかったなど、思わぬトラブルにつながるため、十分なメンテナンスをおすすめしたい。

 

4.店舗設備費(椅子・机・食器・メニュー・冷暖房設備)

「店舗設備費」は椅子、テーブル、棚などの什器購入費、食器や調理器具などの備品購入費などが含まれる。言わば、お店の雰囲気づくりなどに直接関わってくる費用と考えてよい。そのため創意工夫を凝らすことで、投資額を削減することができる。

例えば譲渡された椅子やテーブルのイメージが異なる場合でも、脚はそのまま天板や座面だけを変える、色を塗り直すなど。また食器や調理器具などは、量販店やネットショッピングで安く購入できるので、おおいに活用したい。

 

5.運転資金

飲食店は未だ現金商売であることが多い。そのため、オープン後も売上げ金に頼らず支払いができるよう、「運転資金」は十分確保しておきたい。これがなければ、翌月の仕入れができない、家賃がまかなえないなどに発展してしまう。特に業者間との信頼関係がない独立1店目は、掛けで買えないことも多いので注意する。

「運転資金」は最低でも2〜3ヵ月は利益なしでも営業できる額がいいが、ベストは6ヵ月以上。つまり家賃、仕入額、人件費、水道光熱費など、月にかかるコストの6倍は残しておくのがよいということだ。そうすれば月々の利益と合わせ、ゆとりのある営業ができる。

物件取得費、内外装工事費、厨房機器費、店舗設備費などを支払い、残った額を運転資金と考える人も多いが、できれば運転資金をいくら残すかを考えた上で、その他の投資を見直すのがよいだろう。そうしなければ営業後のキャッシュがなく、借金でまかなわなければならないといった事体に陥ってしまう。

 

競合店の調査分析

繁盛する・儲かる仕組みを分析し、自社にも取り入れる

競合店調査では、自店のコンセプトに近いお店、自店の商圏内にある飲食店に行く。ただ繁盛していないお店や、チェーン店に行く必要はない。繁盛していないお店から学ぶことはないし、チェーン店はターゲット層や客単価などの情報がネットなどで容易く入手できるからだ。

また商圏内でなくとも、繁盛店と呼ばれる人気のお店にも是非行って欲しい。いわゆる「繁盛店視察」から学ぶことは多い。繁盛店はブームにのっているお店に行くのではなく、悪立地でも何年も営業しているお店を見ることをおすすめしたい。個人店であれば尚更、そういった地元密着で愛されるお店から学ぶことはたくさんあるはずだ。

しかし繁盛店視察に行って満足するだけでは、意味がない。視察をした後は自店に取り入れられそうなこと、逆に不快に感じたことなどを書き出そう。それによってオープン後の戦略立てにも活かせるだろう。

 

調査の際は5つのポイントを抑える

競合店視察の際に見るべきポイントは多くあるが、ここではおおまかに5つ挙げたい。

①ファサード、②店舗レイアウト・雰囲気、③接客、④料理の質と価格、⑤料理の提供時間

まず①ファサードは、遠くからの視認性、入店しやすい工夫があるかなどを見る。フリ客を誘うようなキャッチや写真の見せ方など、真似できることは取り入れたい。

②店舗レイアウト・雰囲気では、客層とお店のレイアウトを見る。どういった客層が多く利用し、お客がどのような目的でお店を利用しているのかを感じ取るとよい。例えば家族客もターゲットに入れている場合、小上がりの個室があるなど、繁盛店にはちょっとした配慮が多くあることが多い。

③接客は、最も見たいポイント。個々人のサービス力は異なるため、ここは真似のできない部分。そのため見るべきは、誰でもできるサービスだ。例えば予約したお客の名前を書いた紙がテーブルにある、ウェイティングの際は小さなビールをもらえるなど。こうした気配りは自店でも取り入れやすい。

④料理の質と価格も重要。お店の人に許可を得て、メニュー表を写真に撮っておくのがおすすめ。看板商品は必ず注文する他、自店で提供する予定のメニュー(ポテトサラダや煮込みなど、居酒屋の一般的なメニュー)も注文しておくとよい。料理の盛りつけ、ボリュームと価格が見合っているか、そして客単価はどのくらいかを知る手かがりにもなる。

料理を学んできた人なら、⑤料理の提供時間を見ることで、だいたいの調理内容がわかるはずだ。そこから仕込みをどこまで行なうかなど、調理工程の組み立ての参考にしよう。

 

コンセプトデザイン

自身のやりたいことを5W2Hで整理する

コンセプトとは、お店をつくるうえで重要なもの。これによって看板、料理、メニュー名、店舗デザインなどがすべて決まってくる。自身が立てたコンセプトを一貫しなければ、まとまりのないお店となり、お客の印象に残りにくくなってしまう。

コンセプトを考えるときは、5W2Hで考えると見えてくる。つまり①なぜ(Why)、②どんなメニューを(What)、③誰に(Who)、④どこで(Where)、⑤いつ(When)、⑥どのように(How)、⑦いくらで(How much)で分解して考える。具体的には、次のように当てはめていくとよい。

