開業者インタビュー

激戦区で闘いノウハウ抽出 FC展開への伏線散りばめた独自の経営手法

片瀬 真一さん
激戦区で闘いノウハウ抽出 FC展開への伏線散りばめた独自の経営手法

路地裏に名店集う浜松町・メディアプラス裏
A5黒毛和牛を愉しめる一軒家焼肉店

JR浜松町北口・文化放送メディアプラス裏は、この界隈には珍しく路地裏的な雰囲気が漂う。オフィスビルの谷間に飲食店が点在し、付近に勤める会社員達の胃袋を支えている。中華、ラーメンなど大衆的な店が目立つが、その中に、鯛めしで有名な「鯛樹」、フレンチビストロ「レピフエドディーヌ」などの隠れ家的名店が存在することでも知られる。今回ご紹介する「和牛一頭流 焼肉家 肉萬 浜松町店」もその一つである。

駅前・大門通りから二つ入った路地裏に構えるこの店は、2012年8月9日オープンの白壁・古材の古民家風一軒家焼肉店。オープン以来、周辺サラリーマンを中心に圧倒的人気を誇っている。コンセプトは「赤身焼肉とホルモン」。沖縄県、及び震災復興支援のため熊本県のA5黒毛雌和牛を直送一頭買いで仕入れ、「銘柄牛一頭舟盛り」(7,500円~)など見た目にも美しい盛り付けで、希少部位含め、和牛の美味しさを余すことなく提供してくれる。

オーナーの株式会社うる虎ダイニング・代表取締役 片瀬真一さんは、「雌牛を使うのはより赤身が美味しいから。でも赤身といっても、カルビの中のロースのような部位、ロースの中のカルビのような部位といったように、逆転の魅力を常に追求し、和牛各部位をより詳細に区分して提案するのがうちのやり方」と店のこだわりを語る。女子好みのする洒落た内装や料理のためか、男性優勢の焼肉業態にあって、客は女性の方が多いという。

片瀬さんは「和牛一頭流」を掲げ、霜降り等級を示すマーブリングNo.10以上(最高No.12)のA5黒毛和牛を一頭買いすることで、最高級和牛肉をリーズナブルに顧客に提供するとともに、農家、加工業者、飲食店が共に活性化できるビジネスモデルを構築してきた。2006年オープンの五反田「JYU-BEI」(現・焼肉問屋じゅう兵衛本店)を皮切りに、08年五反田「JYU-BEI真館」(現・JYU-BEIはらみ堂)、10年三軒茶屋「魅惑の焼肉 金肉屋」、14年赤坂見附「焼肉本家 肉兵衛」、16年大門「うる寅 GEMS大門店」と、現在直営6店、フランチャイズ(FC)1店(金肉屋綾瀬店)の計7店舗を展開。ここ浜松町の「肉萬」は直営4店舗目にあたる。

繁盛店の図面は社長自ら描く!
想定外の下水トラブルで肝に銘じたライフラインの重要性

「肉萬」の魅力はハイクオリティな和牛肉だけでなく、雰囲気ある店舗空間にもある。元は蕎麦居酒屋の一軒家物件を改装した店舗のデザインコンセプトは「都会の憩いの場」。片瀬さんは内見に赴いた際、その佇まいからインスピレーションを得て、白木・古材を基調としたデザインを構想したという。1・2階とも天井は抜き、古民家そのものの太い梁をめぐらした。コンパクトでありながら、圧迫感を感じさせないのは、この開放的な天井の造りが大きい。2階建て店舗は三軒茶屋「金肉屋」に続き二つ目だが、こちらにはダムウェイター(小型昇降機)が無いのでスピーディーな配膳は「スタッフの若さと元気が頼り」と笑う。

1階8.7坪、2階7.9坪の限られた空間に非常に効率よく座席が割り当てられているのも印象的だ。特に2階は小上り席(3卓)に加え、個室4室(うち2室は格子扉付)と寸分の無駄もない見事な配置がなされている。実はこの芸術的な図面、片瀬さん自ら三角スケールを握って描くのだという。「基本的にレイアウトは全部僕がやるんですよ。特に勉強したわけじゃないけどやりながら覚えて。物件出た瞬間に一日でバーッて図面作って、ここで幾ら売れるのかっていうのを計算してから契約します」。店はいったん始めると色々な諸問題が出てくる。売上計算はじめ、事前に準備可能なものは万全を期すことが必要と強調する。

「肉萬」開店時に痛感したのは、焼肉店にとってのライフラインの重要性という。内外装も終わり、ほぼオープン可能という段階になって発覚したのが、下水詰まりという致命的トラブル。開店前だったため、自社の責任にはならなかったのが不幸中の幸いだが、すでに完成していた1階のフロアを掘り返す大工事を強いられた。その結果、下水道管の配備申請だけで1ヶ月半もかかり、オープンが2ヶ月も遅れてしまった。美しい墨色のフロアが、掘り返した部分だけ色が違う。当初はそれを見る度苛々したというが、「今後はよく注意しなくては、とライフラインに関してはかなり気を使うようになりました」と物件見分時の教訓になったという。

