インタビュー
居抜き開業を成功させたオーナーに、成功の秘訣や開店までの裏話などを伺います。

円滑な店舗運営の秘訣とは?
超繁盛チェーン店長に訊く現場発のマネジメントノウハウ

ローストビーフ丼とアメリカンビーフで爆発的人気を呼んでいる神戸発の「Red Rock(レッドロック)」。インタビュー【前編】では経営者である増田昭社長に、人気業態開発の経緯や人・商品を大切に育てる経営理念について伺った。【後編】となる今回は、実際に店舗を切り盛りする高田馬場店長・平康二さんに、超行列店運営の舞台裏事情やマネジメントの秘訣をお伺いした。

取材に先立ち、噂のローストビーフ丼を試食させて頂く。芸術的な盛り付けが美しく、箸をつけて崩すのを思わず躊躇してしまう。「お客様に持っていくと皆さん仰るんですが、“これ、どうやって食べるんですか?”って(笑)。僕のオススメの食べ方は、一番自慢なのは柔らかなお肉と特撰タレなんで、まずは上部のお肉をぺろっとつまんでそのまま食べる。次に、頂上の卵黄を絡めてコクを加えて。最後に、特製のヨーグルトソースをつけて。そうすると、三種の異なる味わいを楽しんでいただけます」。にこやかに説明する平さんの姿には、自らが提供する商品への揺るがぬ自信と愛、そして誇りが感じられる。

元々、Red Rock神戸各店で店長を担当していた平さんが東京にやって来たのは、2015年春頃。都内第2店目にあたる原宿店オープンに際し、高田馬場の初代店長がそちらの立ち上げに移ったことから、後任に着任した。「東京は以前、都心のスポーツバーで勤めていたこともあり、街並みはよく知っていた。どの駅がどうで、という土地勘はあったので、あまり不安もありませんでした」。突然の異動だったが、心配なく着任できたという。

雨の日も雪の日も…
年中行列途切れぬ人気店の苦労と工夫

14年9月のオープン直後から口コミやSNSにより早くも来客が集中していた高田馬場店。店長着任直後から平さんは超行列店の最前線を全面的に任されることになった。「お店が最も混むのはやはりお昼時。11時30分の開店時点で最低30人~40人は並ばれています。席数は24席ですが実際に入れるのは20人前後。だいたい1名あたりの滞在時間は15~25分と計算して、これくらいの並び具合でこの位置だったら、何分待ち、何時間待ちというのが把握できます」。

土日には更に行列が加速し、店前の神田川にかかる橋を越えて、川向うの道路沿いまで人が並ぶ。「その時点になるともう2時間待ち。平日でも橋には絶対いきますね。空腹を我慢できず、並びながらハンバーガーなどを食べている方の姿も。食事をしに来て待つ間に何かを食べるというのも面白い話ですが、メディアで紹介された有名店に行ってみたい、という気持ち、特に東京ですとそうした店が身近にあるので、そういった点でも価値を感じていただいているのでしょうね」。

想定外の事態としては、大雪、台風の日にドッと人が押し寄せたことも。「“こんな天気だから今日は暇やろ”と思って朝少な目に仕込みをしますでしょ。ところがお客様は考え方が違う。“悪天候だから誰も行かないだろう”と、みんなが思って、結局いつもと同じ客足(笑)。そんな時は僕らも“え~?!仕込み足りないどないしよ~”っててんやわんやですわ」。平さんいわく、Red Rockの始まりはワインも飲める肉バルだったが、その中のローストビーフ丼などのご飯メニューが予想以上の評判を呼び、実質的に今は「丼ぶり屋」として認知されている。そうした顧客ニーズに対応するため、多数用意していたドリンクメニューの簡素化を進めてきたが、今後はさらに少数に絞り、丼ものの迅速な提供への集中を図る予定という。

「売り切れ防止」は常に課題
多忙さに甘えずメリハリある勤務体制を

衛生管理上、ローストビーフは生肉を仕入れ、店内で焼き上げるというステップを取る。繁盛店で難しいのは、いかに閉店ぎりぎりまで「売り切れ」を防ぐか、という点だと平さんは言う。「閉店間際1時間前にローストビーフ丼売り切れ、ということも時にはある。やっぱり出来るだけ当日作ったフレッシュなものを提供したいんで、閉店直前に沢山追加で仕込んでしまって次の日に…というのは避けたい。だから、その場合は肉を捌けば提供できるステーキだけで、という時もたまにあります。お客様も来たからには別メニューでも食べて帰りたいですから。出来るだけギリギリまで売り切れないようにしたいですけど、美味しいものを出そうと思ったら、そこらへんはお客様とこちらで譲り合ってやっていきたいなと思っています」。