①なぜ

居酒屋を始めるきっかけ、どんなお店にしたいか

②どんなメニューを

看板商品は何か、サイドメニューは何か、ドリンクは何か。「このお店にしかない」目指して来てもらうための目玉商品、看板商品は必ず立てる

③誰に

ターゲット層。「30〜40代の男性」だけでなく、ライフスタイル、年収などの属性も踏まえたメインターゲットを考える

④どこで

立地。③と④はリンクしており、ビジネス街なら会社員がターゲット。

⑤いつ

営業時間、定休日

⑥どのように

メニューの提供方法やスタッフ人員、ユニフォームなど。客前演出する看板メニュー、ボリュームを多めにしてお客にシェアしてもらうメニューなど

⑦いくらで

単品価格、客単価の設定

 

コンセプトは誰にでも、わかりやすく。

①〜⑦を書き出したら、全体を見たときに矛盾はないか、誰でも理解できるかなどを確認する。あくまでこれはコンセプトの基盤となるもので、ここから削ぎ落してシンプルにしていく必要がある。オーナーは把握していても、スタッフにこれらすべてを把握してもらうのは難しい。コンセプトはお店で働くスタッフ全員が理解していなければならい。そうでなければ、コンセプトは少しずつズレていき、最終的にはコンセプト自体が成り立たなくなる可能性もある。そのためコンセプトは、シンプルで誰にでもわかりやすくする必要があるのだ。

 

立地調査

業態によって最適な立地を見極める

立地調査は、オープン後の集客にかかわる非常に重要な要素。そのため物件契約前に、自身がターゲットとしている客層がいるか、またはどんな利用者層が見込めるかを見極める重要な要素となる。

どんな居酒屋にするかによって、最適な立地は変わる。例えば低客単価×高回転ビジネスを考えているなら、駅前の一等立地でも十分採算はとれるだろう。一方、高客単価で1回転のみの割烹寄りの居酒屋であれば、駅から離れた場所でもやっていける。

最近ではネットで来店前に事前情報を確認できるため、立地は関係ないとされる見方もある。しかし、それはあくまである程度人気になってからの話。オープン直後から集客するためには、そこにいる客層を見極め、そのターゲットに対してどのようにアプローチできるのかを把握しておきたい。

 

1週間の実地調査で集客予測が立つ

実地調査ではまず「居酒屋の需要がある場所か」を見る。交通量が多い幹線道路でも、そもそもアルコールの売上げが見込めない立地であれば、居酒屋を出店するのは難しい。さらにチェーン店が多くひしめく場所や、個店居酒屋が多い場所など、競合が多すぎる場所も厳しいだろう。

めぼしい物件を見つけたら、1週間はその物件の前の人通りを見るとよい。ランチをやるなら昼間の店前通行人数、夜の通行人数を調べる。さらに雨天と晴天による通行人数の違いも見ておくのがベストだ。またそのなかでもターゲットになりそうな人の数もチェックする。基本的なデータとして、最寄り駅の乗降客数、昼間人口、夜間人口も知っておくとよい。

 

メニューの作成

はじめに看板商品を考える

メニュー開発でまず先に考えるのは、このお店にしかない、目指して来てもらうための看板商品。それでは独自性のある料理でなくとも、世間に出尽くした料理を破格の値段で提供する、提供方法をちょっと変えるなどでもよい。ただ来店したら「食べたい!」と思うようなメニュー、そして印象に残るメニューである必要がある。

看板商品が決まったら、その脇を固めるサイドメニューを考えよう。居酒屋では、ポテトサラダ、煮込み、漬け物、枝豆などが定番メニューだが、それらは置いておくのがベストだ。しかしただメニュー数を増やすためだけに置くのでは意味がない。定番メニューだからこそ、おいしいもの、盛りつけのセンスがあるものなど、印象に残す工夫をしたい。

また最近では1軒完結で飲むお客も多いことから、締めのご飯や麺メニューも揃えよう。締めメニューがあれば、客単価アップにもつながる。

自店の規模やスタッフ人員を鑑みて、スムーズに提供できる品数を考える必要がある。そのため、メニュー開発には構成も重要な要素だ。カテゴリーはどのくらいか、カテゴリー内の品数はどのくらいかなど、自店と似たようなお店の構成を参考にするとよい。

 

上限価格はなるべく下げる

値づけで重要なのは、お客に「お得」と思ってもらうこと。それはメニュー表上で見た数字の印象だけでなく、料理のボリュームと相関している。そのため1000円を超すメニューでも、ボリュームを持たせれば安いと思ってもらえる可能性は高い。

一方で注意したいのは、上限価格を上げ過ぎないこと。お客はメニュー表をパッとみて、一番高い金額から「このお店は高い/安い」を判断する。そのため他のメニューの平均価格が600円だとしても、1商品だけ2000円の商品があると「このお店は高い」と感じてしまう。低価格居酒屋を狙うなら、上限価格をなるべく3桁に抑えることを考えたい。

また値づけでは、おおよそ3ラインの価格帯に設定するのがよいとされる。例えば480円、680円、980円など。多少前後した価格の商品があっても構わないが、この3ラインのボリュームを厚くすれば、価格のわかりやすさを提示できる。

飲食店の原価率は約30%。フード原価率とドリンク原価率のトータル原価率が30%に収まればいいため、高原価率と低原価率をミックスして考えるとよい。特別高価なアルコールを置かない限り、居酒屋はドリンク原価率が10〜30%と低い。その分、フードに原価をかけてお得と思わせる商品を考えたい。

 

Vol.2につづく

>>居酒屋を経営するときに必要なことって何?開業段階の進め方 Vol.2


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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