直営店は「試す場、闘う場」
激戦区での経営通してFC展開のノウハウ抽出狙う

片瀬さんには、出店エリア選びに関しては、「直営店は激戦地を選ぶ」という明確な指針がある。その方針通り、これまでの店は、五反田、三軒茶屋、赤坂見附、大門といずれも都内飲食激戦区に開店してきた。「肉萬」がある浜松町も、「東京でも指折りの有名店やグルメランキング順位の高い店が集中することから、かねてより出店候補地としていた」という。「というのも、競争があって自分のモチベーションが上がる場所でしのぎを削ることで、そこでのノウハウをFC店に還元できるから。直営店は、研究の場、試す場っていうか、闘う場なんです」。競争の激しい場で勝ち抜くことにより、FCオーナー達も片瀬さんの言葉をより信憑性をもって聞いてくれるという。

各店舗を、別の名前、別のコンセプトで開く独自の運営方法にも、FC展開への導線が巧みに織り込まれている。「うちは店舗展開としては、完全にセオリーと外れている。肉萬が当たれば全店肉萬にすればいいのに、赤坂は肉兵衛、大門はうる寅と個店のようにやっている。だから僕は6回独立しているような感じなのです(笑)。刺激や楽しみを求めてということもあるけれど、お客様層やメニュー、コンセプトが異なる色々な店舗を持っていることで、土地土地に合わせたFC店の戦略を練る際に活かせるノウハウを得ることができる。常に直営店でそうした感覚を養っている感じです」。

うる虎ダイニンググループの焼肉店は、高リピーター率が特徴的だが、そのためには顧客が求めるコア要素に直球で応えることが重要だという。「リピーター獲得の努力っていうのは、スタンプカード作ったりとかそういうのはあんまりしてないですけど、やっぱ焼肉屋って色々な引き出しは要らないんじゃないですかね。お客様のストライクゾーンにちゃんと投げてあげればいいのかなと。幹事になった時、会社の人を連れてきて喜んでもらえるような店であること。幾らの予算で、この内容の料理が出るんだったら、うん、いいんじゃないっていう所に投げていけばいいのかなと思います」。

飲食店開業で「たら・れば」はご法度!
現実的計画で手痛い失敗リスクを防止

元々、スポーツ推薦で大学に入学したほどの空手の腕を持つ片瀬さんの言葉には、いずれにも熱い闘志が感じられる。勝負の場を道場から飲食の場に変えた今も、自ら掲げた「和牛一頭流」による焼肉業界全体の活性化に取り組む。直営6店舗によって足元も固め、年明けからは本格的なFC展開に乗り出す予定だ。「やりたいと手を挙げる人はいるが、物件待ちの状態。ABC店舗にもぜひ良い物件を沢山紹介いただきたい」と片瀬さん。最高級黒毛和牛の仕入れが確保された魅力的なフランチャイズシステムに興味を持つ開業志望者は少なくないだろう。

最後に、これから初めての飲食店開業に挑む方々へのアドバイスを頂いた。「出来るだけ、“たら・れば”を減らすような考え方になればいいと思います。いつ、どこで、何を、どのようにして、どれくらいで、と、具体的に答えて書けるようにならないと、やっぱり厳しい。「あの人が来れば」「友達が来れば」とか、そういうのはまず不可能。今は飲食ほとんど潰れちゃいますから。失敗とか生易しいもんじゃないです。飲食の失敗ってリースが残ったり悲劇が待っているので。人生変わっちゃう人もいますし。やっぱり二の手、三の手をちゃんと考えていくべきだと思います」。成功する飲食店経営のためは、一にも二にも、まずは現実的観点に基づいた計画が必要なようだ。
(取材日:2016年10月28日)

片瀬 真一さん
株式会社うる虎ダイニング代表取締役。1972年、東京都生まれ。18歳より焼肉店で修行を積み、店長・エリアマネージャー職を歴任。2006年に独立して法人設立し、五反田「JYU-BEI」(現・焼肉問屋じゅう兵衛本店)オープンを皮切りに、三軒茶屋、浜松町、赤坂見附、大門に直営焼肉店を6店舗展開。A5黒毛和牛の一頭買いによる「和牛一頭流」を掲げ、お客様の「ハレの日」の食卓を彩る。生産者・加工者・焼肉店の相互活性化を図る「六次産業」企業として、その裾野を広げるため、フランチャイズ(FC)・のれん分け制度を導入。16年9月、FC1号店「魅惑の焼肉 金肉屋」綾瀬店オープンを果たす。

和牛一頭流 焼肉家 肉萬 浜松町店
住所:港区浜松町1-23-6
TEL:03-3436-2925
営業時間:[月~金]ランチ 11:30~14:00(L.O.13:30)
[月~土]17:00~24:00(L.O.23:15)
定休日:日曜日(※月曜祝日の場合は、日曜営業、月曜定休)
店舗情報:HP食べログ


Written by 飲食店の居抜き物件なら!居抜き店舗ABC
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