年中無休、休憩時間なしの超多忙なノンストップ営業の中にあって、平さんが大切にするのは「メリハリを付けて仕事すること」。開店から訪問客が絶えない高田馬場店だが、最近は夕方や夜に客足が落ち着く時間帯も出てきた。「でも、現状、席を埋めるための対応は特にしていない。ちょっと天狗になったような言い方になるかも分からんけど、今、何かこっちからアプローチして来てもらうようなことをすると、閉店間際にずらっと並んじゃう可能性が出てくる。そうなると、忙しいから働く人にも延長をお願いすることになりかねないけど、やっぱり管理する側としてはきっちり時間内に働いて、充実して帰ってもらいたい」。

先月までは「きれいきれい大作戦」と称して、店内の美化キャンペーンに取り組んだ。「開店から2年、やっぱり上の方のシャンデリアとかにも埃がついて曇ってくるんです。でも、営業中の手隙な時間に掃除するのは埃も飛んで衛生上よくない。かといって、時間外に余分に働くとそれが惰性になっちゃって、仕切りが無くなっちゃうんですね。なので、清掃日は早めに店を閉めます。で、やるときはやる、帰るときは帰る。僕がしっかりやらないとアルバイトスタッフもそれを見習ってダラダラ仕事するようになってしまうんです」。Red Rock全店でも23時ラストオーダーを22時に早めた。長期的にヒット店を継続させるためには、忙しさに甘えない確固とした時間管理の努力が重要なようだ。

課題はサービス精度のさらなる向上
社長と二人三脚でその街に合うチェーン展開を

今後の高田馬場店の課題を伺うと、「まずはスタッフの調理・サービス精度を上げること」を第一に挙げた。「Red Rockの商品は誰が作っても質の高い仕上がりとなるようなレギュレーションにしてあります。でも、チェーン店でたまにあると思うんですけど、“あの支店に行ったら、なんか肉少ないよな~”とか(笑)。お客様に失礼のないよう、調理、盛り付け、接客含め、僕の下にいる限りはすべてが出来るよう、スタッフィング精度を向上させていきたい。そうすれば、新店舗が出来て、誰かが行っても同じサービスが提供できますし」。

夕方・夜の客足が落ち着く時間帯にどう対応するかもこれからの検討課題。これには増田社長と二人三脚で柔軟に取り組んでいく。「こうした隙間をどういうかたちで充実するか、色々な方法がありますよね。人件費を減らすために休憩時間にするか、またはハッピーアワーでお得さをアピールするか。現状は回転が速すぎて固定客が掴みにくい状況ですが、こうした時間を利用して、ワインを傾けていただきながら何人かのお客様とゆっくり会話をし、“こんなの食べてみたい”というお客様の願いに応えるというスタイルもいいなと思います。チェーンでも、守るところは守って、後はその土地その土地に合ったものを出していくのはありやと思うんですよ。その辺の考えは社長と似ていると思うんで、ディスカッションしながら一番ベターなかたちを考えていきたいですね」。

Red Rockの大ヒットを受け、ここ1、2年でローストビーフ丼を出す店が格段に増加した。その傾向について平さんは「大賛成」という。「何店舗か僕も食べに行きました。店によって甘い・多い・少ないといったアレンジはかなりあるけど、そこで必ず出てくるのが“Red Rockより~”という言葉。ということは全ての基礎にうちの商品がある。その自負が自分達にもあるので、僕はコピーしてもらって全然結構と思ってます。東京進出を果たした頃から、大手スーパーでもお一人様用ローストビーフみたいな商品がどんどん出てくるようになりましたが、別に腹が立つとか競争するという考えでなくて、みんながウィンウィンで儲かればそれでいいんじゃないの?と。でも、うわ~ってこれだけ流行ってみんなが儲かっている元祖はうちですよって言える立場にいるんで、そうでいいと思うんです」。
“パイオニア”としての自負がにじむ平さんの言葉は、働く人自身が惚れ込める商品を持つ飲食店の「強さ」、それを何よりも雄弁に言い表しているように感じられた。
(取材日:2016年11月15日)

平 康二さん(右)
Red Rock神戸各店で店長を務めた後、2015年より高田馬場店長。明るく優しい人柄と細部まで気を配る抜群のマネジメント感覚により、土日は2時間待ちにもなる行列繁盛店の陣頭指揮に当たる。

Red Rock 高田馬場店
住所:豊島区高田3-11-14
TEL:03-6380-3917
営業時間:11:30~23:00(L.O.22:00)
定休日:年中無休
店舗情報:HP食べログ